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大阪地方裁判所平成24年7月30日殺人被告事件判決

大阪市平野区で昨年7月に姉を刺殺したとして、
42歳の男性が殺人罪に問われた裁判で、
求刑の懲役16年を上回る懲役20年の
判決が言い渡されました。

裁判所は、量刑の理由として、次の事情を挙げたそうです。

「社会内で被告の受け皿が何ら用意されていない。
許される限り長期間刑務所に収容することが、社会
秩序の維持にも資する」

危ない人間だから、社会から隔離しておくべきだという
ことでしょう。

ところで、刑罰の基礎となっている考え方は、大まかに言うと、
悪いことをしてけしからんから罰するということです。
危ない人間だから、社会を防衛するために処分するという
考え方は、刑罰ではなく、保安処分の考え方です。
過去に、精神障害者や薬物中毒者について、刑罰を科す代わりに、
保安施設への強制収容を命じるという、保安処分の制度を設ける
刑法改正案が提案されたことがあります。
しかし、人権侵害の恐れがあるという批判があり、この改正案は
採用されませんでした。

本判決は、現行制度にない保安処分の考え方を取り入れて
量刑を重くしているように見えます。
ですから、専門家の間から、批判の声がかなり上がっているようです。

ただ、本判決は、裁判員裁判によるものです。
もしかすると、今の一般社会の常識では、危ない人間は隔離して
当然ということになっているのかもしれません。
1970年代には、法務省刑事局参事官が次のように述べて
いたのですが、一般社会の常識が変容しているということは
十分ありえると思います。

「行為の重大性なり行為責任の大きさなりを唯一の量刑基準とする
考え方も可能であって、一般社会人の素朴な刑法感覚からは
いまなお強い支持を得ているところといってよいであろう。」
(鈴木義男「量刑の基準」法学教室第2期3号36頁)

そして、その社会常識が、この判決文に取り入れられたのだとすると、
これからこういう判決が増えてくる可能性がありそうです。
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孫崎亨「戦後史の正体」

元外務省国際情報局長が書いた刺激的な戦後史です。
さっき、コンビニで受け取ったばかりですが、
高校生にも読める本にしたという著者の考えのとおり、
読みやすく、あっという間に読み終えてしまいました。

戦後の政治家には、米国との関係において、自主路線を
歩もうとした人々(自主派)と、米国の意向に迎合しようとした
人々(対米追随派)がいる。
そして、自主派の政治家が、米国の関与によって失脚させられて
しまった事例が数多くある。
米国の意向を受けて、自主派の政治家を失脚させるメカニズムが
日本の中にあり、その中核は検察と報道である。
最近でもそのメカニズムが働いて鳩山由紀夫と小沢一郎が
失脚させられた。
こんなことが書かれています。

1960年の安保闘争をひきいた全学連の資金源は、財界だった。
自主独立路線を歩もうとした岸政権を倒そうと、
米軍・CIAが画策して、資金が提供された。
米国が有名大学の学生運動や人権団体、NGOなどに資金や
ノウハウを提供して、反米的な政権を倒すきっかけを作るというのは
非常に良くある話である。
こんな興味深いエピソードも紹介されています。

ただ、この本が指摘していることの中で私にとって新鮮だったのは、
日米地位協定の重要性です。
新聞報道等でその名称は目にしたことはあります。
しかし、その条文を読んだことはありませんでした。
条文を読んでみて、不明を恥じることになりました。
日本はいまだ米国の属国であるという日米関係の本質を規定した
協定であるように思います。
米国の謀略云々という真偽不明の話よりも、その本質がずっと
変わらずに来たという指摘の方が重要だと私は感じました。


戦後史の正体 (「戦後再発見」双書)

ダブル・アイリッシュ・ウィズ・ア・ダッチ・サンドウィッチ

何だか、美味そうな名前ですが、食べ物ではありません。
7月23日月曜日の日経新聞が紹介していた、ある節税スキームの名前です。
記事は、米大手企業がダブル・アイリッシュ・ウィズ・ア・ダッチ・サンドウィッチ
(DIDS)をはじめとする巧みな税務戦略を展開しているのと比べて、
日本企業は後れを取っているとしています。
そして、その背景に日本の税法やその運用が不透明だという事情が
あるとしています。

