新日本製鐵と住友金属工業が、株式交換と同日に吸収合併を行う旨合意

新日本製鐡と住友金属工業が、株式交換を行ったうえで同日に
吸収合併を行う二段階の法的手続により10月1日に両社が
経営統合することにつき最終的に合意したと公表しました。

公表文の中で、両社は次のとおり述べています。

「経営統合の方法に関し、昨年9 月22 日の統合基本契約締結時点では、
株式交換を経ずに吸収合併を行うことを予定しておりましたが、
統合対象資産の一部にかかる豪州税法上の課税繰り延べ措置の適用を
確実に受けることができるよう、専門家の意見を踏まえて、上記の通り、
日本の法令上も適法かつ有効な二段階手続きに変更することと致しました。」

合併等の組織再編を行う場合、課税面の検討は必須ですが、
これだけの会社になると、外国の税制についても検討しなければならないのですね。
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インサイダー取引はこの程度でも摘発される

平成24年4月27日に証券取引等監視委員会が発表した
インサイダー取引に対する課徴金納付命令の勧告から、
「法令違反の事実関係」の箇所を引用します。

「課徴金納付命令対象者は、株式会社●●との業務委託契約の
締結先の役員であったが、同契約の締結の交渉に関し、
株式会社●●の業務執行を決定する機関が、新たな事業として
LED照明の製造及び販売を開始することについての決定をした旨の
事実を知りながら、この事実が公表された平成23年1月24日より
前の同月11日から同月13日までの間に、自己の計算において、
株式会社●●株式合計40株を買付価額合計130万450円で
買い付けたものである。」

①対象者が業務委託契約の締結先の役員にすぎないこと
②買い付けた株式が40株であって価額合計130万450円でしかないこと

これらの事実を考えると、これで見つかるのかとびっくりしますが、
見つかってしまうものなのですね。

医薬品のインターネット販売に関する東京高裁判決

平成24年4月26日に、東京高等裁判所が、一般用医薬品の
一部につきインターネット販売の禁止を定めている薬事法
施行規則等の一部を改正する厚生労働省令は違法である
と認める判決を言い渡したそうです。

当該判決文は入手できておりませんが、一審判決らしき
東京地方裁判所平成22年3月30日判決が見つかりましたので、
これを見てみます。

事案の概要は次のようなもののようです(適当ですみません。)。

薬事法施行規則の改正により、一般用医薬品の中でもリスクが
高いとされる第一類・第二類医薬品の販売は有資格者の対面により
行う旨の規定が設けられました。
当該医薬品については、インターネット販売を行うことができないと
いうことになります。
そこで、医薬品のインターネットによる通信販売を行う事業者が、
当該規則改正は、改正後の薬事法(新薬事法)の委任の範囲外の規制を
定めるものであって違法であり、インターネット販売について
過大な規制を定めるものであって憲法22条1項に違反し、
制定手続も瑕疵があって違法であり、無効であると主張したようです。

東京高裁が違法と認めた点に関する原告の一審における主張を
一部引用します。

「憲法で保障された国民の権利を制限し,国民に義務を課すには,
法律の定めが必要であり,各省大臣が定めるにすぎない省令では
法律の明確な委任がなければ義務を課し,権利を制限することは
できないところ,新薬事法には,旧薬事法で認められていた
第一類・第二類医薬品のインターネット販売を禁止することを省令に
委任する趣旨の授権規定は見当たらない。
 本件規制は,これまで認められてきたインターネット販売を
禁止するものであるから,法律の条文による明確な授権が必要である。
 被告は,本件改正規定の根拠となる新薬事法の規定は36条の5及び
36条の6であると主張するが,新薬事法36条の5は,販売に従事する者に
ついての規制であって,対面販売にも触れておらず,インターネット販売を
禁止する省令の根拠とはなり得ないし,同法36条の6第1項は
第一類医薬品についての薬剤師による情報提供の義務を課し,
同条2項は第二類医薬品についての薬剤師等による情報提供の
努力義務等を課し,同条3項は購入者からの相談に応ずる義務を
課すものであるところ,これらの規定は,情報提供の方法を授権しているにすぎず,
情報提供の方法にとどまらない販売方法の規制に該当する
インターネット販売の禁止を授権しているとはいえない。
 新薬事法には対面販売の原則は規定されていないし,「対面」という言葉も
用いられず,対面販売の定義はされていない。新薬事法25条は店舗販売業の定義を
「店舗において」販売等することとしているが,これは,インターネット販売や
電話注文による配達販売を違法としていなかった旧薬事法37条1項の
「店舗による」と同義と解すべきであり,この文言が郵便等販売を禁止する趣旨を
含むということはできず,新薬事法25条が許可したことを禁止するためには,
同法36条の5及び36条の6により明確な規定が必要であるし,また,
特に定めがない以上,薬事法36条の6第1項が電磁的方法による
情報提供について規定していないからといってそれが許されないとの
趣旨であると解すべきではない。
新薬事法中の本件各規定の委任規定についての厚生労働省の説明は,
不正確かつあいまいであって,確実な説明がされたのはかなり後になって
からであることからすれば,厚生労働省が,薬事法の改正の際,
第一類・第二類医薬品のインターネット販売を禁止する意図を
有していなかったことがうかがわれる。」

東京高裁は、この主張を認めたということでしょうか。
最高裁がどう判断するかはわかりませんが、法改正で対応すれば
いいところを規則の改正で済ませた点に問題がありそうです。
政治的な理由でもあったのでしょうかね?

技術を守ることの難しさ

最近「勝つための経営」という本を読み、著者の一人である
吉川良三という人物を知りました。
吉川氏は、日立製作所に入社し、同社でCAD/CAMの
開発に従事した後、1994年から2003年までサムスン電子の
常務として、同社の開発革新を担当したそうです。

また、昨日は、WEDGE5月号を読み、サムスンSDIが
小型リチウムイオン電池の世界シェアトップとなったことを
知りました。
つい数年前にその分野では三洋電機が圧倒的な技術力を
持っていると聞いたばかりだったのに、もう抜かれてしまったわけです。
そのサムスンSDIの中核にも元ホンダの技術者がいるそうです。

そして、今日は、新日本製鉄が、ポスコを訴えたとのニュースを
聞きました。
新日本製鉄は、ポスコが新日本製鉄の元社員から不正に営業秘密を
取得したと主張しているようです。

これらの話を聞き、技術を守ることの難しさを改めて感じました。

特許取得には、コスト、要件といった問題があり、すべての技術が
特許の保護対象となるわけではありません。
しかも特許を出願してしまえば、その技術は公開されてしまいます。
特許権は登録された国でしか保護されないのに対して、技術は
一旦公開されてしまえば、世界中の誰でも知ることができる
ようになってしまうのです。

営業秘密も厳しい要件があり、あらゆる技術が営業秘密として
保護対象になるわけではありません。
また、営業秘密には、不正取得等を立証することが難しいという
問題もあります。

では、シャープが実行したとされる工場のブラックボックス化はどうでしょう。
私がその話を聞いたとき、思い浮かべたのは、佐賀藩です。
佐賀藩は有田焼の技術を保持するために、厳しく人や物の出入りを
監視したそうです。
しかし、行き過ぎた秘密保持は、技術の進歩を困難にします。
コストの低減も難しくなるでしょう。
大丈夫なのかなと思っていたら、シャープは、Retinaディスプレイの出荷では
サムスンに遅れをとることになってしまいました。
また、ブラックボックス化をしたからそうなったというわけでもないのでしょうが、
堺工場を台湾企業に半分売り渡すことになってしまっています。

結局、技術流出を完全に止めることはできないと考えておいた方が
いいのだと思います。
技術流出を止める努力はしつつも、ある程度の技術流出があっても競争優位を
保てるような戦略を考えていかないといけないのだと思います。
難しいですね。


勝つための経営 グローバル時代の日本企業生き残り戦略 (講談社現代新書)

言論の自由の大切さ

重慶市の市委書記だった薄煕来氏が解任されたとたんに、
とんでもない情報が、出てくる、出てくる。

初めは、妻である谷開来氏が、イギリス人の死亡に関わっていたという
話でしたが、最近では、話がどんどん広がって、こんな話まで出てきています。

事件を調べていた捜査官5人が拷問を受け、うち3人が死亡

地元企業経営者が1兆円を超える資産を没収されていた

冤罪で数万人が拘束されていた

4800億円を海外送金して不正蓄財を行っていた

112人が死亡した大連の飛行機事故を計画か

もう何でもアリですね。
これだけのことをしておきながら、今までは問題にならなかったのだとしたら、
中華人民共和国の統治機構はどうなっているのでしょうか?
しかし、上記は権力闘争に敗北した結果でっち上げられた「冤罪」である可能性もあります。
一番恐ろしいのは、これらの情報が真実か虚偽かまったく分からないことです。
言論の自由がない国では、何が起きても不思議ではない。
それだけは真実だと思います。

