グリー対ディー・エヌ・エー控訴審判決

釣りゲームに関し、グリーがディー・エヌ・エーを訴えた訴訟について、
控訴審判決(東京高等裁判所平成24年8月8日判決)が言い渡されました。
一審判決(東京地方裁判所平成24年2月23日判決)では、
ディー・エヌ・エーの「釣りゲータウン2」の魚の引き寄せ画面は、
グリーの「釣り★スタ」の魚の引き寄せ画面に係る著作権を
侵害したと認められていました。
グリーがディー・エヌ・エーに勝訴したと話題になっていましたので、
覚えていらっしゃる方も多いと思います。
ところが、控訴審判決では、侵害が否定され、グリーの請求は
すべて棄却されてしまいました。
判決文は67頁ありますが、結論はシンプルです。
以下、判決の要部を引用します。

「著作物の翻案とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の
本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表現に修正,増減,
変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,
これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を
直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいう。
そして,思想,感情若しくはアイデア,事実若しくは事件など
表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において
既存の著作物と同一性を有するにすぎない著作物を創作する行為は,
既存の著作物の翻案に当たらない(最高裁平成11年(受)第922号
同13年6月28日第一小法廷判決・民集55巻4号837頁参照)。」

「被告作品の魚の引き寄せ画面は,アイデアなど表現それ自体でない部分
又は表現上の創作性がない部分において原告作品の魚の引き寄せ画面と
同一性を有するにすぎないものというほかなく,これに接する者が
原告作品の魚の引き寄せ画面の表現上の本質的な特徴を直接感得することは
できないから,翻案に当たらない。」

一審判決は、次のとおり判断していましたから、まったく
逆の判断ということになります。

「被告作品の魚の引き寄せ画面は,原告作品の魚の引き寄せ
画面との同一性を維持しながら,同心円の配色や,魚影が
同心円上のどの位置にある時に魚を引き寄せやすくするかという点等に
変更を加えて,新たに被告作品の製作者の思想又は感情を創作的に
表現したものであり,これに接する者が原告作品の魚の引き寄せ画面の
表現上の本質的な特徴を直接感得することができるものと認められる。
また,これらの事実に加えて,被告作品の製作された時期は原告作品の
製作された時期の約2年後であること,被告らは被告作品を製作する際に
原告作品の存在及びその内容を知っていたこと(甲1の1,2)を考慮すると,
被告作品の魚の引き寄せ画面は,原告作品の魚の引き寄せ画面に
依拠して作成されたものといえ,原告作品の魚の引き寄せ画面を
翻案したものであると認められる。」

「被告らは,原告が魚の引き寄せ画面に関して原告作品と被告作品とで
同一性を有すると主張する部分は,いずれも,単なるアイデア
又は平凡かつありふれた表現にすぎず,創作的表現とはいえないと主張する。
しかしながら,原告作品と被告作品の魚の引き寄せ画面の共通点は,単に,
「水面上を捨象して水中のみを表示する」,「水中に三重の同心円を表示する」,
「魚の姿を魚影で表す」などといったアイデアにとどまるものではなく,
「どの程度の大きさの同心円を水中のどこに配置し」,「同心円の背景や
水中の魚の姿をどのように描き」,「魚にどのような動きをさせ」,
「同心円やその背景及び魚との関係で釣り糸を巻くタイミングを
どのように表すか」などの点において多数の選択の幅がある中で,
上記の具体的な表現を採用したものであるから,これらの共通点が
単なるアイデアにすぎないとはいえない。
また,原告作品が配信される以前にも携帯電話機用釣りゲームは
多数配信されていたが,上記共通点をすべて備えたゲームや,
原告作品の製作者の個性が強く表れている,水中に三重の同心円を
描いて魚影と同心円との位置関係によって釣り糸を巻く
タイミングを表現しているゲームは一つも存在しなかったと
認められることについては,上記認定のとおりである。
したがって,上記共通部分が平凡かつありふれたものであって
創作性を欠くともいえない。」
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ジョセフ・E・スティグリッツ「世界の99%を貧困にする経済」

