プロ向けファンド規制強化案の動向

金融庁が、いわゆるプロ向けファンドに対する規制につき、下記改正を行う旨平成26年5月14日に公表し、意見を募集していました。しかし、施行予定日が過ぎても当該改正は施行されませんでした。
その顛末について、2014年9月8日付日本経済新聞14版15頁が報じていますので、以下その一部を引用します。

「独立系VCの関係者らは、ベンチャー投資の促進やリスクマネーの供給増大という政策に逆行すると主張し、規制改革会議や政治家へのロビー活動を展開した。結局、金融庁は規制強化案の8月実施を見送った。」

これで終わりではないと思いますが、第1ラウンドは終了したということのようです。


                          記
1.改正の概要
適格機関投資家等特例業務を行う者が、ファンドの販売等を行うことができる投資家の範囲を、現行の適格機関投資家及び適格機関投資家以外の者から適格機関投資家及び金融商品取引業者等(法人のみ)、ファンドの運用者、ファンドの運用者の役員・使用人・親会社、上場会社、資本金が5千万円を超える株式会社、外国法人、投資性金融資産を1億円以上保有かつ証券口座開設後1年経過した個人等にする改正を行います。

2.施行期日等(予定)
平成26年8月1日
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企業再生における課題

と日経新聞が1面を使って企業再生に国が関与しすぎることの
問題点を指摘しています。

日本航空の連結営業利益が2049億円と全日本空輸の
2.1倍にもなっていることについて、全日本空輸の篠辺副社長は、
「国の支援を受けて再生した企業が、自助努力を続けている
企業の経営を脅かせば、国の介入でマーケットがゆがみ、
最終的には利用者・国民の不利益になる」と語っています。

ただ、マーケットがゆがむというのは、国の介入がなくとも
生じ得ることです。
篠辺副社長は、倒産時に発生した繰越欠損金による節税効果を
問題視していますが、コストという面でいえば、債権がカットされ、
利子負担が大幅に減るということの方が影響が大きいでしょう。
昨年11月にアメリカン航空が倒産しました。米系大手航空会社の中で
唯一倒産せずにいた同社が倒産したというので、話題になったので
ご記憶の方も多いと思います。
倒産を発表した際、アメリカン航空のCEOは、過去にチャプター11を
申請した競合他社と比較してコスト構造が不利であったことを
倒産の理由として挙げています。
このように、企業再生には、競合他社の経営を圧迫するという面があるのです。

不振企業は淘汰されるべきではないのかという疑問に答えて、
経済学者の柳川範之教授は、採算事業を存続させることは経済全体にとっても
望ましいと「事業再生ってなんだろう?」という著作で述べています。
ですから再建型倒産制度には経済学的にも根拠があるわけです。
しかし、競合他社が「不公平」と感じるのも理解できます。
特に寡占市場における大型倒産案件では、公平性が問題になるのは、
当然ともいえます。

このあたり、国が企業再生に積極的に乗り出すのであれば、今後の課題になりそうです。

わかりにくい「日本再生投資基金」構想

民主党が企業再生やベンチャー企業を支援する「日本再生投資基金」の創設を提言したそうです。
そして、それを受けて政府が、企業再生支援機構を改組して、2~3兆円規模のファンドを
設立することを検討することになったと報道されています。
新聞記事等を読んでも、はっきりしないのですが、どうも地方銀行などに中小企業の
再生専門会社を設立してもらい、そこにファンドの資金を投入する計画のようです。

しかし、2~3兆円も集めて、投資するにふさわしい再生案件がそんなに見つかるのでしょうか?
もともと企業再生支援機構は、中小企業の再生を支援するために設立された機構です。
そして、そのために平成23年度予算では上限3兆円の政府保証枠を与えられています。
ところが、同機構が今までに投資した4000億円のうち3500億円は日本航空の再生に使われ、
中小企業の再生に対しては、ほとんど使われていません。

なぜでしょうか。
要するに投資するにふさわしい再生案件が、それしか見つからなかったのだと思われます。
企業再生支援機構は、純民間の業者と比較して、特別な能力を有しているわけではありません。
そして、同機構は、営利を目的とはしていないものの、市中から資金を調達して5年で業務を完了させる
計画であったことから、資金回収が見込めない案件に投資することはできない仕組みになっていました。
機構のウェブサイトを見ると次の要件すべてを満たす案件が、支援対象となるとされています。