非公開会社、株主総会特別決議がなければ新株発行は無効

平成24年4月24日の最高裁判決です。

旧商法下では、新株発行は、原則として、取締役会決議に基づいて
行うものとされていました。
多額の借財は取締役会の決定事項とされていますが、新株発行は
それに近い扱いを受けていたわけです。
そのため、新株発行は、会社の業務執行に準じるものと考えられ、
有効な取締役会決議がなくとも、対外的に会社を代表する権限のある
取締役が発行した以上、取引の安全の見地から、有効となると
されてきました(最高裁昭和36年3月31日判決)。
そして、取引の安全を重視する必要がないと思われる
小規模閉鎖会社についても、最高裁は、この考えを貫き、
例外とはしませんでした(最高裁平成6年7月14日判決)。

ところが、会社法では、株式譲渡制限会社が新株を発行するには、
株主総会の特別決議が必要とされています。
株式譲渡制限会社においては、既存株主の持分割合が保護されると
いうことです。
そうなると、株式譲渡制限会社の新株発行が、株主総会の
特別決議がないままに行われた場合にまで、取引の安全を
優先させ、これを有効とすることに疑問が生じてきます。
そこで、東京地方裁判所第8部(商事部)の裁判官らによって
構成されていた東京地方裁判所商事研究会は、このような場合には、
新株発行は無効であると解すべきであるとの見解を公にしていました。

さて、今回の最高裁判決は、次のとおり述べて、上記結論を取ることを
明らかにしています。

「非公開会社において、株主総会の特別決議を経ないまま
株主割当て以外の方法による募集株式の発行がされた場合、
その発行手続には重大な法令違反があり、この瑕疵は上記
株式発行の無効原因になると解するのが相当である。」

なお、無効となるではなく、無効原因となるとしているのは、
新株発行の無効は、「新株発行の無効の訴え」という形成判決に
よらなければ主張できないとされているからです。

そういえばIFRSって?

WEDGE5月号で辻山栄子教授が、「国際会計基準IFRS騒動はいったい何だったのか」
というタイトルの記事を書いています。

「以前は散見された国際会計基準(IFRS)のニュースを最近みかけなくなった
と感じている読者は多いだろう。」というのが、その書き出しです。
私も数年前に何冊かIFRS関係の書籍を読んだことがありますが、
最近たしかにIFRSという文字をみかけなくなりました。

辻山教授は、次のように述べています。

①IFRSは、EUが米国と対等の関係を勝ち取るために唱えた会計基準にすぎない。
②日米がともに自国の会計基準とIFRSとのコンバージェンスを進めたことにより、EUの目的は達成された。
③米国は一旦はIFRS義務化の方向に舵を取ったが、IFRSを取捨選択して自国基準に取り込んでいく
方向に路線を再転換した。
④強制適用を宣言していたはずの中国もコンバージェンスを明言するようになっている。
⑤日本企業にIFRSが強制適用されるようになる可能性は極めて低く、IFRS対応のために
基幹システムを入れ替える必要はない。

EUが次々と作り出していく制度が新たなグローバル・スタンダードになるように見えた時期もありました。
EUの状況を前提に、主権国家の枠組みが消えつつあると主張する論者までいたくらいです。
ところが、EUが没落し、BRICsの勢力が拡大するとともに、EUが世界の新たな秩序を作り出すのだ
という機運も雲散霧消してしまったようです。

儚いものですね。

日銀総裁「膨大な通貨供給、インフレになる」と語る

日銀の白川総裁が、ワシントンにおける講演において、
「中央銀行の膨大な通貨供給の帰結は、
歴史の教えにしたがえば制御不能なインフレになる」
と述べたと報じられています。

しかし、以前書いたとおり、むしろそれを期待している
人たちがいるような気がしてなりません。

東芝、エルピーダの第2次入札に参加せず

エルピーダメモリのスポンサー企業を選ぶ第2次入札に
東芝は参加しないことになったと報道されています。
東芝は、単独企業としては、すでに第1次入札で
スポンサー候補から外れていました。
しかし、東芝としては、エルピーダメモリの台湾子会社だけは
欲しいということで、ハイニックスとの連携の道を探っていると
報道されていました。
その連携がうまくいかず、ハイニックスは単独で入札することに
なったようです。

しかし、東芝が外れたという、この報道、意外性がまったくないですね。
だって、台湾子会社は欲しい、広島工場はいらないというのは、
東芝の都合でしかありません。
ハイニックス側に台湾子会社はいらない、または単独でスポンサーに
なるほどの資金がないといった事情がない限り、ハイニックスには
東芝と組むべき理由が、そもそもなかったわけです。
ハイニックスとの連携の道を探っているという報道を見た当初から、
ハイニックス側に何のメリットがあるのだろうと疑問に思っていました。

一連の報道を見ていると、最終的に外資に売らざるを得ないことが
目に見えていたが、外資に売却することに対する批判を免れるために、
誰かが東芝に入札に参加することを頼んだのではないかとすら思えてきます。
それくらい1次入札における東芝の入札額は低かったですし、
ハイニックスと組むという話も実現性が最初からなかったように思えるからです。
まあ、部外者の勝手な想像にすぎませんけどね。

当面の電力供給および電力料金に関する緊急アンケート結果

経団連が、電力供給不安や電力料金の上昇が及ぼす影響について、
アンケート調査を実施した結果を公表しています。
製造業への影響は大きいようです。

コーポレート・ガバナンスシステムの在り方に関する研究会

法務省の法制審議会会社法制部会が発表した「会社法制の見直しに関する中間試案」で
社外取締役の選任の義務付けが提案されていることは、みなさんご存知のことと思います。

ところで、平成24年3月7日に第1回の会合が開催された経産省の
コーポレート・ガバナンスシステムの在り方に関する研究会が、
議論のテーマの一つとして、「法制審議会会社法制部会において、
社外取締役の選任義務付けが議論されているが、そもそも非業務
執行役員の役割について、どう考えるか。」という論点を取り上げています。

この研究会の顔ぶれを見ると、平成21年6月17日に社外取締役の導入は
法律(ハードロー)で強制するのではなく、金融商品取引所の対応(ソフトロー)に
委ねるべきとした報告書を提出した、企業統治研究会とかなり重なります。
ただ、議事概要を読むと、結論ありきではなく、根本に遡って考えてみよう
ということのようです。
どういう報告書が出されるか、注目したいと思います。

21世紀政策研究所「グローバルJAPAN-2050年 シミュレーションと総合戦略-」

経団連のシンクタンク21世紀政策研究所が発表した
「グローバルJAPAN-2050年 シミュレーションと総合戦略-」
題された報告書を遅まきながら、読みました。
未来を予測できるのは、人口学のみと言われることがあります。
その国の人口ピラミッドを見れば、その国の20年後の姿がある程度予測できるからです。
その人口を大きな柱として2050年の世界の姿を予測した報告書ということのようで、
かなり説得力を感じる内容となっています。

わかりにくい「日本再生投資基金」構想

民主党が企業再生やベンチャー企業を支援する「日本再生投資基金」の創設を提言したそうです。
そして、それを受けて政府が、企業再生支援機構を改組して、2~3兆円規模のファンドを
設立することを検討することになったと報道されています。
新聞記事等を読んでも、はっきりしないのですが、どうも地方銀行などに中小企業の
再生専門会社を設立してもらい、そこにファンドの資金を投入する計画のようです。

しかし、2~3兆円も集めて、投資するにふさわしい再生案件がそんなに見つかるのでしょうか?
もともと企業再生支援機構は、中小企業の再生を支援するために設立された機構です。
そして、そのために平成23年度予算では上限3兆円の政府保証枠を与えられています。
ところが、同機構が今までに投資した4000億円のうち3500億円は日本航空の再生に使われ、
中小企業の再生に対しては、ほとんど使われていません。

なぜでしょうか。
要するに投資するにふさわしい再生案件が、それしか見つからなかったのだと思われます。
企業再生支援機構は、純民間の業者と比較して、特別な能力を有しているわけではありません。
そして、同機構は、営利を目的とはしていないものの、市中から資金を調達して5年で業務を完了させる
計画であったことから、資金回収が見込めない案件に投資することはできない仕組みになっていました。
機構のウェブサイトを見ると次の要件すべてを満たす案件が、支援対象となるとされています。

①有用な経営資源を有していること。
②過大な債務を負っていること。
③申込みに当たり、以下のいずれかを満たすこと。
・主要債権者との連名による申込みであること。
・事業再生に必要な投融資等を受けられる見込みがある、若しくは、主要債権者から
事業再生計画への同意を得られる見込みがあること。
④3年以内に「生産性向上基準」及び「財務健全化基準」を満たすことが見込まれること。
⑤機構が債権買取り又は出資を行う場合、支援決定から3年以内に当該債権又は株式等の処分が
可能であること。
⑥機構が出資を行う場合、必要不可欠性、出資比率に応じたガバナンスの発揮、スポンサー等の
協調投資等の見込み、回収の見込み等を満たすこと。
⑦労働組合等と話し合いを行うこと。

中小企業の再生案件でこれらの要件がすべてが満たされているものは、数少ないと思われます。
また、これらの要件すべてが満たされるのであれば、どこかの民間業者がスポンサーとなって資金を
提供する可能性が高いと思われます。
再生の見込みの高い案件にしか投資しないのであれば、機構が出る幕はないということです。