現代のアメリカ社会が、不平等、不公正な社会になっていることを
徹底的に暴き出した本です。
私にとっては、以下の指摘が印象的でした。

「自由放任市場を信奉するシカゴ学派の経済学者(ミルトン・フリードマンや
ジョージ・スティグラー)は、市場はそもそも競争的であり、一見すると
反競争的な活動が実は効率性を向上させるのだと主張した。法律と経済に
かんするこれらの新説を、アメリカの国民に、とりわけアメリカの裁判官に
吹き込む大規模な“教育”プログラムは、オーリン財団などの右派団体の
資金援助もあって成功を収めた。
しかし、市場は“生まれつき”競争的であるという考え方を裁判所が
受け入れ、異論を唱える者たちにきびしい立証責任を課しはじめたころ、
皮肉にも経済学の領域では、表面上多数の企業が存在するように見える市場で、
しばしば協力が“働かなくなる”原因の解明が進んでいたのだ。たとえば、
経済学の有力な新分野であるゲーム理論は、暗黙の共謀行為が長期間に
わたって継続される仕組みを説明した。また、情報の不完全性と非対称性に
かんする理論は、情報の不完全性が競争性を害する仕組みをあきらかにし、
新たな証拠が新理論の妥当性と重要性を立証した。」

「レントシーキングの目的のひとつは、法律と規制を自分に都合よく
形作ることだ。それには法律家の助けが必要となる。アメリカ政府は
“1パーセントの1パーセントによる1パーセントのための政府”かもしれないが、
“法律家の法律家による法律家のための政府”であることは、もっと確信を込めて
言える。歴代大統領44人のうち、26人は法律家としての経歴を持っており、
現在、国会議員の36%は法曹界の出身者だ。彼らが法律家としての金銭的
利益に執着していないとしても、“認識を操作されている”可能性は否定できない。」

横浜地方裁判所平成24年7月17日判決

武富士から金を借りたことのある人たちが、同社の元社長に対し、損害賠償を求めた
訴訟の話題です。

いわゆる消費者金融に対する過払金返還請求訴訟がここ10年ほど
多発しています。
ただ、武富士については、同社が倒産してしまったために
過払金の一部しか回収できなくなってしまいました。
その一方で、武富士の元経営者一族にはかなりの財産が残っています。
その財産から債権を回収する試みの一つとして、元借り手の一部が
損害賠償請求訴訟を横浜地裁に提起しました。
一般的に元経営者の責任を問うことは、そう簡単なことではありません。
ところが、横浜地裁は請求の一部を認める判決を平成24年7月17日に
言い渡しました。
横浜地裁がどのような理屈で元社長の責任を認めたのか、
不思議に思っていたところ、裁判所ウェブサイトに判決文が
アップロードされたので、さっそく読んでみました。

判決を読んでみると、最高裁平成21年9月4日判決(「平成21年判決」)
によって定立された規範をあてはめたという構造になっているようです。

平成21年判決の要部を以下に引用します。

「一般に、貸金業者が、借主に対し貸金の支払を請求し、
借主から弁済を受ける行為それ自体は、当該貸金債権が存在しないと
事後的に判断されたことや、長期間にわたり制限超過部分を含む
弁済を受けたことにより結果的に過払金が多額となったことのみをもって
直ちに不法行為を構成するということはできず、これが不法行為を
構成するのは、上記請求ないし受領が暴行、脅迫等を伴うものであったり、
貸金業者が当該貸金債権が事実的、法律的根拠を欠くものであることを
知りながら、又は通常の貸金業者であれば容易にそのことを知り得たのに、
あえてその請求をした
りしたなど、その行為の態様が社会通念に
照らして著しく相当性を欠く場合に限られるものと解される。
この理は、当該貸金業者が過払金の受領につき、民法704条所定の
悪意の受益者であると推定される場合においても異なることはない。」

読んでわかるとおり、不法行為が認められる場合は、かなり制限的に
考えられています。そして、平成21年判決の結論は不法行為の成立を
否定するものとなっています。しかし、横浜地裁は、平成21年判決は
みなし弁済に関する最高裁平成18年1月13日判決(「平成18年判決」)が
出る前の貸金の請求に関する事案に対するものであり、本件とは事案を異に
するから、平成21年判決によって、本件においても直ちに不法行為が
成立しないということはできないとします。

そして、「武富士の有価証券報告書の記載からすると、武富士は、
平成18年判決により、多数存在する顧客の取引のほぼすべてについて、
みなし弁済が成立する余地がほぼなくなったことを十分に認識していた」
と認定した上で、横浜地裁は次のとおり判断しています。