たしかに日本企業は一般的に税務戦略に対してあまり関心を持ってこなかった
ように思います。
ですから、その点の指摘は正しいように思います。
しかし、よりによって、DIDSを例に持ち出しつつ、日本企業は遅れている、
日本の税制は不透明すぎると解説するのはどうなんでしょうか。

DIDSを開発したとされるアップル社は、節税スキームを活用し、
莫大な税金の支払いを逃れていると、つい先日、ニューヨーク・タイムズに
長文の批判記事を書かれて、話題になったばかりです。
日本企業がDIDSを利用しようとすると、日本のタックスヘイブン対策税制が
適用され、課税されてしまう恐れがあると日経新聞は書いていますが、
それは日本の税制の不透明さよりは、むしろ先進性を示しているようにも
思えるのですがね。

中国の貯蓄率の高さがもたらすもの

つい最近知ったのですが、中国の貯蓄率は50%を超えているそうです。
貯蓄、投資、輸出及び輸入との間には大まかに言うと、次の関係がなりたちます。
貯蓄=投資+輸出-輸入
これだけ貯蓄率が高いとなると、巨額の投資と輸出によって経済のバランスを
保っていることになります。
実際、中国の経済データは次のとおりとなっています。

「中国国家統計局のデータによると、2011年のGDPは47兆元に達し、このうち
最終消費総額が22兆5000億元、資本形成総額(投資)が22兆9000億元、
純輸出が1兆2000億元となった。同データに基づき計算すると、
中国の貯蓄率は52%に達し、世界最高水準に達した。」(2012.07.02 中国網日本語版)

実質GDP成長率が8%にまで低下しつつあるというだけで危機の予兆が噂されていることに
疑問を持っていましたが、なるほど納得です。
成長が鈍化し、積極的な投資活動が鈍ったら、とたんに大恐慌になっても不思議ではありません。

ポール・クルーグマン「さっさと不況を終わらせろ」

ケインズ流の財政政策を大胆に行えば、不況退治なんて簡単にできる。
財政赤字は、適度なインフレと経済成長があれば、気に病む必要はない。
要約するとこういうことを言っている本です。

それはともかく、本書第10章におけるヨーロッパの経済危機に関する分析が秀逸でした。

① スペイン、イタリアの金利は従来高かった。ところが、ユーロが創設されたことにより、投資家たちは、スペイン、イタリアへの貸付をドイツへの貸付と同等に安全なものと考えるようになってしまった。その結果、スペイン、イタリアの金利が大幅に下がった。
② スペイン、イタリアの金利が大幅に下がったことにより、巨大な住宅バブルが発生し、ドイツから巨額の資金がそれらの国に流入した。
③ 巨額の資金が流入したことにより、スペイン、イタリアの賃金が上昇し、製造業が競争力を失って、それらの国は巨額の貿易赤字を垂れ流すようになった。
④ そういう状態であったところに、金融危機が起きて、住宅バブルが破裂し、税収が減り、失業手当が激増し、銀行救済のすさまじい負担を強いられることになった。

思い返してみると、たしかにユーロ創設直後の時期、スペイン、イタリアが好景気に沸き立っているという話を良く聞きました。こういう仕組みになっていたわけですね。


さっさと不況を終わらせろ

会社法制の見直しに関する要綱案(第1次案)

会社法制部会資料として、「会社法制の見直しに関する
要綱案(第1次案)」
が公表されています。
「「会社法制の見直しに関する中間試案」に対して
寄せられた意見の概要」
と見比べてみると、社外取締役の
選任の義務付けを除き、経済界が反対しているものについても、
改正の方向で議論が進んでいるようです。
社外取締役の選任に関しても、次の二つの案が示されています。

①監査役会設置会社(公開会社であり、かつ、大会社であるものに限る。)
のうち、有価証券報告書を提出しなければならない株式会社において、
社外取締役が存しない場合には、社外取締役を置くことが
相当でない理由を事業報告の内容とするものとする。

