株主総会における議案(議題)の撤回

株主総会の前日になって、富士フイルムの取締役会が、
買収防衛策に関する議案を撤回する旨決議しました。
買収防衛策の更新に反対する株主が多く、可決の見通しが
立たなかったようです。

通常は、票読みは株主総会の招集通知発送前には
終わっています。
株主の反対が多くなりそうな議案については、
まず票読みをし、必要であれば機関投資家を説得して、
可決に必要な票数を集めてから株主総会の議案とすることを
決定するわけです。
ですから、今回のように株主総会の前日に撤回することは
異例なことです。
同社は、事前の票読みに失敗したか、必要な票数が
集まっていないことを知りつつ、招集通知発送後に
大株主を説得し、翻意させるつもりで、その説得に
失敗したのだと思われます。
外国人株主と国内の機関投資家の株式保有割合が高かったことが、
このような結果をもたらしたのでしょう。
外国人株主の場合には、本当の株主が誰であるかを
調査すること自体かなり困難ですし、調査できたとしても、
説得作業も難航します。
また、国内の機関投資家を説得するのもかなり困難です。
同社の本年3月時点における、外国人株主の保有割合は
38.0%、金融機関の保有割合は34.7%と
報じられていますから、担当者の苦労は大変なものだったと想像します。

ところで、今回のように招集通知発送後に株主総会の議案または
議題を撤回するには、どのようにしたら良いのでしょうか。
この点、概ね次の3つの説があるようです。

①議題決定権そのものが取締役会に属するので、
取締役会決議で足り、株主総会における決議は不要である。
②取締役会は議題決定権を有するが、一方で株主も議題提案権を
有するので、株主総会において出席株主の賛同を得て撤回するのが良い。
③取締役会決議だけでは足りず、株主総会の同意も必要である。

富士フイルムがこのうちどの説を採用したのかは、分かりません。
ただ、いずれにしろ、議長が撤回を宣し、採決を行わなければ、
当該議案または議題に関する決議は何ら存在しないことになります。
そこで、株主総会決議取消訴訟を提起することはできず、
当該撤回の効力そのものを争う方法はないということになりそうです。
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上場廃止基準の改正

東京証券取引所が、有価証券報告書の虚偽記載による
上場廃止の基準を改正するそうです(平成25年6月26日付
日本経済新聞)。

現在の東京証券取引所有価証券上場規程601条1項11号aは、
「上場会社が有価証券報告書等に虚偽記載を行い、かつ、
その影響が重大であると当取引所が認める場合」に
上場を廃止するとしています。

どのような場合に、「影響が重大である」と東京証券取引所が
認めるかどうかは明示されていません。
そのため、裁量の余地が大きく、不透明性が批判されてきました。
たとえば、オリンパスにつき、上場廃止の可能性が浮上した際、
金融分野で影響力を持つある議員が、東京証券取引所や
金融庁・証券等監視委員会の幹部に連絡を取ったと報道された
こともあります。
また、予測性に乏しく、そのことが上場会社の虚偽記載が発覚する度に、
株価が乱高下する原因にもなっていました。

この問題点を解消するべく、東京証券取引所は、今回、
上場前から債務超過の状態にあったこと隠して上場した場合、
売上の大半が架空で投資家の判断を大きく誤らせる場合など、
具体的な事例を明示し、これらに当る場合にはただちに上場廃止とするよう
上場廃止基準を改正するそうです。

新基準がどのようなものとなるのか、注目したいと思います。

保証に関する民法改正案が参議院で可決される

平成25年6月12日に以下の内容の法案が、参議院本会議において、
賛成116票、反対97票で可決されました。

【議案要旨】
本法律案は、事業者の貸金等債務を主たる債務とする保証契約による
過大な保証債務の負担により、保証人の生活の破綻等を招く事例が
多く生じていることに鑑み、保証人が金銭の貸付け等を業として行う者との間で
締結する保証契約のうち、主たる債務者が事業のために負担する
貸金等債務を主たる債務とする保証契約等は、保証人が法人又は主たる
債務者である法人の代表者である場合を除き、その効力を生じないこととしようと
するものである。

ただ、政党別にみますと、以下のとおり自由民主党が反対しておりますので、
本法案が衆議院で可決される可能性はほとんどなさそうです。

民主党・新緑風会 賛成77票反対0票
自由民主党 賛成1票反対74票

ネット上の匿名性

復興庁の幹部職員が、twitterにおいて暴言を吐いていたとして、
被災者支援の担当を外されたと報道されています。

実名ではなくペンネームを用いて投稿していたようですが、自分の足跡を
日常的に残すような投稿をしておいて、身元がバレないと思っていた
(そう思ってなければ、あそこまで書けませんよね?)ことに驚きました。