その状況は、地方銀行などに中小企業の再生専門会社を設立してもらい、
そこに企業再生支援機構を改組して創設した「日本再生投資基金」の資金を投入することにしても
変わらないと考えられます。
もちろん、再生の見込みの低い案件であれば、多数存在するでしょう。
しかし、そういう案件に無理に投資すれば、新銀行東京の二の舞になってしまうはずです。
地方銀行がそのような自殺行為をするとは思えません。

儲かる事業であれば、放っておいても民間企業が投資します。
逆に儲かる見込みがないために民間企業が投資しない場合には、
巨額の資金を用意しても、金を借りに来る者はいないと思われます。
民主党も政府も私なんかよりもはるかに情報を持っているわけですから、
そのことは百も承知のはずです。
だとすると、この「日本再生投資基金」構想は、何を目的としたものなのでしょうか。
よく分かりません。
中小企業金融円滑化法を打ち切ったことによって、多数の中小企業が倒産したときに、
何かをしているポーズを取るだけのため?
まさかね。
何かいい知恵があるのでしょう。
たぶん。
きっと。

小林一郎「事情変更の原則と再交渉義務」

「NBL」という雑誌の4月1日号と4月15日号に掲載されていた論文です。
研究者の間で最近ホットなテーマになっている「事情変更の原則」と
「再交渉義務」に対し、実務家はなぜ消極的な態度を取っているのか
という点について小林氏の考えが書かれています。
以下、引用します。

「筆者は、実務と学説の乖離の原因の一つとして、学説における
理論構築の中で、事後的な契約介入がもたらす結果の不確実性や
不均一性という問題がもたらす弊害が、意識的にあるいは無意識的に
考慮の対象から除外されているという点があるのではないかと考えている。」

「裁判所の判断能力の限界を考慮すると、裁判所による契約改訂判断の
過程において、さまざまな機会主義が現れ、むしろ自律的な再交渉が
阻害されてしまう可能性が生じてしまう。」

「事情変更の原則の効果として契約改訂を認めないと不具合が
生じる設例としてしばしばとり上げられるサブリースをめぐる
一連の判決については、実務家の立場からみると、むしろ
結論の異なる下級審判例が乱立し、裁判所が積極的に
契約に介入し賃料を改訂していくことの限界が露呈された
事例であるととらえられる。」

「時代の要請に応じた臨機応変な対応を信義則などを
活用して行えばよい」

面白そうなテーマでしたので、ご紹介いたしました。
勤務先等に「NBL」がある方は、一読されてみてはいかがでしょうか。

ベアリング大手4社による価格カルテル

ベアリング大手4社が価格カルテルを結んでいた疑いが強まったとして、
公正取引委員会が独禁法違反容疑で刑事告発する方針を固めたと
今朝の日本経済新聞が報じています。

ところで、気になったのは、記事中の以下の表現です。

「4社のうち不正を最初に申告した企業については、課徴金減免制度
(リーニエンシー)を適用し、告発を見送るもようだ。」

課徴金減免制度とは、カルテルや入札談合について、公正取引委員会の
調査開始日前に同委員会に対して、報告し、資料の提出を行った者に対して、
課徴金を課さない制度をいいます(独禁法7条の2第10項等)。
ところで、課徴金は、行政上の処分であって、刑事罰とは別のものです。
ところが、独禁法に基づく検事総長に対する告発(独禁法74条1項)は、
検事総長に対して犯罪を申告し、処罰を求める意思表示ですから、
刑事手続上の行為です。
ですから、課徴金減免制度の適用があるということと、告発しないことは
直接結び付くわけではないはずです。

ただ、たしかに課徴金が免除されても、刑事罰を科せられるのでは、
誰も自主申告してこないでしょう。
自首(刑法42条)という制度はあるものの、これは、「刑を減軽することが
できる。」とするだけのものです。
ですから、課徴金減免制度の適用とリンクして告発を見合わせる制度が
あっておかしくはありません。
そこで、調べてみたところ、「独占禁止法違反に対する刑事告発及び
犯則事件の調査に関する公正取引委員会の方針
」というものがあることが
わかりました。
同方針は、次のとおり述べています。

①一定の取引分野における競争を実質的に制限する価格カルテル等であって、
国民生活に広範な影響を及ぼすと考えられる悪質かつ重大な事案については、
積極的に刑事処分を求めて告発を行う。
②ただし、調査開始日前に単独で最初に課徴金の免除に係る報告及び資料の
提出を行った事業者(独禁法第7条の2第10項の規定による報告及び
資料の提出を行った事業者をいう。)については、告発を行わない。

なるほど、たしかに課徴金減免制度の適用がある者については、
告発を行わないとされています。
上記記事は、このことを述べたものと思われます。

若干気になるのは、上記「方針」と独禁法74条1項及び96条1項との関係です。
独禁法74条1項は、「公正取引委員会は、第十二章に規定する手続による
調査により犯則の心証を得たときは、検事総長に告発しなければならない。」と
定めています。
法律が「告発しなければならない。」としているのに、「方針」に基づいて
「告発を行わない。」ということが許されるのかという疑問がわいてきます。
ただ、この点については、公正取引委員会に告発をするか否かの裁量権があると
考えているのでしょう。

次に独禁法96条1項は、「第八十九条から第九十一条までの罪は、
公正取引委員会の告発を待つて、これを論ずる。」としています。
ですから、告発がなければ、刑事罰は科せられないことになります。
ただ、刑事訴訟法238条2項は、告発を待って受理すべき事件について、
共犯の一人に対してした告発は、他の共犯に対しても、その効力を生じるとしています。
とすると、4社のうちの3社について告発してしまえば、残りの1社についても
告発したことになってしまいそうです。
実際には、検察が公正取引委員会の意向を尊重して起訴しないのでしょうが、
制度上はそうなっています。
このあたり、「方針」の表現は不正確な気がします。

なお、本件、ゲーム理論で扱わるような状況だよなと思って、検索してみたら、
ゲーム理論と実験経済学の手法を使ってリーニエンシーを分析した論文を
発見しました。
リーニエンシー制度の経済分析」と題された論文です。
リーニエンシーがどのような効果をもたらすのかという話は、けっこう
難しい話なんですね。




追記
上記疑問に関して、財務省財務総合政策研究所「フィナンシャル・レビュー」
平成23 年第3号(通巻第104 号)2011 年2月白石忠志「政府調達と独禁法」
つぎの記載があるのを見つけました。

「公取委が同一事件について他の者を告発した場合には,独禁法96 条にかかわらず検察当局
は公取委が告発しなかった者も起訴することができるが(刑事訴訟法238 条2項),減免制度
を導入した平成17 年改正に向けた審議の際,法務省刑事局長が国会で答弁して,公取委が告
発しなかった事実を検察当局としては重く受け止めるので減免制度は有効に機能する,という
旨の発言を議事録に残している。」

まあ、そういうことなんでしょう。

與那覇潤「中国化する日本」

例によって長風呂につかりながら読み始めたらとまらない。

帯にあるとおり、著者は、「中国化」と「江戸時代化」という
キーワードを使って、日本史を整理してみせています。
聞きなれない言葉ですね。
著者は、「郡県制」と「封建制」という言葉を使って
言い換えて見せていますが、さらに「グローバル化」と
「鎖国化」という言葉で言い換えることも可能だと思います。
この構図だと聞いたことがあるという人もいるのではないでしょうか。
そう、著者はそんなに突飛なことを主張しているわけではありません。
ただ、最近の学問の成果を縦横無尽に使ってみせる手腕は壮観です。

とにかく面白かった。
さて、寝ないと。


中国化する日本 日中「文明の衝突」一千年史

田村善之、時井真「ロジスティクス知的財産法Ⅰ 特許法」

本書は、司法試験受験生向けの受験対策書ということに
なっていますが、最近の重要判例等の復習になると思い、
読んでみました。

この本は、知財関係の仕事をすることがある
実務家にとっては、頭の整理に役立つ本だと思います。

特許法を分かりやすく解説した本というと、従来は
弁理士試験受験生向けの本ばかりでした。
そういう本は、出願を業務としない者にとっては、帯に短し、
たすきに長しで、読むのに苦労した割りに
あまり役に立たなかった印象があります。
ところが、この本は、侵害訴訟を中心に弁護士が知っておくべき
基本事項を重点的に書いてくれています。
しかも、コンパクトでありながら、結論に至る理由が端的に
示されています。
その結果、すぐに読めて、記憶に残り、応用も利く内容に
なっていると思います。

ラインマーカー片手に今日の午後6時頃から読み始めて、
10時前には読み終わりましたから、ボリュームはそれほど
ありません。
時間があるときにさっと読めるという点でも、お薦めできる本です。


ロジスティクス知的財産法Ⅰ〈特許法〉

三浦しをん「舟を編む」

新聞の広告欄を見ていたら、「三浦しをん「舟を編む」本屋大賞第一位」という
宣伝文句を見つけました。
職場の同僚が、面白い本がありますよと薦めてくれていた本の名前と
同じ名前だということに気づき、ためしに読んでみました。