①有用な経営資源を有していること。
②過大な債務を負っていること。
③申込みに当たり、以下のいずれかを満たすこと。
・主要債権者との連名による申込みであること。
・事業再生に必要な投融資等を受けられる見込みがある、若しくは、主要債権者から
事業再生計画への同意を得られる見込みがあること。
④3年以内に「生産性向上基準」及び「財務健全化基準」を満たすことが見込まれること。
⑤機構が債権買取り又は出資を行う場合、支援決定から3年以内に当該債権又は株式等の処分が
可能であること。
⑥機構が出資を行う場合、必要不可欠性、出資比率に応じたガバナンスの発揮、スポンサー等の
協調投資等の見込み、回収の見込み等を満たすこと。
⑦労働組合等と話し合いを行うこと。

中小企業の再生案件でこれらの要件がすべてが満たされているものは、数少ないと思われます。
また、これらの要件すべてが満たされるのであれば、どこかの民間業者がスポンサーとなって資金を
提供する可能性が高いと思われます。
再生の見込みの高い案件にしか投資しないのであれば、機構が出る幕はないということです。

その状況は、地方銀行などに中小企業の再生専門会社を設立してもらい、
そこに企業再生支援機構を改組して創設した「日本再生投資基金」の資金を投入することにしても
変わらないと考えられます。
もちろん、再生の見込みの低い案件であれば、多数存在するでしょう。
しかし、そういう案件に無理に投資すれば、新銀行東京の二の舞になってしまうはずです。
地方銀行がそのような自殺行為をするとは思えません。

儲かる事業であれば、放っておいても民間企業が投資します。
逆に儲かる見込みがないために民間企業が投資しない場合には、
巨額の資金を用意しても、金を借りに来る者はいないと思われます。
民主党も政府も私なんかよりもはるかに情報を持っているわけですから、
そのことは百も承知のはずです。
だとすると、この「日本再生投資基金」構想は、何を目的としたものなのでしょうか。
よく分かりません。
中小企業金融円滑化法を打ち切ったことによって、多数の中小企業が倒産したときに、
何かをしているポーズを取るだけのため?
まさかね。
何かいい知恵があるのでしょう。
たぶん。
きっと。

最近目にするDIP型会社更生ってどうなの?

エルピーダ等、最近の大型倒産案件において、「DIP型会社更生」という言葉を
目にするようになりました。
数年前までは見なかった言葉です。
これはなんでしょう?
ネットで検索してみると、次のような説明が見つかります。

DIP(Debtor in Possession)型会社更生とは、破綻企業の経営陣が退陣せず、
更生計画などに関与する会社更生手続きを言う。
従来、会社更生手続では、裁判所が選任する弁護士等が保全管理人、管財人となり、
旧経営陣は交代することが必須条件とされる運用が行われていた。
それに対して、民事再生手続では、裁判所の監督の下で旧経営陣が事業を継続しつつ、
債権者の賛成を得て再生計画を成立させるいわゆるDIP型手続が原則とされている。
会社経営者から見れば、民事再生手続の方が使いやすく、そのため、民事再生法が
創設されてからというもの、会社更生法はほとんど使われなくなった。
会社更生法に絡む事案を担当するのは東京地裁民事第8部、民事再生法に絡む
事案を担当するのは民事第20部となるが、民事第20部ばかりが忙しい状況が続いたのである。
その状況下において、民事第8部が平成20年12月に、DIP型会社更生手続きの運用基準を
雑誌において公表した。
これを受けて平成21年1月9日に第1号として、株式会社クリードがDIP型会社更生の
申し立てを行い、その後、多数のDIP型会社更生の申し立てが行われるようになった。

DIP型会社更生というのは、新たな法制度として導入されたものではなく、
会社更生法の運用基準として導入されたものだということがわかります。
その経緯を雑誌記事を追いかけて、見てみましょう。

まず、多比羅誠弁護士ら3名の弁護士が、「私的整理ガイドライン等から会社更生への移行」
(NBL886号7頁)という論文を発表して、会社更生の新たな利用方法を提案しました。
それに対して、当時東京地裁民事8部の部総括判事であった難波孝一裁判官が、
その提案を受け入れることを表明しました(NBL886号12頁)。
さらに難波裁判官は、上記提案を超えて、民事8部の他の裁判官らとともに、「会社更生事件の
最近の実情と今後の新たな展開―債務者会社が会社更生手続を利用しやすくするための方策:
DIP型会社更生手続の運用の導入を中心に」(NBL895号10頁)という論文を発表し、
DIP型会社更生手続きの運用基準を公表しました。
従来、会社更生手続きにおいては、経営陣の総取替えを行ってきたが、法令上DIP型とすることが
禁止されているわけではないので、次の4要件が満たされていれば、会社更生においても
DIP型とすることができるとしたのです。

①現経営陣に不正行為等の違法な経営責任の問題がないこと
②主要債権者が現経営陣の経営関与に反対していないこと
③スポンサーとなるべきものがいる場合はその了解があること
④現経営陣の経営関与によって会社更生手続の適正な遂行が損なわれるような事情が
 認められないこと