②東京証券取引所等の金融商品取引所の規則において、上場会社は、
取締役である独立役員を一人以上確保するよう努める旨の規律を設ける。

※独立役員とは、一般株主と利益相反が生じるおそれのない社外取締役
又は社外監査役をいいます。

このまま行くと、かなり大規模な法改正ということになりますが、どうなるのでしょうか。

大津市越市長が教育委員会制度の問題点を指摘

「越市長はこれまでの市教委の対応のまずさを改めて認めた上で、
その遠因に教育委員会制度の矛盾があると指摘。「市民に選ばれた
わけではない教育委員が教育行政を担い、市長でさえ教職員人事など
にかかわれない。民意を直接反映しない無責任な制度はいらない」と述べ、
国に制度改革を求める意向を示した。」(7/19 読売新聞)

日教組が支援している民主党の推薦で当選した市長にここまで
言わせてしまうのですから、市長と教育委員会との間で相当なやりとりが
あったのだと思われます。

ところで、教育委員会の根拠法である「地方教育行政の
組織及び運営に関する法律」を読むと、越市長がこのように
言いたくなる気持ちが良くわかります。
教育に関するほとんどの権限は、市又は県の教育委員会に属し、
市長には属しません。
市長が有しているのは、市教育委員会の委員の任免権くらいのものですが、
市長が委員を罷免できるのは、極めて限られた場合だけです。
つまり、市長は教育に関してほとんど何の権限も有しないわけです。

ところが、一般市民は、教育に関しても市長の指導力を期待しています。
何か問題があれば、市長に抗議し、要望を寄せる人が多いものと思われます。
しかし、市長にはできることがほとんどありません。
フラストレーションがたまるわけです。

もちろん、このような仕組みにされていることには理由があります。
地方政治が、教育現場に直接容喙するようなことがあれば、教育基本法の定める
教育の目的及び目標の達成が困難になりかねないからです。

ただ、今回の事件は、教育委員会に対して全面的に教育に関する権限を委ねることの
問題を明らかにしたように思われます。
政治家が教育をコントロールするのが望ましくないのであれば、
一般市民が何らかの形で直接教育に関与できる仕組みを作るべきなのかもしれません。

デリバティブ取引とレバ刺

旬刊商事法務の最新号において、志谷匡史教授がデリバティブ取引に関する
最近の裁判例を紹介しています。

志谷教授によれば、最近の裁判例も、適合性原則、説明義務の問題とした上で、
過失相殺による調整を図っている点では、従来と変わりありません。
しかし、裁判所の姿勢が、投資家の損失補填を例外的なものと捉えるのではなく、
投資家の損失を勧誘販売業者に負担させることが必要であるとするものに
変わってきている点で変化が見られるとしています。

志谷教授は、上記変化について、リスクの大きいデリバティブ取引が
一般投資家のレベルまで普及している状況下ではやむを得ないとしつつ、
投資家保護というよりも、むしろ消費者保護の色彩が強くなってきていることを
懸念しています。

消費者保護の色彩が強くなることの何が問題なのでしょうか。
消費者保護は取引の自由を奪います。
レバ刺のことを思い出してください。
食品衛生法が改正されて、牛のレバーを生食用として販売・提供することが
禁止され、焼き肉屋で牛のレバ刺を食べることができなくなってしまいました。
同じように、デリバティブ取引について消費者保護の色彩が強くなっていくと、
デリバティブ取引をしたくてもできないということになってしまいます。
そのことが問題なのです。

また、志谷教授は、次のとおり、さらなる問題提起もしています。

「2008年以降大きな問題となったサブプライム・ローンを組み込んだ
仕組み投資商品について、その商品内容の複雑性を理由に、
もはやディスクロージャーによる投資家保護策は有効に機能しないのでは
ないかという疑問が表明されるに至っている。説明を尽くそうにも、
そもそも理解し難い商品性であるというのであれば、説明義務による
保護は論じる意味がなくなってしまう。そのような商品に適合的な
投資家など存在するのか。伝統的思考が揺さぶられている。」

適合性原則、説明義務という従来の枠組みを維持した場合、
複雑な仕組み投資商品については、その販売がすべて
違法なものになってしまいかねないということでしょう。
将来、複雑な仕組み投資商品に関して、業者に厳しい判決が言い渡され、
業界に衝撃を与える可能性があるということになります。

尖閣問題は始まりにすぎない?