この小説は、辞書編纂の現場を題材にしたものです。
この本で書かれている辞書編纂の様子は、20年位前に何かの本で読んだのと
同じですが、いまだにカードを使って辞書を作っているのでしょうか。
ただ、いずれにしろ通常の辞書は人間が作成しているものです。
言葉の感覚にすぐれた人間が、丁寧に言葉を選び、文章を磨いて、
できるだけ短い言葉でそれぞれの言葉を説明してくれています。
だからこそ、わかりやすいし、信頼できます。
ですから、紙の辞書から電子辞書に形が変わっても、手放すことはできません。
その辞書編纂の現場の臭いを伝えてくれる本書は、一読の価値があると思います。

ただ、百科事典がWikipediaに実質的に置き換えられつつあるように、
辞書の世界にも大変動が起きつつあるようです。
電子化もそうですが、さらなる根本的変化が起きつつあります。
Google日本語入力は、インターネット上から自動的に用例を見つけて
辞書を生成し、ユーザーの変換を助けています。
専門家に頼るのではなく、集合知を利用するというやり方です。
もちろんこれは辞書の一部の機能を置き換えるものでしかなく、
従来の辞書の存在価値は失われていません。
ただ、将来はわかりません。
私個人は、まだまだ電子辞書を使っていこうと思っていますが、
数年後には、パソコン、スマホしか使わなくなっているかもしれません。
この本の舞台は、現代ですが、昔話に聞こえてしまうというのが、
少し寂しいところではあります。


舟を編む

SMBC日興証券の処分に関する留意点

平成24年4月13日、証券取引等監視委員会は、内閣総理大臣及び
金融庁長官に対して、SMBC日興証券株式会社につき、
行政処分を行うように勧告
しました。
同社を検査した結果、「法人関係情報」(※1)規制に違反する事実が
認められたというのが、上記勧告の理由とされています。
どのような事実が法令違反と評価されたかについては、日経新聞の
説明が分かりやすいと思いますので、それを引用します。

「(SMBC日興証券)の営業部門が上場企業による公表前の増資情報を
担当部門から入手したうえで、個人投資家らに増資で発行される新株を購入する
よう勧誘していた。」

この「法人関係情報」規制は、証券会社など金融商品取引業者に対する規制です。
一般の投資家に適用される規制ではありません。
では、このニュースは一般の投資家には無縁のニュースなのでしょうか。
そうではないと考えます。
この点、正確でありつつ、誤解を招きかねないと思われる表現が、
日本経済新聞の報道の中にありましたので、少し補足したいと思います。
問題の箇所を引用します。

「監視委は10年夏以降に、東京市場で公募増資に絡む
インサイダー取引問題が浮上したのをきっかけに不公正取引の
一掃に乗り出した。公表前の重要情報をもとに株式を売買した場合は、
金商法が禁じるインサイダー取引にあたる。だが、現行の法制度では
増資の主幹事を務める証券会社が情報を公表前に外部に伝えても
インサイダー取引規制には抵触しない。」

インサイダー取引規制とは、簡単にいうと、次のようなものです。

①上場会社等の役職員等の「会社関係者」等が
②当該上場会社等の業務等に関する「重要事実」の発生後、公表前に
③当該「重要事実」を知りながら当該上場会社等の特定有価証券の売買等をすること
を原則として禁止する規制

まず、増資の決定がなされたことは、「重要事実」に当る可能性が
高いと言えます(金商法166条2項1号イ)。
次に、一般に上場会社の増資の主幹事を務める証券会社の役職員であれば、
①の「会社関係者」に当る可能性が高いと考えられます。
直接当該増資作業に携わっている役職員は、金商法166条1項4号に
該当し、その他の役職員は同項5号に該当する可能性が高いからです。
(なお、今回のケースでSMBC日興証券の役職員が、「会社関係者」に
該当するかどうかは不明です。)
ただ、上記日経新聞の記事が伝えるとおり、増資の主幹事を務める
証券会社の役職員が情報を公表前に外部に伝えても、それだけでは
インサイダー取引規制には抵触しません。
情報を外部に伝えること自体は、上記③に該当しないからです。

しかし、では、その場合に、インサイダー取引規制が問題になる余地は
まったくないのかといえば、そうではありません。
インサイダー取引規制は、上記①の「会社関係者」から「重要事実」の
伝達を受けた「第一次情報受領者」も規制の対象としているからです(金商法
166条3項)。

上記の場合において、証券会社の営業担当者から、ある上場会社に関する
増資決定の事実を聞いた投資家は、この「第一次情報受領者」に当る可能性が
あります。
「第一次情報受領者」が、当該重要事実公表前に当該上場会社の株式の売買を
行えばインサイダー取引規制違反となりますから、インサイダー取引規制違反となる
可能性があるのです。
上記日経新聞の記事が「公表前の重要情報をもとに株式を売買した場合は、
金商法が禁じるインサイダー取引にあたる。」としている通りです。

その場合、情報を伝達した証券会社の営業担当者もインサイダー取引罪の共犯と
なり得るという説がありますが、情報の伝達自体は不可罰なので
インサイダー取引罪の共犯としても不可罰となるとする反対説もあります。
いずれにしろ、インサイダー取引罪の正犯となる可能性があるのは、
投資家自身です。
ですから、インサイダー取引規制に関する法的判断を全面的に証券会社に委ねるのは
危険ということになります。

証券会社から、必ず儲かりますと「イイ情報」を教えてもらったときには、
インサイダー取引規制に該当しないか、一度立ち止まって確認した方が
良いでしょう。


※1
「法人関係情報」とは、次のようなものを言うと金融商品取引業等に関する
内閣府令の1条4項14号において定義されています。

①上場会社等の運営、業務又は財産に関する
 公表されていない重要な情報であって顧客の
 投資判断に影響を及ぼすと認められるもの
②公開買付け、これに準ずる株券等の買集め
 及び公開買付けの実施又は中止の決定に係る
 公表されていない情報

最近目にするDIP型会社更生ってどうなの?

エルピーダ等、最近の大型倒産案件において、「DIP型会社更生」という言葉を
目にするようになりました。
数年前までは見なかった言葉です。
これはなんでしょう?
ネットで検索してみると、次のような説明が見つかります。

DIP(Debtor in Possession)型会社更生とは、破綻企業の経営陣が退陣せず、
更生計画などに関与する会社更生手続きを言う。
従来、会社更生手続では、裁判所が選任する弁護士等が保全管理人、管財人となり、
旧経営陣は交代することが必須条件とされる運用が行われていた。
それに対して、民事再生手続では、裁判所の監督の下で旧経営陣が事業を継続しつつ、
債権者の賛成を得て再生計画を成立させるいわゆるDIP型手続が原則とされている。
会社経営者から見れば、民事再生手続の方が使いやすく、そのため、民事再生法が
創設されてからというもの、会社更生法はほとんど使われなくなった。
会社更生法に絡む事案を担当するのは東京地裁民事第8部、民事再生法に絡む
事案を担当するのは民事第20部となるが、民事第20部ばかりが忙しい状況が続いたのである。
その状況下において、民事第8部が平成20年12月に、DIP型会社更生手続きの運用基準を
雑誌において公表した。
これを受けて平成21年1月9日に第1号として、株式会社クリードがDIP型会社更生の
申し立てを行い、その後、多数のDIP型会社更生の申し立てが行われるようになった。

DIP型会社更生というのは、新たな法制度として導入されたものではなく、
会社更生法の運用基準として導入されたものだということがわかります。
その経緯を雑誌記事を追いかけて、見てみましょう。

まず、多比羅誠弁護士ら3名の弁護士が、「私的整理ガイドライン等から会社更生への移行」
(NBL886号7頁)という論文を発表して、会社更生の新たな利用方法を提案しました。
それに対して、当時東京地裁民事8部の部総括判事であった難波孝一裁判官が、
その提案を受け入れることを表明しました(NBL886号12頁)。
さらに難波裁判官は、上記提案を超えて、民事8部の他の裁判官らとともに、「会社更生事件の
最近の実情と今後の新たな展開―債務者会社が会社更生手続を利用しやすくするための方策:
DIP型会社更生手続の運用の導入を中心に」(NBL895号10頁)という論文を発表し、
DIP型会社更生手続きの運用基準を公表しました。
従来、会社更生手続きにおいては、経営陣の総取替えを行ってきたが、法令上DIP型とすることが
禁止されているわけではないので、次の4要件が満たされていれば、会社更生においても
DIP型とすることができるとしたのです。

①現経営陣に不正行為等の違法な経営責任の問題がないこと
②主要債権者が現経営陣の経営関与に反対していないこと
③スポンサーとなるべきものがいる場合はその了解があること
④現経営陣の経営関与によって会社更生手続の適正な遂行が損なわれるような事情が
 認められないこと

この公表に対して、前記多比羅弁護士らは、「現在の実務を所与のものとし、その枠内で
考えがちなわれわれの何歩も先をいくものであった。」と驚きを表明するとともに、
次のような場合にDIP型会社更生の手続を活用できるだろうとの見解を示しました
(NBL895号25頁)。