誰でも情報を閲覧することができ、記録がいつまでも残り、情報を統合することが
容易なネット社会では、真の意味での匿名性を確保することはかなり難しいことです。
ペンネームを用いる場合であっても、実名を用いた場合と同様の心構えをもって
投稿しないと、こういうことになるという教訓になる事例ですね。

金融商品取引法等の一部を改正する法律案

平成25年5月28日に衆議院本会議で可決されていた「金融商品取引法等の
一部を改正する法律案」が、同年6月12日に参議院本会議において可決され、
法律として成立いたしました。

議案情報は以下のリンク先を参照してください。
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/183/meisai/m18303183059.htm

正当な理由なき就労拒否と出勤率

労働者が使用者の正当な理由のない就労拒否のために
就労することができなかった日を、労働基準法39条2項及び
2項における出勤率の算定において、どのように扱うべきかに
関して、最高裁判所平成25年6月6日判決は次のとおり
判断しました。

「法39条1項及び2項における前年度の全労働日に係る出勤率が8割以上で
あることという年次有給休暇権の成立要件は、法の制定時の状況等を踏まえ、
労働者の責めに帰すべき事由による欠勤率が特に高い者をその対象から
除外する趣旨で定められたものと解される。
このような同条1項及び2項の規定の趣旨に照らすと、前年度の総暦日の中で、
就業規則や労働協約等に定められた休日以外の不就労日のうち、
労働者の責めに帰すべき事由によるとはいえないものは、不可抗力や
使用者側に起因する経営、管理上の障害による休業日等のように当事者間の衡平等の
観点から出勤日数に算入するのが相当でなく全労働日から除かれるべきものは別として、
上記出勤率の算定に当たっては,出勤日数に算入すべきものとして全労働日
に含まれるものと解するのが相当である。
無効な解雇の場合のように労働者が使用者から正当な理由なく就労を拒まれたために
就労することができなかった日は、労働者の責めに帰すべき事由によるとはいえない
不就労日であり、このような日は使用者の責めに帰すべき事由による不就労日であっても
当事者間の衡平等の観点から出勤日数に算入するのが相当でなく全労働日から
除かれるべきものとはいえないから、法39条1項及び2項における出勤率の
算定に当たっては、出勤日数に算入すべきものとして全労働日に含まれるもの
というべきである。」

一部請求訴訟と消滅時効中断の範囲

債権の一部についてのみ判決を求める旨明示した訴えを提起した場合に
消滅時効中断の範囲はどうなるのかという問題に関して、次の判例が
存在しました。

「債権の一部についてのみ判決を求める旨判示した訴えの
提起があった場合、訴え提起による消滅時効中断の効力は、
その一部の範囲においてのみ生じ、その後、時効完成前、残部につき
請求を拡張すれば、残部についての時効は、拡張の書面を
裁判所に提出したとき中断するものと解すべきである。」(最判昭和34・2・20)

これに対して、一部請求の訴え提起の場合であっても、全額につき
消滅時効の中断の効力が生じると考えるべきとの批判が従来より存在しましたが、
最高裁平成25年6月6日判決は、この問題につき、次のとおり、判断しました。

【裁判要旨】
1 明示的一部請求の訴えの提起は、債権の一部消滅の抗弁に理由があると
判断されたため債権の総額が認定されたとしても、残部について裁判上の
請求に準ずるものとして消滅時効の中断の効力を生ずるものではない。
2 明示的一部請求の訴えの提起は、残部につき権利行使の意思が継続的に
表示されているとはいえない特段の事情のない限り、残部について裁判上の
催告として消滅時効の中断の効力を生ずる。
3 催告から6箇月以内に再び催告をしても、第1の催告から6箇月以内に
民法153条所定の措置を講じなかった以上は、消滅時効が完成し、
この理は、第2の催告が明示的一部請求の訴えの提起による裁判上の
催告であっても異ならない。

国税庁の脅し文句

国税庁が、「タックスヘイブンに所在する事業体に関する情報の入手について」と題する文書を公表しています。

国税庁は、平成25年5月、オーストラリア国税庁から、同庁が入手したオフショア(いわゆるタックスヘイブン国・地域等)に所在する事業体(法人・信託等)に関する大量の情報のうち、日本の納税者に関連すると見込まれる情報の提供を受けており、今後、国際的な課税逃れや、来年(平成26年)から提出が必要となる国外財産調書の提出義務者等の把握の端緒となるものと見込んでいるとのことです。

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