この公表に対して、前記多比羅弁護士らは、「現在の実務を所与のものとし、その枠内で
考えがちなわれわれの何歩も先をいくものであった。」と驚きを表明するとともに、
次のような場合にDIP型会社更生の手続を活用できるだろうとの見解を示しました
(NBL895号25頁)。

①担保権者との合意(別除権協定)の成立が困難な事案
②会社分割等の会社組織の変更を手続内で行う必要がある事案
③監督委員の権限よりも強い監督が必要な事案

このような経緯からしても、DIP型会社更生が、実務家の手によって、実務家にとって
使いやすい運用方法として、提案されたことが分かります。

ただ、法律の運用方法は、使い易ければ良いというものではないはずです。
例えば、エルピーダの坂本社長が、会社更生開始の申し立てを行った後も
会社経営を続けることに対して釈然としない思いを表明する意見を目にしたことがあります。
DIP型会社更生という運用は、会社更生の制度趣旨に合致した運用方法なのでしょうか。

この点、会社更生法を含む倒産法の目的はそもそも何なのかということを考える必要があります。
普通の本にはあまり書いていないことなのですが、水元宏典教授は、
「倒産法における一般的実体法の規制原理」という著作において次のとおり説明しています。

水元教授は、まず次の通り、「財産価値最大化理論」を紹介しています。

「倒産法は、歴史的に債権回収法である。会社倒産の局面に限定すれば、
それは、集団的・強制的な債権回収装置であり、その意味は、債務者の
倒産時に、すべての債権者について個別的な債権回収が禁止されることである。
そして、その正当性は、そうすることが財産価値最大化に資すること、また、
そうであるがゆえに債権者全員の合意が想定されることに求められた。」

水元教授は、この「財産価値最大化理論」に対して、公正な分配の
実現のために再配分を行うべきであるとする批判(再配分論)があることを紹介しつつ、
その再配分論を採用することはできないとし、ただし、「財産価値最大化理論」を
絶対視すべきではないとしています。
倒産法の本質を大まかに捉えれば、「財産価値最大化理論」がそれに当たると
考えておけば良いのだと思います。

さて、「財産価値最大化理論」という観点から見た場合、DIP型会社更生は
どのように評価されるのでしょうか。
東京地裁会社更生実務研究会編「最新実務会社更生」は、次のとおり述べています。

「更生手続では、法律上、現経営陣の中から管財人を選任することは可能であるが、
従前は、利害関係のない管財人を選任し、現経営陣を必ず総退陣させる運用が
行われてきた。このような運用は、会社更生の濫用的な申立ての規制等を
目的として行われた昭和42年の会社更生法改正以来の経済社会の意識を
反映したものであり、高度経済成長期には、現経営陣の活用によって企業価値の
毀損防止を図ることよりも手続の公平性や厳格性を重視するのは、
当然のこととして受け止められてきた。
しかし、グローバル経済が進展し、我が国の経済が低迷する昨今の状況下では、
金融機関を含む債権者側においても、破綻した企業との関係を経済合理性に
従って処理する要請が高まっており、再チャレンジの機会を確保することも
経済社会の発展のためには必要であるという認識も、徐々に広まりつつある。」

DIP型会社更生は「財産価値最大化理論」に則した運用方法であると
東京地裁民事第8部は考えているということなのでしょう。

江戸時代には、倒産した者に対して、外出を夜のみに制限する等の
差別的取り扱いが行われていたと聞きます。
しかし、現代の倒産法は、倒産した者を罰することを目的としていません。
債権の引き当てとなる財産の最大化こそが目的と考えられます。
その観点からすると、DIP型会社更生は、正当化されるということになりそうです。


倒産法における一般実体法の規制原理

最新実務 会社更生

ニコイチ

ニコイチという言葉をご存知ですか?
複数の事故車から使える部品を取って、一台の車に仕立て上げた粗悪品を
指す言葉です。

ところで、企業再生の場面においても、似たようなことが行われることがあります。
倒産寸前の会社から営業利益が出ている事業だけを切り出して、利益の出る
会社(グッドカンパニー)を仕立てる手法が、一頃流行りました。
会社分割の手法を使うのですが、当然、残された元の会社は、利益の出る
見込みのない会社(バッドカンパニー)になってしまいます。
3台くらいの事故車から使える部品を取って、走行可能な自動車を作る。
そうすると、1台の自動車とクズ鉄の山が残ります。
そんなイメージです。
これを一部の債権者に黙ってこっそり実行したり等するのが、
濫用的会社分割と言われるもので、近年問題となりました。