①担保権者との合意(別除権協定)の成立が困難な事案
②会社分割等の会社組織の変更を手続内で行う必要がある事案
③監督委員の権限よりも強い監督が必要な事案

このような経緯からしても、DIP型会社更生が、実務家の手によって、実務家にとって
使いやすい運用方法として、提案されたことが分かります。

ただ、法律の運用方法は、使い易ければ良いというものではないはずです。
例えば、エルピーダの坂本社長が、会社更生開始の申し立てを行った後も
会社経営を続けることに対して釈然としない思いを表明する意見を目にしたことがあります。
DIP型会社更生という運用は、会社更生の制度趣旨に合致した運用方法なのでしょうか。

この点、会社更生法を含む倒産法の目的はそもそも何なのかということを考える必要があります。
普通の本にはあまり書いていないことなのですが、水元宏典教授は、
「倒産法における一般的実体法の規制原理」という著作において次のとおり説明しています。

水元教授は、まず次の通り、「財産価値最大化理論」を紹介しています。

「倒産法は、歴史的に債権回収法である。会社倒産の局面に限定すれば、
それは、集団的・強制的な債権回収装置であり、その意味は、債務者の
倒産時に、すべての債権者について個別的な債権回収が禁止されることである。
そして、その正当性は、そうすることが財産価値最大化に資すること、また、
そうであるがゆえに債権者全員の合意が想定されることに求められた。」

水元教授は、この「財産価値最大化理論」に対して、公正な分配の
実現のために再配分を行うべきであるとする批判(再配分論)があることを紹介しつつ、
その再配分論を採用することはできないとし、ただし、「財産価値最大化理論」を
絶対視すべきではないとしています。
倒産法の本質を大まかに捉えれば、「財産価値最大化理論」がそれに当たると
考えておけば良いのだと思います。

さて、「財産価値最大化理論」という観点から見た場合、DIP型会社更生は
どのように評価されるのでしょうか。
東京地裁会社更生実務研究会編「最新実務会社更生」は、次のとおり述べています。

「更生手続では、法律上、現経営陣の中から管財人を選任することは可能であるが、
従前は、利害関係のない管財人を選任し、現経営陣を必ず総退陣させる運用が
行われてきた。このような運用は、会社更生の濫用的な申立ての規制等を
目的として行われた昭和42年の会社更生法改正以来の経済社会の意識を
反映したものであり、高度経済成長期には、現経営陣の活用によって企業価値の
毀損防止を図ることよりも手続の公平性や厳格性を重視するのは、
当然のこととして受け止められてきた。
しかし、グローバル経済が進展し、我が国の経済が低迷する昨今の状況下では、
金融機関を含む債権者側においても、破綻した企業との関係を経済合理性に
従って処理する要請が高まっており、再チャレンジの機会を確保することも
経済社会の発展のためには必要であるという認識も、徐々に広まりつつある。」

DIP型会社更生は「財産価値最大化理論」に則した運用方法であると
東京地裁民事第8部は考えているということなのでしょう。

江戸時代には、倒産した者に対して、外出を夜のみに制限する等の
差別的取り扱いが行われていたと聞きます。
しかし、現代の倒産法は、倒産した者を罰することを目的としていません。
債権の引き当てとなる財産の最大化こそが目的と考えられます。
その観点からすると、DIP型会社更生は、正当化されるということになりそうです。


倒産法における一般実体法の規制原理

最新実務 会社更生

武富士、国を訴える

司法関連では、本日の注目ニュースはなんと言っても、
旧株式会社武富士(現TFK株式会社、以下「武富士」)が
法人税の還付を求めて国を訴えたというニュースだと思います。

武富士と言えば、元会長の長男に関する税務訴訟が思い起こされます。
あの事件では、最高裁で長男側が逆転勝訴し、国税が恥をかくことになりました。
その時の訴額もかなりのものでしたが、今度の請求金額は
2374億6470万6270円です。

ただ、今回の訴えは、管財人が、更生債権者に対する弁済の原資とするために
起こしたものです。
つまり、武富士が払い過ぎた税金を国から取り戻して、
武富士に利息を払い過ぎた人たちに対する弁済の資金にしようという話です。
ですから、武富士対国と言っても、前回とはまったく話の内容が違います。

ところで、本件、武富士からプレスリリースが出されていますが
普通に読んだだけでは、良く分からない箇所がいくつかあります。

まず、更正の請求の根拠ですが、この点については、
「過年度の課税所得および法人税額を減額して法人税の還付を受けるべく、
課税庁に対して、国税通則法23条2項1号の規定に基づく更正の請求を
行いました。」とありますので、国税通則法23条2項1号を見てみます。
すると、納税申告書を提出した者は、その申告に係る課税標準等又は
税額等の計算の基礎となった事実に関する訴えについての判決
(判決と同一の効力を有する和解その他の行為を含む。)により、
その事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定したときには、
更正の請求をすることができると書いてあることが分かります。

そこで、「その申告に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎
となった事実」をプレスリリースの文中から探してみると、

「更生会社は、これまで収受した利息制限法所定の利率を超える
利息(制限超過利息)を税務上の益金に算入して課税所得および
税額を計算し、法人税の納付を行ってきました」

というあたりの記載がこれに当たりそうです。
つまり、利息制限法所定の利率を超える”グレーゾーン金利”についても
有効と考えて、そのまま益金として扱い、法人税を支払ってきたというわけです。

次に「判決又は判決と同一の効力を有する行為」を文中から探してみると、
次の文言がそれに当たりそうです。

「利息引き直し計算および債権調査の結果、更生会社が過年度に
収受してきた制限超過利息が無効であることが法的に確定した」

会社更生法150条は、更生債権等の調査によって確定した事項について、
裁判所書記官が作成した更生債権者表は、確定判決と同一の効力を
有するとしています。
この規定と上記記載を併せ読むと、次のことを言っているように
思われます。

①債権届出のあった過払金返還請求権が存在することが、確定判決と
同一の効力を有する書面によって確定した。
②これによって利息制限法所定の利率を超える”グレーゾーン金利”についても、
無効であることが確定した。
③さらにそれにより過年度の税額計算の基礎となる益金は
存在しなかったことも確定した。

ここまでは想像がつくとして、次が分かりません。
「しかしながら、課税庁より、上記更正の請求に理由がない旨の通知処分を受け」と
ありますが、更生の請求に理由がないと課税庁が判断した根拠はなんでしょうか。
過払金返還請求権の存在が確定したとしても、そのことは、
「申告に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となつた事実が
当該計算の基礎としたところと異なることが確定したこと」には
当たらないといったことでしょうか。
本件の場合、確定された事実は、①過払金返還請求権の存在であって、
これによって、③過年度の税額計算の基礎となる益金が存在しなかったことが
確定したわけではないから、更正の請求には理由がない?
正直申し上げて、分かりません。

ところで、本件は、武富士が勝てば、武富士に利息を払い過ぎていた人々が助かり、
武富士が負ければ、国すなわち一般の国民が助かることになります。
また、もし武富士が勝てば、他の貸金業者も更正の請求をしてきそうです。
さらに内容はまったく違うとは言え、武富士対国の第2段ということにもなります。
ですから、本件は、注目される訴訟になるでしょう。

武富士の管財人が訴えを提起するに当っては、東京地裁民事第8部の
許可を得ていると思われます。
要するに民事第8部の裁判官が、本請求には一応の理由はあると考えた
ということになります。
本訴訟は、行政事件を取り扱う東京地裁民事第2部、第3部又は第38部の
いずれかに係属することになると思いますが、その部の裁判官はどのように
判断するのでしょうか。


追記

課税庁が更正の請求に理由がないとした根拠は、
昭和46年11月9日最高裁判所審査決定及び所得税更正決定等の取消請求事件判決でしょうか?
関係しそうな箇所を引用します。

「利息制限法による制限超過の利息・損害金の支払がなされても、その支払は弁済
の効力を生ぜず、制限超過部分は、民法四九一条により残存元本に充当されるもの
と解すべきことは、当裁判所の判例とするところであつて(昭和三五年(オ)第一
一五一号同三九年一一月一八日大法廷判決、民集一八巻九号一八六八頁)、これに
よると、約定の利息・損害金の支払がなされても、制限超過部分に関するかぎり、
法律上は元本の回収にほかならず、したがつて、所得を構成しないもののように見
える。
 しかし、課税の対象となるべき所得を構成するか否かは、必ずしも、その法律的
性質いかんによつて決せられるものではない。当事者間において約定の利息・損害
金として授受され、貸主において当該制限超過部分が元本に充当されたものとして
処理することなく、依然として従前どおりの元本が残存するものとして取り扱つて
いる以上、制限超過部分をも含めて、現実に収受された約定の利息・損害金の全部
が貸主の所得として課税の対象となるものというべきである。もつとも、借主が約
定の利息・損害金の支払を継続し、その制限超過部分を元本に充当することにより、
計算上元本が完済となつたときは、その後に支払われた金員につき、借主が民法に
従い不当利得の返還を請求しうることは、当裁判所の判例とするところであつて(
昭和四一年(オ)第一二八一号同四三年一一月一三日大法廷判決、民集二二巻一二
号二五二六頁)、これによると、貸主は、いつたん制限超過の利息・損害金を収受
しても、法律上これを自己に保有しえないことがありうるが、そのことの故をもつ
て、現実に収受された超過部分が課税の対象となりえないものと解することはでき
ない。」

やっぱり、上記①と③は別の話ということですかね?