中国人民解放軍の高官が、沖縄の帰属問題を議論し
始めなければならないと発言したと産経新聞が報じています。
90年代中ごろにはすでに、中国社会科学院の研究者が、
沖縄は中国のものだと主張し始めていたのを記憶しております。
ですから、目新しい話ではありません。
ただ、一部の研究者の主張にすぎなかったものが、
ここにきて急速に中国国内での”常識”となりつつあるように
思われるのが気になります。


「昨年12月、北京。中国人歴史研究者らによるシンポジウムが開かれ、
「明治政府による琉球併合(1879年)も、戦後の沖縄返還(1972年)も
国際法上の根拠はない」との主張が繰り返された。主催者の一人、
徐勇・北京大教授は、日中関係史が専門で、日中歴史共同研究の中国側委員も
務めた有力研究者だ。
 沖縄の「日本帰属」を支持するこれまでの中国の公式見解を覆す主張だ。
上里賢一・琉球大名誉教授(中国文学)は「徐教授は過激な反日派ではないのに、
こうした議論を展開している。中国政府も、中国共産党も、公式見解と異なる
主張を黙認しているのが怖い」と話す。
 徐教授と知り合いの三田剛史・早稲田大特別研究員(経済思想史)によると、
徐教授のような議論は戦前に多かったが、戦後は息を潜めた。
 現代中国の建国の父、毛沢東の場合、戦前の論文「中国革命と中国共産党」で、
沖縄を「帝国主義国家」が「強奪」した「中国の多くの属国と一部の領土」の一つとした。
ところが、戦後この論文が刊行された際は、関連部分が改変され、「沖縄」の字も抜け落ちた。
冷戦下で、日本に対する攻撃的な主張はしない方が無難と判断したようだ。
 ところが、今世紀に入り、「中国は沖縄に対する権利を放棄していない」と
主張する研究論文が発表され始めた。
三田特別研究員によると、関連した論文は06年以降だけで一気に約20本も出た。」
(2010.08.18 毎日新聞)

「2月10日、中国人民解放軍海軍の張召忠少将はCCTVの「今日関注」の
インタビューで、日本がロシア、韓国、中国との間に領土問題を抱えていることについて
「平和的解決の可能性はない」と述べた。中国網日本語版(チャイナネット)が報じた。
以下はインタビューの抜粋。
  司会者:現在、日本はロシア、韓国、中国との間に、領土問題を抱えているが、
それぞれどのような共通点があるか。そしてどのような相違点があるか?
  張召忠氏:共通点として、どの国も領土争いをしているが、最終的な結論まで
至っていないことが1つ。2つ目としては、どの争いも平和的解決の可能性がゼロなことだ。
  相違点もいくつか存在する。日中の釣魚島(日本名:尖閣諸島)問題に関して、
釣魚島は中国固有の領土であり、歴史的にみても中国のものである。第二次世界大戦前に
日本が書いた地図をみても、釣魚島が日本の領土であるとの記載はない。
そして、琉球諸島も日本の領土ではないことが分かる。したがって、
釣魚島は中国の領土なのだ。」(2011.02.16 サーチナ)

「沖縄・尖閣諸島(中国名・釣魚島)の領有権問題に絡み、中国国防大学戦略研究所所長の
金一南少将が「沖縄は中国の属国だった」との“暴論”を展開していたことが13日までに
明らかになった。現役軍高官の発言だけに、波紋を呼びそうだ。
 中国国営ラジオ局、中央人民広播電台のウェブサイトに掲載されたインタビューによると、
金氏は「釣魚島問題に関しては、必ず行動を取ることが必要だ。さらに大きな見地からみれば、
今後(議論を)始めなければならないのは沖縄の帰属問題だ」と訴えた。」(2012.7.14 産経新聞)

大津いじめ自殺事件の行方

大津市の沢村憲次教育長は12日、男子生徒の自殺原因について、
「さまざまな要因が考えられる。私どもの認識そのものは変化していない」と述べ、
さらに13日、自殺した男子生徒の遺族が起こしている損害賠償請求訴訟について、
「続けたい」と述べたと報道されています。
因果関係の有無が、訴訟の結果に影響すると教育長が考えていることが窺われます。

ところで、いじめに関する近時の裁判例の多くは、教師にいじめ発生の
認識可能性があり、それにもかかわらず、しかるべきいじめ対策を
講じていない場合には、学校設置管理者に損害賠償義務を肯定しています。
ただ、自殺の予見可能性が教師にない場合には、いじめ自体に関する
損害についてのみ賠償義務を肯定し、自殺による損害についての
賠償義務は否定しているものが多いようです。
自殺の予見可能性というのは、要するに因果関係の問題ですから、
教育長の認識は間違っていないと言えそうです。