①被告は、遅くとも平成18年6月30日の時点では、武富士の
多数の顧客に対する貸金の残高が約定利率による残高とは大きく
異なっている可能性が高いことを十分に認識していた。
②そうすると、武富士の代表取締役であった被告においては、
顧客に対する貸金の残高がいくらであるかどうかについて
確認することが求められていたといえる。同残高は、引直計算を
すれば判明する。
③弁済充当に関する平成19年6月7日の最高裁判決
(「平成19年判決」)以降は、引直計算をすることは十分可能であり、
4カ月あれば引直計算を行うことができた。
④これらのことからすると、武富士及び被告は、平成19年6月7日の
4カ月後である平成19年10月7日の時点以降は、引直計算をして、
貸金債権の存否を確認することが十分可能であり、それをすべき
であったにもかかわらず、それをせずに、貸金の請求をし、弁済を
受けていたから、その時点で貸金債権が存在しない顧客については、
通常の貸金業者であれば貸金債権が事実的、法律的根拠を欠くもの
であることを容易に知り得たにもかかわらず、あえて顧客に対して
貸金の返還を請求し、弁済を受領し
ていたと認められる。
⑤したがって、被告において、武富士が平成19年10月7日以降に
貸金債権が存在しない顧客に対して貸金の返還を請求し弁済を受領した行為は、
不法行為を構成すると認められる。

太字部分に着目していただければ、平成21年判決の規範を
あてはめた上で、同判決とは異なる結論を導き出していることが
お分かりいただけると思います。

なお、当然のことながら、被告である元社長側は、判決を不服として、
控訴を提起しています。
東京高裁はどのように判断するのでしょうか。

カロリー・ゼロは肥満のもと?

日経新聞に気になる記事が載っていました。

ゼロ・カロリー飲料を好む人は、まったく飲まない人に比べて、
ウエストのサイズの増加率が70%以上も上回り、
1日2本以上飲む人は5倍以上になったという調査結果を
テキサス大学が発表しているそうです。

これだけですと、記事にもあるように、もともと食べ過ぎの
人が人工甘味料入りの清涼飲料を多く飲んでいるだけとも思えます。

しかし、別の大学が行ったラット(ネズミ)実験では、
天然の砂糖を混ぜたヨーグルトを与えたラットよりも、
人工甘味料を混ぜたヨーグルトを与えたラットの方が太った
という結果が出ているそうです。
しかも人工甘味料を与えるのをやめた後も体重が増え続けたと
されています。

暑くなってから、毎日のようにコカ・コーラ ゼロを
飲んでいましたが、飲むのはやめた方が良さそうです。。。。

「会社法制の見直しに関する要綱案」

法務省のウェブサイトによると、平成24年8月1日に開催された
法制審議会会社法部会第24回会議において、「会社法制の
見直しに関する要綱案」がとりまとめられました。
なお、社外取締役選任義務付けに関しては、次の内容の
附帯決議がされたそうです。

1 社外取締役に関する規律については、これまでの議論
  及び社外取締役の選任に係る現状等に照らし、
  現時点における対応として、本要綱案に定めるもののほか、
  金融商品取引所の規則において、上場会社は取締役である
  独立役員を一人以上確保するよう努める旨の規律を設ける必要がある。
2 1の規律の円滑かつ迅速な制定のための金融商品取引所での
  手続において、関係各界の真摯な協力がされることを要望する。

平成21年6月17日に企業統治研究会が発表した報告書では、
下記の方針が示されていました。

「本企業統治研究会としては、次のいずれかの対応を選択することを
求めることとすることと結論する。
① 社外取締役を設置し、企業統治体制を整備、実行することについて、開示する
(社外取締役の役割、機能の開示等)。
② ①を選択しない場合、当該企業独自の方法で、企業統治体制を整備、実行する
ことについて、開示する。」

「枠組みを定める手段の選択についても、本企業統治研究会として審議を行ったが、
我が国の上場企業が満たすべき枠組みの内容として、上記のとおり、
一定の範囲で、企業実態に応じた対応が必要との結論に至ったため、
今般は、法改正を行わない対応を採用することとし、金融商品取引所による
対応に委ねることが現実的と本企業統治研究会としては、結論する。」