シャープとソニーに何が起きているんだろう?

4月10日、シャープが連結業績に関する予想を修正しました。
2900億円の純損失予想を3800億円の純損失予想に修正するという内容です。
修正の理由として「体質改善費用」の計上等を挙げていますが、
「体質改善費用」ってなんでしょう?
よく分かりません。

そして、ソニーも連結業績の見通しを修正しました。
2200億円の純損失の見通しとしていたのを
なんと5200億円の純損失の見通しに修正です。
修正の理由としては、米国などにおける繰延税金資産に対し
評価性引当金を計上することなどにより、追加の税金費用約3000億円を
計上する見込みになったことを挙げています。
こちらは修正の理由そのものは、はっきりしていますが、その見直しを
なぜ現時点で行ったのかが、よく分かりません。

両社とも2月の時点における損失予想だけでも衝撃的でした。
今回、いとも簡単に巨額の損失を上乗せしてきて、その修正理由に
不明な点があることはさらに衝撃的です。
強いて明るい面を探せば、もしかするとV字回復の演出を狙った
損出しかもしれないということくらいでしょうか。

さっき長風呂につかりながら野口悠紀雄氏の著作「製造業が日本を滅ぼす」を
読んでいたところですが、日本は過去の成功体験を捨てないと大変なことに
なりそうです。

2012年3月期の連結最終損益予想

パナ     ▲7800億
ソニー    ▲5200億
シャープ   ▲3800億
エルピーダ ▲1200億
NEC     ▲1000億
任天堂   ▲650億円

サムスン +4230億円 


製造業が日本を滅ぼす

仮執行宣言・仮地位仮処分命令と判決

なんだか、タイトルからして、メンドクサイですが、
最高裁判所平成24年4月6日建物明渡請求事件判決の話題です。
今日は、少し専門的な話になります。
また、判例検索システムで調べても原審判決は見つかりませんでした。
現状手に入る資料は、上記リンク先の判決文のみです。
ですから、かなり分かりにくい話になっています。
個人的なメモとして書きますが、急いで理解する必要がない方は、
判例タイムズ等に解説記事が掲載されるのを待った方が良いかもしれません。

判決要旨は次のとおりです。

「控訴審は,第1審判決の仮執行宣言に基づく強制執行によって
建物が明け渡されている事実を考慮することなく,
明渡請求と併合されている賃料相当損害金等の支払請求の当否や
抗弁として主張されている敷金返還請求権の存否を判断すべきである」

これだけでは、何の話か分かりませんね。
まず、先例となっている最高裁昭和36年2月9日判決の判決要旨を
見てみましょう。

「仮執行宣言付の第1審判決に対して控訴があったときは、その執行に
よって弁済を受けた事実を考慮することなく、請求の当否を判断すべきである。」

第1審判決で100万円を支払えという仮執行宣言付の判決が言い渡され、
この仮執行宣言に基づいて被告が原告に対して100万円を支払いました。
控訴審で被告(控訴人)は、100万円を弁済したので、原判決を
取り消して原告(被控訴人)の請求を棄却すべきだと主張できるでしょうか。
もちろんできませんね。
請求が棄却されたら、原告(被控訴人)は、100万円を返さなければ
ならなくなってしまいます。
そういう話をしているのが、上記36年判決です。

似た判決も紹介します。最高裁判所昭和35年2月4日判決です。
判決要旨は、次のとおり。

「仮処分の執行により仮の履行状態が作りだされたとしても、裁判所は
かかる事実を斟酌しないで本案の請求の当否を判断すべきである。」

さて、ここまでは比較的簡単です。
ここから先がメンドクサイ。
なぜ仮の履行状態を斟酌しないのか、その理屈について、
最高裁昭和63年3月15日判決は、次のとおり述べています。

「仮処分債務者の仮払金支払義務も当該仮処分手続内における
訴訟法上のものとして仮に形成されるにとどまり、その執行によって
実体法上の賃金請求権が直ちに消滅するものでもない。
したがって、仮払金返還請求権は、右賃金請求権の存否に関する
実体的判断とはかかわりを有しないこととなる」

どういう意味でしょう。
最高裁判例解説を読んでみます。

賃金仮払仮処分は、「給付裁判の形式をとっても被保全権利たる実体的な
賃金債権自体の給付を命ずるものではなく、これとは別に、訴訟法上の
保全状態を創設し、賃金相当額の金員支払義務を新たに発生させる
ものであり、仮処分手続内において執行力ある債務名義を作成する
前提としての意義を有するにすぎず、債務名義に基づく執行は
直ちに実体的な賃金債権を消滅させる効果を持つものではない」

要するに、賃金仮払仮処分命令に基づいて金員を支払ったとしても、
賃金を払ったことになるわけではないということになります。
だから、賃金の支払を求める本案訴訟において、仮処分命令に基づいて
金員を支払ったことを考慮してはいけないということになるわけですね。

さて、ここで問題です。
仮処分命令に基づいて100万円を支払った後に、その期間に見合う
賃金100万円を支払えという判決が言い渡された場合には、
どうなるのでしょう。
この点について、2重払いになるのだと思わせる解説をしていた人が
いたそうです。
もちろん、そんなことにはなりません。

東京高等裁判所平成5年5月26日千代田化工建設事件判決を
引用します。

「本案訴訟において仮処分債権者が勝訴した場合、既に事実上
被保全権利が満足を得たのと同様の状態にあることから、
さらに本執行を申し立てて権利の実現を図る必要性もその余地もない。
そこで、満足的仮処分の執行後に仮処分債権者が本案訴訟で勝訴した
ときには、特に本執行への移行というような観念を入れるまでもなく、
当然に、本執行が行われたと同一の効果が仮処分執行時に
遡って生ずるものというべきである。そして、これとともに原則として、
仮処分自体も、その目的を達成して消滅すると解すべきである。
なお、この理は、満足的仮処分を債務名義として強制執行を申し立てる
までもなく、債務者が右仮処分に従って金員を支払うなど仮の履行を
した場合においても同様であることはいうまでもない。」

民事保全法の代表的な体系書瀬木比呂志「民事保全法」からも引用しておきます。

「保全執行は本執行に移行することに意味があり、自己完結性を
持ちえないものであるという原則についても、断行の仮処分という
例外がある。断行の場合の本執行移行は観念的なものにすぎない
(あらためて現実に本執行手続が行われるわけではないから、
本執行といってみても観念的なものでしかない)。」

本案訴訟において勝訴判決が確定したからといって改めて
本執行が行われ、その結果2重払いになるわけではないということになります。

仮執行宣言の場合には、もっと簡単です。
仮執行宣言付判決を債務名義とする強制執行自体が、そもそもいわゆる本執行です。
上訴を棄却する判決が言い渡された場合には、仮執行宣言の効果として原判決の
執行力が生じるだけですから、2重払いになることはありません。

さて、かなりの長旅でしたが、冒頭の平成24年4月6日判決に戻りましょう。

「控訴審は,第1審判決の仮執行宣言に基づく強制執行によって
建物が明け渡されている事実を考慮することなく,
明渡請求と併合されている賃料相当損害金等の支払請求の当否や
抗弁として主張されている敷金返還請求権の存否を判断すべきである」

上記判決要旨の意味は、もう分かりますね?
仮執行宣言に基づいて建物を明け渡していたとしても、控訴審では
そのことを考慮しないで判断すべきだと述べていることになります。
でも、そうなると建物を明け渡しているにもかかわらず、賃料相当
損害金が発生し続けることになりませんか?
その点については、判決は、次のとおり述べてフォローしています。

「上記の給付がなされた事実を控訴審が考慮しなかった結果第1審判決が
確定したとしても、上記の給付がされたことにより生じた実体法上の効果は、
仮執行宣言が効力を失わないことを条件とするものであり、当該確定判決に
基づく強制執行の手続において考慮されるべきことであるから、上記の
給付をした者の権利が害されることはない。」

以上です。

縮む経済と生活保護

日本の経済ですが、1995年から2010年までの平均をとると
約0.8%成長してきたとされています。
リーマン・ショックのような大きな景気後退もありつつ、平均を取れば
着実に経済成長してきたとされているわけです。
でも、その成長をみなさんは、実感されていますか?
実感されていない方の方が、多いと思います。