ただ、報道によれば、自殺直後の時点における聞き取り調査に対し、
皇子山中学校の教師らはいじめを知らなかったと答えていたそうなので、
本来であれば、いじめ発生の認識可能性の有無も重要な争点となるはずです。
いじめ発生の認識可能性は、次のような事情がある場合に認められることが
多いようです。

 ①教師が暴力行為等を現認していた。
 ②被害者、家族等が教師にいじめを申告していた。
 ③被害者に不審な傷跡、不自然な金銭支出、欠席等の不審な事情があった。

ですから、このあたりの事情の有無も本件では重要になります。

とはいえ、本件で、最も問題となるのは、やはり自殺の予見可能性の有無でしょう。
学説上は、悪質重大ないじめの場合には、自殺の予見可能性があると見て良く、
それに至らない程度のいじめの場合には、当事者が特に予見し得た場合でなければ
自殺の予見可能性はないとする説が有力とされています。
自殺の予見可能性を認めた裁判例として、東京高裁平成14年1月31日判決が
あります。以下、その一部を引用します。

「平成6年当時には既に,いじめに関する報道,通達等によって,いたずら,
悪ふざけと称して行われている学校内における生徒同士のやりとりを原因として
小中学生が自殺するに至った事件が続発していることが相当程度周知されて
いたのであるから,既に少なからざるトラブル,いじめを把握していた担任教諭としては,
中学生が時としていじめなどを契機として自殺等の衝動的な行動を起こすおそれがあり,
亡Kに関するトラブル,いじめが継続した場合には,亡Kの精神的,肉体的負担が
累積,増加し,亡Kに対する重大な傷害,亡Kの不登校等のほか,場合によっては
本件自殺のような重大な結果を招くおそれがあることについて予見すべきであり,
前記イの状況を把握していた本件においては,これを予見することが可能であった
というべきである。」

また、近時の裁判例として、名古屋地裁平成23年5月20日判決があります。
これについても一部を引用します。

「平成14年度当時,いじめに関する新聞やテレビの報道等によって,
学校内におけるいたずらや悪ふざけと称して行われている児童や
生徒同士のやり取りを原因として,中学生等が自死に至った事件が
続発していることが既に周知されており,中学生等がいじめを契機として
精神疾患や自死等に至るおそれがあることは,公知の事実であった
というべきであり,いわゆる学校関係者である被告らがこのような事実を
知らないはずはなく,仮に知らなかったとすれば,それ自体,
学校関係者としての責任の自覚が欠落していたことを示すものといわざるを得ない。」

「被告らは,平成14年10月以降,その各時期に本件6名が行っていた
I1に対する前記1(1)ウ(カ)認定の各行為,特に平成15年1月以降は,
I1の靴に画鋲が入れられるなど,I1に対して行われた悪質な行為を
認識していたか,少なくとも認識することが十分に可能であったし,
I1に対する本件6名の行為が継続するのを放置した場合には,
I1の精神的負担が累積,増大し,I1の心身に大きなダメージが生じるほか,
場合によっては自死という結果を招くおそれがあることを予見することも
十分可能であったというべきである。」

名古屋地裁平成23年5月20日判決におけるいじめは、「悪質」とされていますし、
上記引用部分には表れていませんが東京高裁平成14年1月31日判決の事例も
「悪質」な行為と認定されていますので、上記学説と同様の判断をしているものと
考えても良さそうです。

さて、以上をまとめると次のことが言えそうです。

暴力行為等を現認していた、あるいは被害者、家族等がいじめを申告していた等の
理由により、教師が悪質重大ないじめの発生を認識していたか、認識できた
場合であるにもかかわらず、当該教師がしかるべきいじめ対策を
講じなかった場合には、自殺による損害について学校設置管理者に
賠償責任が認められる可能性が高い。

ですから、本件では、そもそも悪質重大ないじめが存在したのか否かを
含めて、担任教師、校長等が、悪質重大ないじめの発生を認識していたか、
認識できたかどうかが、問われることになると予測されます。
その点に留意して、今後の展開を注視していきたいと思います。