この時の議論とはかなり違った結論となっています。
経済界の反対も強いようですので、これからまだまだ議論がありそうです。


追記

東京証券取引所の斉藤社長が、以下の談話を発表しており、
上記附帯決議に沿った金融商品取引所規則の改正がなされる
ことになりそうです。

「当取引所は、投資家が安心して投資できる環境を提供するために、
独立した社外取締役がどの上場会社にも必須であることを、
要綱案の審議において一貫して主張してきた。社外取締役を
設置する上場会社は既に過半数を超え、ここ1-2年は特に
急増しつつあるが、今回の要綱案により、その流れはもはや
確実なものになったと思われる。

要綱案には、「金融商品取引所の規則において、上場会社は
取締役である独立役員を一人以上確保するよう努める旨の
規律を設ける必要がある」との附帯決議が付されているが、
当取引所としては、要綱案の確定を待って、速やかに上場規則の
見直しに向けた手続きを進めるとともに、上場会社に対しては、
新たに導入される「監査監督委員会設置会社」への移行の
検討を含め、独立した社外取締役の確保に努めるよう、
この機会にあらためて強く要請することとした。」

会社法による社外取締役選任の義務付けは見送られ、
金融商品取引所規則において努力義務を課すに
とどまることになったわけですが、東京証券取引所としては、
社外取締役の選任が原則となるような実質的市場ルールの形成を
目指しているようですね。

ネズミ講関連の裁判例

ネズミ講というのは、いつかは破綻します。
ネズミ講運営会社が破綻すると、参加した人のほとんどは損をします。
ただ、初期の段階で加入した人たちは違います。
破綻した頃には、すでに出資金を上回る配当金を得ていることが
あるからです。
しかも、ネズミ講の主催者が刑事責任までも問われるのに対して、
加入した人たちが刑事責任を問われることはまずありません。
ですから、悪賢い人たちは、どこかのおっちょこちょいが、ネズミ講を
始めるのを待っていると言われています。
誰かが、ネズミ講を始めたら、すぐにそれに乗っかって、金を儲ける。
そして、責任を問われる段階になったら、すべての責任を主催者に
押し付けて、自分は逃げるわけです。

そんなことは許せないということで、被害者救済のために、
破綻した運営会社の管財人が、そういう儲けた人から
金を取り戻す動きが広がってきています。
東京高裁平成24年5月31日判決は、こういう事件に
かかわる判決です。

原告である破産管財人は、次のとおり主張し、不当利得の
返還を求めました。

①破産会社の事業は、無限連鎖講防止法に違反する。
そして、被告が当該事業に加入した契約は、公序良俗に
反し無効である。
②当該配当金の交付が不法原因給付に当るか否かは
問題となりえるが、破産管財人は破産債権者全体の
利益のために管理処分権を行使する独立の法主体であるから、
民法708条は適用されない。

原判決は、上記①については原告の主張を認めたものの、
上記②については、概ね次のとおり述べて、これを否定し、
原告の請求を棄却したようです。

・原告は、破産会社が破産開始決定時に有していた
被告に対する不当利得返還請求権を破産会社に代わって
行使していると認められる。
・債権者代位権に基づく不当利得返還請求の場合にも、
不法原因給付に基づいて返還請求権が否定されるとするのが
判例である。
・とすれば、破産管財人が総債権者のために債権を行使する
場合であっても、元々不法原因給付に当る場合には、
不当利得返還請求は、民法708条により許されないと解するのが
相当である。

これに対して、上記控訴審判決は次のとおり述べて、原判決を
取り消して、破産管財人の請求を認めました。

「破産会社は自ら上記の公序良俗に違反する事業を企画し、
実行したものであるから、破産会社自身が被控訴人に対し、
給付に係る利益を不当利得として返還請求することは、
不法原因給付として許されない。しかし、破産管財人は、
破産法に基づき、裁判所の監督の下に、総債権者に公平な
満足を得させることを目的として、固有の権限をもって
管財業務を遂行する独立の主体であり、破産管財人による
権利行使は、破産者の権利承継人又は代理人としての
立場で破産者の権利を行使するものではなく、また、
破産者に代位して破産者の権利を行使するものでもないから、
破産管財人による破産者の不当利得返還請求権の行使は、
当該不当利得が不法原因給付であるとする不当利得者の
抗弁によって妨げられるものではないというべきである。
したがって、破産会社の破産管財人である控訴人は、
不当利得者である被控訴人に対し、上記不当利得返還
請求権を行使することができる。」
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Author:大久保宏昭
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