ただ、違う点もあります。
ニコイチの場合の被害者は、粗悪品の自動者を買った人です。
それに対して、濫用的会社分割の場合に被害者となるのは、
元の会社の債権者、特に金融機関です。
技術的なことを省いて説明すると、ある手法を使うと、金融機関の債権を
実質的にカットすることができます。
事業継続に必要な取引関係の債権者については、そのまま取引関係を
グッドカンパニーに移す。それによってその債権者は、グッドカンパニーから
債権を回収することができる。
それに対して、金融機関は元の会社であるバッドカンパニーに残す。
金融機関は債権を回収することができません。
金融機関からすると、車を担保に金を貸していたら、いつのまにかその車が
クズ鉄の山になっていた、そんな感じでしょう。

当然、金融機関は怒ります。
そこで、濫用的な会社分割について訴訟が多発しました。
今回取り上げる判決(名古屋高等裁判所平成24年2月8日判決)は、
そうした訴訟のうちの一つについてのものです。

事案は、簡単にいうと、次のようなものです。
旧Bという会社があり、金融機関Xがその会社に資金を貸し付けていました。
ところが、経営不振に陥った旧Bの経営者は、旧Bから利益の上がる
事業のみを切り出して、新設会社分割の方法で新しい会社Yを設立し、
事業をその会社に移しました。
金融機関Xは旧Bの債権者として取り残されてしまいます。
そして、債権の回収は、Y会社から旧Bに対して賃料等の名目で
支払われる月額200万円を原資としてなされることになり、
示された計画では128年後になってやっと弁済が
完了することになっていました。
この会社分割について、金融機関Xが、民法424条の詐害取消権に基づいて、
取消を求めるとともに、金銭の支払いを請求したというのが本件訴訟です。

本判決は、上記事案につき、Y会社の控訴を棄却し、金融機関Xの請求を認めたものです。
ただ、その内容は概ね原審(名古屋地方裁判所平成23年7月22日判決)を
維持したものです。
そこで、原審判決を見てみると、取消の範囲及び原状回復の方法について、
面白いことが書かれています。
引用します。

「新設分割は、新設分割会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は
一部を新設分割設立会社に承継させることであり、本件会社分割において、
旧りょくけん(旧B)から被告(Y会社)に対して承継された資産及び負債が
可分であることは明らかであるから、本件会社分割を詐害行為として取り消す
範囲は、詐害行為の目的物が可分である場合として、債権者である原告の
被保全債権の額、すなわち、貸金元本の合計9568万2000円を限度とすると
いうべきである。」
「本件会社分割が詐害行為として取り消された時の原状回復の方法としては、
(中略)原告は、被告に対し、逸失した財産の現物返還に代えてその価格賠償を
請求することができる。」

一定金額の限度で会社分割を取消した上で、価格賠償を請求することができると言うのです。

高裁判決の方にも面白い記載があります。

「新設分割によって分割会社の残存債権者が害された場合、現行会社法の
債権者保護手続や新設分割無効の訴えでは残存債権者の保護を図ることが
できないのであり、そのような問題状況を踏まえて、詐害的な会社分割によって
その債権を害された残存債権者が、新設会社等に対し、当該債務の履行を
直接請求できる旨の規律を新たに設けること等を内容とする会社法制の
見直しの議論が進められていることは当裁判所に顕著である。」

だから、こういう手法で債権者を救済してもよいということでしょうか。
最後に、「会社法制の見直しに関する中間試案」の該当箇所を引用しておきます。


詐害的な会社分割における債権者の保護

① 吸収分割会社又は新設分割会社(以下第6において「分割会社」とい
う。)が,吸収分割承継会社又は新設分割設立会社(以下第6において「承
継会社等」という。)に承継されない債務の債権者(以下「残存債権者」
という。)を害することを知って会社分割をした場合には,残存債権者は,
承継会社等に対して,承継した財産の価額を限度として,当該債務の履
行を請求することができるものとする。ただし,吸収分割の場合であっ
て,吸収分割承継会社が吸収分割の効力が生じた時において残存債権者
を害すべき事実を知らなかったときは,この限りでないものとする。

(注) 株式会社である分割会社が吸収分割の効力が生ずる日又は新設分割設立会
社の成立の日に全部取得条項付種類株式の取得又は剰余金の配当(取得対価
又は配当財産が承継会社等の株式又は持分のみであるものに限る。)をする場
合(会社法第758条第8号等)には,上記の規律を適用しないものとする。

② 残存債権者が,分割会社が①の会社分割をしたことを知った時から2
年以内に①による請求又はその予告をしない場合には,①による請求を
する権利は,当該期間を経過した時に消滅するものとする。会社分割の
効力が生じた時から20年を経過したときも,同様とするものとする。

(注) 事業譲渡についても,①及び②と同様の規律を設けるものとする。
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大久保宏昭

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