大津市教育長発言集

「会見した沢村憲次教育長らによると、アンケートには約300人が回答し、
16人が「自殺の練習をさせられていた」などと記述した。ただ、いずれも
伝聞だった。記名で回答した4人にも聞き取り調査をしたが、
「信ぴょう性のある情報にたどり着けなかった」としている。」(7/4 毎日新聞)

「大津市で昨年10月、市立中学2年の男子生徒(当時13歳)が
飛び降り自殺したことを巡る全校生徒アンケートで、「自殺の
練習をさせられていた」との回答を市教委が公表していなかったことについて、
4日に記者会見した沢村憲次教育長は「事実と確認できなかったため
公表しなかった。隠したわけではない」と述べ、対応に問題はなかったとした。
そのうえで、「可能な限り、いじめの事実を調べた」として、現時点では
追加調査などはしない考えを示した。」(7/5 読売新聞)

「澤村憲次・市教育長ら市教委幹部が同日夜、市役所で緊急会見。
2回目のアンケートは、1回目で書き足りなかったことを問う内容で、
全校生徒を対象に実施。いじめについて、新しい情報などは
ほとんどなかったため、詳しい追跡調査をしていなかったとした。」(7/10 産経ニュース)

「記者会見で、沢村憲次教育長は「『葬式ごっこ』などの文言は、
最近になってこちらで気づき、学校側に再調査を指示した。
事実確認が不十分だった点もあり、批判を受けても仕方がない。
深くおわびしたい」と陳謝した。」(7/11 読売新聞)

「沢村憲次教育長は11日、「市教育委員会として因果関係は
不明と判断したが、市長の思いは受け止めた。調査委員会の結果を
真摯に受け止めたい」と話し、調査委の結果を待って対応する姿勢を
あらためて強調した。」(7/11 産経ニュース)

「大津市教育委員会の澤村教育長は、12日午前、記者会見を行い、
この中で「自殺という痛ましい事故があり、学校が調べるなかで、
いじめがいくつかあったと確認している。いじめも要因の1つになると
思っている」と述べました。
その一方で、「自殺は、一般的には、学校のほか、病気や家庭の問題など、
さまざま要因が考えられる」と述べ、いじめだけが原因かどうかは
判断できないという認識を示しました。」(7/12 NHK)

「沢村憲次市教育長はのらりくらりでこう答えた。
「A4の資料で3~4枚あったのをスーと順を追って見た程度だった。
新しい事実は発見できませんという報告だったので、
うちとしてはその通りと受け止めた。全部見れば見れたはずだったが、
私は確認しておりません。見落としていました」」(7/12 J-CAST)

東京電力の自己資本が過大に計算されている?

7月8日付けの朝日新聞が次の通り報じています。

「東京電力が家庭向け電気料金を平均10.28%値上げする際、
資本金などの「自己資本」を実際の5倍以上で計算したため、
値上げ幅が2%ほどかさ上げされていることがわかった。
これを見直せば、値上げ幅を7%台に抑えられるという。」

「東電は自己資本を2兆8千億円と仮定し、これをもとに
原価に含める「事業報酬(東電のもうけ)」を約2800億円と見積もった。
値上げ申請の場合、発電に必要な資産額の30%を自己資本として
計算するという経産省令に従った。」

どういうことなのでしょう?
法令を確かめてみました。

電気料金を変更するには、原則として、経済産業大臣の認可を
受けなければなりませんが(電気事業法第19条第1項)、
変更後の料金が、能率的な経営の下における適正な原価に
適正な利潤を加えたものでなければ、認可を受けることは
できません(同条第2項第1号)。
そのような料金の具体的算定方法を定めているのが、
一般電気事業供給約款料金算定規則です。

一般電気事業供給約款料金算定規則第2条によれば、原価に利潤を加えて得た額
(原価等)が、次の方法で計算されます。

 原価等=営業費+事業報酬-控除収益の額

事業報酬は次の方法で計算されます(同規則第4条第2項)。

 事業報酬=(特定固定資産+建設中の資産+核燃料資産+特定投資+運転資本
        +繰延償却資産)×報酬率

そして、報酬率は次の方法で計算されます(同条第4項)。

 報酬率=(自己資本報酬率×30+他人資本報酬率×70)÷100

現実の自己資本比率を用いて報酬率を計算するのではなく、
自己資本比率が30%であると仮定して計算しているわけです。
料金はこのようにして算定された原価等に基づいて決定されますから、
料金の決定に際して、自己資本比率を30%と仮定して計算したことになります。

なぜこのような規定が設けられているのでしょうか。
たぶん、資金調達の巧拙を電気料金の多寡に反映させるべきではない
ということなのだと思われます。
不当な規定だとは考えません。
しかし、あまりにも実態と乖離してしまったために、問題視されるに
至ったということなのでしょう。

99.9999%以上の確率で存在するってどういう意味?