なぜでしょうか?
4月8日の日経新聞3面のコラム「けいざい解読」の一部を引用します。

「日本綜合研究所の山田久調査部長が経済協力開発機構
(OECD)のデータで分析したところ、日本の名目賃金は
1995~10年に11%減っていた。」

なんと、賃金は減っていたのです。
賃金が11%も減っていたら、経済は成長しそうにないですよね?
不思議だと思いませんか?
こんな不思議なことが起きるのは、実は、経済成長率を計算するときには
インフレ調整をした後の数字である実質GDPを用いていたからなんです。
では、1995年~2010年の間、インフレ調整をする前の名目GDPは
どのように変化してきたのでしょうか。

1995年  501兆円
1996年  511兆円
1997年  523兆円
1998年  512兆円
1999年  504兆円
2000年  509兆円
2001年  505兆円
2002年  499兆円
2003年  498兆円
2004年  503兆円
2005年  503兆円
2006年  506兆円
2007年  512兆円
2008年  501兆円
2009年  471兆円
2010年  481兆円
 (以上、1兆円未満切捨て)

名目GDPは1997年をピークに、減っています。
みなさんが目にする現実の数値は、名目の数値ですから、
経済の成長を実感できないのは、当然だったのです。

ところで、自民党が、生活保護の削減を次期衆院選の
マニフェストとして掲げるそうです。
先日、生活保護の老齢加算が廃止されたことに関する最高裁判決
(平成24年4月2日最高裁判所生活保護変更決定取消請求事件判決)が
言い渡されましたが、自民党の上記政策が実現することになれば、
また憲法25条違反だとして、訴えが起こされることになるでしょう。
生活保護に関して、具体化された制度を後退させることは原則として
許されないとする「制度後退禁止原則」を唱える憲法学者すらいますから、
かなり激しい反対論が主張されることになると思います。

しかし、経済が縮小する中、生活保護の受給者は209万人を超え、
生活保護予算は3.4兆円を記録しており、財政が破綻しかかっています。
また、一説によると、ワーキングプアの生活水準が生活保護の水準を下回り、
働き損になる状況すら生じているそうです。
単純に生活保護費を減額すれば良いという話ではないと思いますが、
このような状況を考えると、何らかの見直しは避けられそうにないと思います。


P4082058

サクラサク

P4072030


P4072028


P4072034


P4072009

亀井氏の印鑑

時事通信が、国民新党に対する政党交付金が支給されないかもしれないと
伝えています。
17時46分配信と記載されていますから、つい先ほどの
ニュースですね。

どういう話なのかというと、こういう話です。

政党交付金は、請求書を提出しなければ交付されません。
そして、政党交付金の請求書を提出するときには、政党の登記事項証明書を
添付しなければなりません。
その登記事項証明書には、代表者の氏名が記載されていなくてはなりません。
そうすると、国民新党の新代表とされる自見氏が同党を代表して政党交付金の
請求書を提出する際には、同氏が代表者として記載されている
登記事項証明書を添付しなければならないということになりそうです。
ところが、代表者であった(である?)亀井氏の印がないと代表者を変更する旨の
変更の登記ができず、上記登記事項証明書を取得することができないため、
政党交付金が交付されないかもしれないというのです。

関連する条文を確認してみましょう。

政党助成法11条2項
「政党は、前項の規定により政党交付金の交付を受けようとするときは、
総務省令で定めるところにより、総務大臣に対し、請求書を提出しなければならない。
この場合において、政党は、法人格付与法第四条第一項の規定による
法人である政党である旨を証する登記事項証明書を添付しなければならない。 」

同条3項
「前項の請求書を同項の定めるところにより提出しない政党に対しては、
その年分の政党交付金は、交付しない。ただし、その年の十二月の交付時期までに
当該請求書の提出があった場合には、当該請求書に係る政党交付金については、
総務省令で定めるところにより、交付する。」

政党助成法施行規則7条3項
「前項の請求書に添付する政党交付金の交付を受ける政党等に対する法人格の
付与に関する法律 (平成六年法律第百六号。以下「法人格付与法」という。)
第四条第一項 の規定による法人である旨を証する登記事項証明書は、
政党の名称、主たる事務所の所在地並びに代表権を有する者の氏名及び
住所が記載されたもの(当該証明書が提出された日前三十日に当たる日後に
作成されたものに限る。)とする。」

政党交付金の交付を受ける政党等に対する法人格の付与に関する法律7条の2第2項
「前項の規定による登記の申請書には、前条第二項各号に掲げる事項の変更が
あったことを証する代表権を有する者の記名押印した書面(代表権を有する者の
変更があった場合には、他に代表権を有する者があるときは当該変更があったことを
証するその者の記名押印した書面とし、他に当該書面を作成することができる
代表権を有する者がないときは当該変更があったことを証する代表権を
有していた者及び代表権を有するに至った者の記名押印した書面とする。)を
添付しなければならない。」

なるほど。

株式会社の代表取締役を解職し、新たな代表取締役を選任した場合には、
解職された者の印鑑がなくとも変更の登記が可能となるように制度設計されています。
代表取締役を本人の意思に反して解職することは、良くあることなので、当然です。
政党でも当然ありえることだと思います。
国会議員の先生方は、自分たちの政党内において、代表者の地位を巡って
内紛が起きることを考えたくなかったのでしょうか?

でも、これどうするんでしょう?
①特段の事情があるとして、変更の登記の申請を受け付ける?
②請求書における代表者名と登記事項証明書における代表者名が違っていても、
交付請求としては有効とする?
③法人格付与法9条の4に基づいて特別代理人を選任し、その者の押印をもって代える???
それとも、④国民新党内で決着がつくまで支払わない?

そういや、そもそも政党の唯一の代表者が行方不明になったり、死亡した場合には、
変更の登記はどうするのでしょうか?
そう考えると、①???
私が見落としている法令があるのかもしれません。
政党のことは良く分からないですね。
さて、どうなることやら。


追記

時事通信の記事が修正され、下記記載が加筆されています。

「このため、党内には一時、「亀井氏の協力がなければ交付金は受け取れない」
との見方が広がった。ただ、総務省は「法人格が付与されていれば、
交付されることになる」として、登記上と実際の代表者が異なっていても
問題ないと説明している。自見庄三郎新代表が申請すれば、年内に衆院選がない限り、
満額支給される見通しだ。」

総務省は、②の考えをとったということですかね? 
まあ、登記関連は法務省の管轄ですので、総務省が勝手に①を採用する
わけにもいかないでしょうし。

切り餅事件判決を斜め読みしました

マスコミでも報道されて有名になった越後製菓(原告)vs佐藤食品工業(被告)の
切り餅に係る特許訴訟について、判決全文が裁判所のウェブサイトにアップロード
されましたので、中間判決と共に読んでみました。

中間判決: 知財高裁平成23年9月7日判決
終局判決: 知財高裁平成24年3月22日判決

いや、これ面白いですね。
私が興味をもったところだけ抜き出してみると、どうもこういうことらしいんです。
(知財の専門家たちはクレームの解釈の方に注目しているようですが、
ここでは触れません。)

原告は、自分が平成14年10月31日に出願した特許を被告が侵害したと訴えました。
その特許は、切り餅の側面に切れ込みを入れておくと餅が上手く焼けるというものでした。

被告は、その出願日前の平成14年10月21日ころには、切り餅の側面に切れ込みを
入れた商品を売っていたからその特許には新規性がなく無効であると主張しました。
そして、当時販売していたものと同じ「こんがりうまカット」という切り餅を公証人に見せて、
事実実験公正証書を作成してもらい、その公正証書を証拠として提出しました。

ところが、知財高裁は次の理由で、平成14年10月21日ころに被告が
売っていた「こんがりうまカット」の側面には切れ込みが入っていなかったと認定し、
特許は有効と中間判決において判断しました。

①イトーヨーカ堂のバイヤーが、平成14年当時に売られていた「こんがりうまカット」の
側面には切れ込みはなかったと証言している。
②平成14年当時に販売していた切り餅をいままで保存していたというのは不自然。
③被告が、平成15年7月17日に「上面、下面、及び側面に切り込みを入れたことを
特徴とする切り餅」について特許を出願していることからすると、平成14年10月21日に
側面に切り込みを入れた切り餅を売っていたということはありそうにない。
④被告が平成15年9月1日に発売した「パリッとスリット」という商品に関する
新聞記事を見ると、「こんがりうまカット」と比べたときの「パリッとスリット」の特徴として
切り餅の側面に2本の切り込みを入れたことが書いてある。

要するに、被告が公証人に見せた「こんがりうまカット」は偽物だったと
知財高裁が認定したということですよね?
これって、「逆転裁判」ですか?
いや、おもしろい。

上記のとおり、知財高裁は、特許は有効であり、被告は特許を侵害していると中間判決で
判断しました。
この中間判決が出たのが、平成24年9月7日でした。
侵害があるかないかについては、すでに勝負アリというわけで、
知財高裁は、損害論の主張立証をさせるのと並行して、和解を試みました。
ところが、被告が低額の和解金による和解案しか提示しなかったため、
和解は成立しませんでした。
どうやら被告は中間判決の判断に納得がいかなかったようで、
代理人を変えるとともに、先使用の抗弁、権利濫用の抗弁、公知技術の抗弁を主張し、
証拠を提出しようとしました(100を超える書証と証人尋問及び検証の申出)。
しかし、裁判所は実質的には従来の主張の繰り返しに過ぎないし、そんな膨大な証拠調べを
することは訴訟遅延になるとして、当該主張及び証拠提出を却下しました。