7月5日(木)の日経新聞1面トップは、ヒッグス粒子に関するニュースでした。
ただ、文章を読んでも意味がわかりません。

「CERNによると、今年6月までの実験で、両チームともヒッグス粒子と
みられる新粒子が存在する確率が99.9999%以上になった。昨年末の
段階ではアトラスは約98.9%、CMSは約97%の確率で、「発見の可能性が
高まった」としていた。」

観測(実験)によって増える「存在する確率」って何ですか?
何か深淵な意味があるのかと思いつつ、検索してみたところ、
こういう説明を見つけました。

「今回の実験結果はまだ予備的なものだが、その確からしさのレベルは
5シグマを示している。5シグマというのは、研究チームが観測した
ヒッグス粒子とみられる信号が統計的な偶然である確率が100万分の1以下
であることを意味する。」(ナショナルジオグラフィック ニュース

また、少し前の記事ですが、このような説明も見つけました。

「「○○%の確率で発見」とか、「ヒッグス粒子が存在する/ヒッグス
粒子由来の確率が○○%」と書かれているものは、全て間違っています。
正しい説明の例としては、Caltechの大栗博司教授のブログ記事「ヒッグス粒子」が
ありました。今回の発表で分かったのは、「99.98%の確率で見つけた」という
ことではなくて、まぐれでは5000回に1回(0.02%の確率で)しか起こらない
データが出た、という事です。」(Cafe Berkeley)

なんだそういうことだったんですね。
特に2番目のブログ記事は勉強になりました。

企業再編と過払金返還債務

企業再編がなされた場合に過払金返還債務がどう扱われるかに
関する最新の判例です。

平成24年6月29日最高裁判所第二小法廷判決
【判決要旨】
貸金業者Yの完全子会社Aが、Yの子会社再編を目的とする
債権譲渡基本契約に基づき、Aの顧客Xとの間の継続的な
金銭消費貸借取引に係る債権をYに譲渡したからといって、
YがAのXに対する過払金返還債務を承継したとはいえない。

上記問題に関しては、すでに下記の二つの最高裁判例が存在しました。
②は消費者金融子会社の再編の事例に関する判決です。
ただ、②の事例では、契約切り替えの手法が用いられていました。
そこで、②の事例と同様に消費者金融子会社の再編の事例であり、
かつ、①の事例と同様に債権譲渡がなされた事案について、
最高裁はどのように判断するのかが、注目されていたようです
(判例タイムズ1357号78頁)。

本判決は、②の判決と同じく第二小法廷のものですが、
子会社再編であっても、債権譲渡の事案であれば、①と同様に
判断するとされたことになります。

             記

①平成23年3月22日最高裁判所第三小法廷判決
【判決要旨】
貸金業者が貸金債権を一括して他の貸金業者に譲渡する
旨の合意をした場合において、上記債権を譲渡した業者の有する
資産のうち何が譲渡の対象であるかは、上記合意の内容いかんにより、
それが営業譲渡の性質を有するときであっても、借主との間の
金銭消費貸借取引に係る契約上の地位が上記債権を譲り受けた業者に
当然に移転すると解することはできない。

②平成23年9月30日最高裁判所第二小法廷判決
【判決要旨】
貸金業者Yとその完全子会社である貸金業者Aの顧客Xとが、
金銭消費貸借取引に係る基本契約を締結し、この際、Xが,
Aとの継続的な金銭消費貸借取引における約定利息を前提とする
残債務相当額をYから借り入れ、これをAに弁済して
Aとの取引を終了させた場合において、次の(1)~(3)など
判示の事情の下では、XとYとは、上記基本契約の締結に当たり、
Yが、Xとの関係において、Aとの取引に係る債権を
承継するにとどまらず、債務についても全て引き受ける旨を
合意したと解するのが相当である。

(1) Yは,国内の消費者金融子会社の再編を目的として、
Aの貸金業を廃止し、これをYに移行、集約するために、
Aとの間で業務提携契約を締結し、同契約において、
Aが顧客に対して負担する過払金債務等一切の債務を
Yが併存的に引き受けることや、Aと顧客との間の
債権債務に関する紛争について、Yが、単にその申出窓口に
なるにとどまらず、その処理についても引き受けることとし、
その旨を周知することを、それぞれ定めた。
(2) Yは、上記業務提携契約を前提として、Xに対し、
上記基本契約を締結するのはYのグループ会社再編に
伴うものであることや、Aとの取引に係る紛争等の窓口が
今後Yになることなどが記載された書面を示して、
Yとの間で上記基本契約を締結することを勧誘した。
(3) Xは、Yの上記勧誘に応じ、上記書面に署名してYに差し入れた。

「小沢新党」と政党交付金

小沢氏らが「小沢新党」を結成するかもしれないという話題に関連して、
「分党」という形をとれれば、年内にも政党交付金を受け取れるが、
それには民主党代表である野田氏の了承が必要であるとの報道がなされています。
いったいどういうことなのでしょうか。
政党助成法を見てみます。

同法第23条第3項には、次のとおり記載されています。

「政党の分割が行われる場合において、その年分として当該分割により
解散する政党(以下「分割解散政党」という。)に対して交付すべき
政党交付金は、前条の規定にかかわらず、当該分割により設立される
政治団体で当該設立の日において第二条第一項第一号に該当するもの
(以下「分割政党」という。)に対して交付する。この場合において、
当該交付する額は、その年分として分割解散政党に対して交付すべき
政党交付金の額から既交付金の額を控除した残額に相当する額に
当該分割政党にその設立の日現在で所属する衆議院議員又は参議院議員の
うち当該分割解散政党に当該解散の日現在で所属していたものの数
(以下この項及び第二十五条において「所属議員数」という。)を
乗じて得た額を当該分割に係る各分割政党(次項の届出をしたものに限る。)の
所属議員数を合算した数で除して得た額とする。」

つまり、A政党がB政党とC政党に分割された場合には、A政党に交付される
予定であった、その年分の政党交付金が、B政党とC政党の所属議員数に応じて、
それぞれ分配されることになります。
それに対して、A政党から一部の議員が脱退して新たにB政党を設立する、
いわゆる分派の場合は、その年分の政党交付金は全額A政党に交付されることになります。
ですから、分割に当たるか、分派に当たるかは、「小沢新党」にとっては
重大な違いを生むわけです。

ところで、政党助成法第23条第4項、第5項を見ると、分割により
設立された政党が政党交付金の交付を受けるためには、分割解散政党における
分割に関する文書の写しを提出しなければならないとされています。
これが具体的にどのような文書かは、政党助成法施行令第3条第3項が
次のとおり定めています。

「分割政党が提出することとされている分割に関する文書の写しとは、
当該分割に係る分割解散政党を分割する旨、当該分割解散政党が
解散することとしている日、当該分割解散政党の名称及び当該分割解散政党に
所属する衆議院議員又は参議院議員の氏名並びに当該分割により
設立することとされている政治団体の名称及び当該衆議院議員又は参議院議員のうち
当該設立することとされている政治団体に所属することとしている者の氏名が
記載された文書で当該分割解散政党の代表者及び当該分割により
設立することとされている政治団体の設立の準備を主宰している者の
署名があるものの写しとする。」

「分割解散政党の代表者」とは、誰でしょうか。
翻って、政党助成法第23条第3項を見てみると、政党の分割というのは、
既存のA政党を解散して、B政党、C政党といった新たな政党を設立する
ものであることが分かります。
ですから、民主党が分割されるのであれば、「分割解散政党の代表者」は野田氏です。
政党を解散するという話ですから、当該政党の代表者の署名がなければ
ならないのは当然でしょう。
このように野田氏の署名がある文書の写しを提出しない限り、「小沢新党」が
政党交付金を受け取ることはできないわけです。
そこで、野田氏の了承がない限り、「小沢新党」が年内に政党交付金を
受け取ることはできないと報道されているのだと思われます。
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