で、口頭弁論が終結され、平成24年3月22日言渡しの終局判決に至ったということになります。

中間判決の結論については、意外という受け止め方が多かったようです。
クレームの解釈についての専門家の意見(異論?)を多く見かけました。
また、被告のどうしても納得いかないという気持ちも伝わってきます。
ただ、真相は分かりませんが、上記の流れだけを見ると、今回の結論は、
当然のものだったように思われます。
判決主文を見ると、損害賠償と製造販売の禁止だけでなく、製造装置の廃棄まで
命じられてしまっており、知財訴訟の恐ろしさを改めて思い知らされます。

ところで、私個人の着目ポイントは、次の原告の主張とそれに対する裁判所の判断です。

主張:「被告による本件特許権侵害と相当因果関係のある弁護士費用及び弁理士費用
相当額は、8億4111万円を下らない。」

判断:「被告の不法行為と相当因果関係のある弁護士費用及び弁理士費用としては、
7298万円と認めるのが相当である。」

うーむ(いろいろな意味で)

ドイツの「失敗」にみる太陽光発電の難しさ

つい数年前のことですが、ドイツ政府の先進的な再生可能エネルギー政策によって、
Qセルズという会社が、太陽電池メーカーとして世界一になった、日本も見習え
といった主張を良く目にしました。
ところが、昨日、そのQセルズが倒産したというニュースを目にすることになりました。
聞いていた話とあまりにも違います。
そこで、ちょっと太陽光発電の事情について調べてみました。

すると、実は倒産したのはQセルズだけではないことがわかりました。
昨年12月には、ドイツの太陽電池モジュールメーカー「ソロン」と
太陽光発電プロジェクト開発業者の「ソーラーミレニアム」が倒産し、
今月2日には、アメリカのメガソーラー開発業者の「ソーラー・トラスト・オブ・アメリカ」も
ドイツの親会社の倒産の影響を受けて倒産しています。
日経新聞の報道によれば、昨年末以降、ドイツでの太陽電池メーカーの破綻は
5社目になるそうです。
それだけではありません。
倒産の直接の原因は、太陽電池の価格が急落したことですが、
サンテック(中国)、JAソーラー(中国)といったトップメーカーも
軒並み赤字だというのです。

なぜこんなことになったのでしょう。

太陽電池が、誰でも作れるコモディティ化し、激しい価格競争が起きたということも理由ですが、
ヨーロッパの政策の変更も理由となっているようです。
ドイツの例を見てみると、ドイツでは、2000年から電力の買取り制度を導入し、
再生可能エネルギーの普及に取り組んできました。
そのために投じられた補助金は総額10兆円を超えるそうです。
その結果、ドイツでは、太陽光発電の供給量が急速に増加しました。
昨年だけでも発電能力にして7.5ギガワット分増加したそうです。
補助金の原資は電力料金ですので、電力料金は上昇し、ドイツ人は先進国で
2番目に高い電力料金を支払うことになってしまいました。
しかし、そこまでしても、太陽光による発電量は、ドイツの全エネルギー消費分の0.3%でしかありません。
太陽光発電の費用対効果はあまりにも劣悪なのです。
そこで、買取り制度は、大幅な見直しを迫られることになりました。
買取り価格を引き下げたり、買取り量を制限することになったのです。
買取り制度の見直しを行ったのは、ドイツだけではありません。
フランス、イギリスやイタリアも見直しを行っています。

そのため、太陽光発電パネルの売上が急減し、価格が暴落したのが、太陽電池メーカーの
相次ぐ倒産の原因の一つだというのです。

要するに太陽光発電は補助金頼りの事業だったが、あまりにも大きくなりすぎ、
国民が太陽光発電事業を支えきれなくなったということでしょう。
そうすると、より根本的な原因は、太陽光発電が巨額の補助金に頼らないと継続不可能だ
と言う点にあることが見えてきます。

ところで、再生可能エネルギーの買取り制度が7月1日に施行されることを踏まえて、
発電事業者から、買取り価格の希望価格が示されました。
発電方法によって、希望価格は違い、次のとおりとなっています。

太陽光:       42円
風力:     22~25円
地熱:       25.8円
水力:         24円
木質バイオマス: 25.2円
可燃ゴミ:     16.5円

太陽光発電の希望価格が圧倒的に高いことがわかります。
これは何を意味するのでしょうか。
太陽光発電のコストがずば抜けて高い、効率が極めて低いということです。
ドイツがあれだけの金を投じても太陽光発電のコストはそれほど下がらなかったのですから、
これから急速に下がるということは考えにくいでしょう。

太陽光発電に夢があることは認めますが、ドイツの「失敗」を踏まえると、
太陽光発電の未来については慎重に考える必要がありそうです。


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株式買取価格決定申立て却下決定に対する抗告事件

最高裁平成24年3月28日決定の話題です。

大阪証券取引所の市場第二部に株式を上場していた会社が、
全部取得条項付種類株式を利用する例の方法で発行済み株式を
強制取得しようとしました。
これに反対する株主は、①全部取得条項付種類株式となった後の
株式の取得価格の決定の申立てと②元の普通株式の株式買取請求権
及び買取価格の決定の申立てによって自己の利益を守ろうとしました。
本件は、②の買取価格決定に関する抗告事件ということになります。

ところで、本件では、上記株主は、個別株主通知をしていませんでした。
これには、当該会社が上場廃止になっていたという事情もあったのですが、
最高裁は、次のとおり述べて、従前の判例どおり、個別株主通知が
なされていない以上買取請求は不適法となり、買取価格の決定の申立ても
不適法となると判断しました。

「振替株式について株式買取請求を受けた株式会社が,
買取価格の決定の申立てに係る事件の審理において,同請求をした者が
株主であることを争った場合には,その審理終結までの間に個別株主通
知がされることを要するものと解される(最高裁平成22年(許)第9号同年12
月7日第三小法廷決定・民集64巻8号2003頁参照)。
上記の理は,振替株式について株式買取請求を受けた株式会社が
同請求をした者が株主であることを争った時点で既に当該株式について
振替機関の取扱いが廃止されていた場合であっても,異ならない。なぜならば,
上記の場合であっても,同株式会社において個別株主通知以外の方法により
同請求の権利行使要件の充足性を判断することは困難であるといえる一方,
このように解しても,株式買取請求をする株主は,当該株式が上場廃止となって
振替機関の取扱いが廃止されることを予測することができ,速やかに
個別株主通知の申出をすれば足りることなどからすれば,同株主に過度の負担を
課すことにはならないからである。」

なお、原審では、②普通株式の買取請求は、同普通株式が全部取得条項付
種類株式となったことを前提とする①取得価格決定の申立てと矛盾するから、
不適法となると判断していました。

この点について、最高裁は、取得価格決定の申立てをしたことを理由として、
直ちに、当該株式についての株式買取請求が不適法になるものではないとしました。
しかし、その一方で、株式買取請求の効力が生じる前に全部取得条項付種類株式の
取得日が到来して、株主が株式を失うと、買取価格決定の申立ての適格性を欠くことに
なるとして、結論としては、原審の判断は是認することができるとしました。

「資本論」を少し読んでみました

中山元氏訳の「資本論」を読んでみました。
といっても、現時点では、「資本論」第1巻の半分までしか出版されていませんので、
冒頭のみということになります。

ところで、フランスの哲学者ルイ・アルセチュールは、「資本論」の読み方として、
第1篇を読み飛ばして、第2篇から読み始めることを提案しているそうです。
第1篇は難解だからというのです。
しかし、第1篇は、「資本論」の土台が述べられた箇所です。
重要ではないというわけではありません。
その中の一文を引用します。

「商品の使用価値または財が価値をもつのは、そこに抽象的な人間労働が
[物的なものとして]対象化され、物質化されているからである。この価値の
大きさはどのようにして測定されるのだろうか。そこに含まれる[価値を形成する
実体]の大きさ、すなわち労働の量によってである。この労働の量そのものは、
労働が持続した時間の長さで決定され、この労働の時間の長さを測定する
尺度は、1時間、1日のように、特定の時間の長さである。」

このいわゆる労働価値説を土台として、マルクスは議論を積み重ねていきます。
ところが吉原直毅教授は、「マルクス派搾取理論再検証-70年代転化論争の帰結-」において、
労働価値は市場の均衡価格決定の説明要因たり得ない事が数理マルクス経済学によって
判明していると主張しています。
アルセチュールとは違う意味で、第1篇の価値が揺らいでいるということなるでしょう。
さらには「資本論」自体も?

ともあれ、「資本論」の影響力が弱くなった今だからこそ、気楽に「資本論」を読んでみるというのも
なかなか楽しいものです。
続刊が出たら、そちらも読んでみたいと思います。


資本論 第1巻 Ⅰ (日経BPクラシックス)

資本論 第1巻 Ⅱ (日経BPクラシックス) (NIKKEI BP CLASSICS)
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