商船三井船舶差し押さえ問題

中国の裁判所が商船三井の船舶を差し押さえた事件について、
当初は、中国が政治的意図から日中共同声明を無視して
横暴な行為に及んだかのような論調をよく見かけました。
しかし、事情が明らかになるにつれ、問題の様相がかなり
変わってきたように思います。

広い意味での条約と考えられる日中共同声明については、
日本経済新聞が次のとおり、報じています。

「日本政府が検討した1つ目の論点は、中国政府が「日本に
対する戦争賠償請求を放棄する」と宣言した72年の日中共同声明に
違反するのかどうか。外務省の見解は、違反とははっきり言えない
「グレー」だった。 日本企業による強制連行で中国人らが訴えている
損害賠償訴訟は37年に日中戦争が始まって以降の出来事で、
日本政府は「賠償請求は日中共同声明で放棄された」との立場。
だが商船三井の前身企業が船舶を借りる契約を結んだのは36年。
明確に声明に違反すると主張しにくい部分がある。」(2014年
4月30日付日本経済新聞14版2頁)

また、時効の問題については、次のとおり報じています。

「論点の2つ目は、同様の事件が今後も相次ぐかどうか。
中国は87年に時効制度を国内に通知し、古い案件を提訴する期限を
88年末とした。今回の訴訟は88年に賠償請求が起こされた。」
(同上)

上記報道が事実であれば、2010年に判決が確定しているらしいので、
商船三井が賠償金を支払わない以上、強制執行がなされるのは
当然のようにも思えます。
少なくとも日中間の問題を何でも政治問題として捉えるのは
間違っていると言えそうです。
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国境なき世界における課税問題

日本経済新聞が、「Taxウオーズ」と題するコラムを連載しています。
今日の記事は、消費税がテーマです。

ところで、私が今使っているロードバイク(自転車)はイギリスから
輸入したイタリア製のものです。
物流・商流に関する国境の壁が極めて低くなった今日では、商品を
個人輸入することが簡単にできます。
といいますか、海外から輸入しているという意識すらほとんどなく
買えるのが現実です。
http://www.wiggle.jp/
上記リンク先を見ていただければ分かるとおり、日本語で表記された
ウェブサイトが存在し、クレジットカードを使って購入することが
できるからです。
しかも、発注後大体1週間以内に届きますし、ネットを通して
輸送状況を逐一確認することもできるので不安もありません。

このように自転車ですら簡単に輸入できるのですから、電子書籍であれば、
Amazonを通して、海外から買っているという意識がまったくないまま
購入することができるでしょう。
一方で、現行法上は、海外からネット配信する電子書籍には消費税が
かからないことになっています。
この状態を放置しておけば、国内産業の空洞化が進む一方ということに
なってしまう虞があります。
そこで、政府は15年度から海外企業に対しても課税する方針と
日経新聞は伝えていますが、どうやって執行するのかという難しい問題が
あるようです。

宮台真司「私たちはどこから来て、どこへ行くのか」

著者によれば、この日本において、「誰が誰のために何をしてきたのか」、
「誰が誰のために何をしていると人は期待してきたのか」の歴史が
叙述されているのが本書ということになります。
ただ、それに止まらない魅力が本書にはあります。
社会学という学問の性質によるものなのでしょうか。すべてを相対化し、
前提を疑う眼差しがもたらす知見が刺激的です。
印象的だった箇所を二箇所引用します。

人を殺してはいけないかどうかも先験的ではありません。
現に人を殺してはいけないというルールを持つ社会はありません。
どんな社会も、戦争や処刑において「人を殺せ」と命令を発します。
命令に背くと、逆に処罰されます。
その意味で、「人を殺してはいけない」というルールを持つ社会はないと言えるのです。
代わりにあるのは、「仲間を殺すな」というルールと「仲間のために人を殺せ」
というルールの組合せです。
この二つはどの社会にも存在します。
死刑廃止は、ここ40年の動きに過ぎないので、人類史的には無視できます。
(本書143~144頁)

戦後日本人は「みんなで決めたことは正しい」という信念を
刷り込まれました。
そうではない。
「みんなで決めたことは間違っているに決まってる」にもかかわらず
「仕方なくみんなの決定に従う」のです。(本書186頁)

私たちはどこから来て、どこへ行くのか私たちはどこから来て、どこへ行くのか
(2014/02/20)
宮台 真司

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DNA鑑定を用いて嫡出推定を排除できるか

母の婚姻中に懐胎された子については、母の夫が父と推定されます(民法772条1項)。
この推定によって成立した法的父子関係を否定するには、嫡出否認(同法774条以下)
によらなければならないのが原則です。
ただ、嫡出否認には厳しい制約があります。
たとえば、嫡出否認は訴えによってなされなければならないのですが、この訴えは
父と推定される夫のみが提起できます(同法774条。ただし、人訴41条1項の例外あり)。

そこで、嫡出否認の制度が利用できないケースを救済するために、文言上は民法772条が
適用されるはずの子について、同条の推定を受けない嫡出子(「推定の及ばない子」)
という類型が判例上認められています。

ただ、どのような子が「推定の及ばない子」に当たるのかについては、
いくつか説が存在します。
夫が外国にいた、刑務所にいたといった、外観上、夫による懐胎が
不可能であることが明らかな場合のみ「推定のおよばない子」となるとする説は、
外観説と呼ばれていますが、これが判例・通説であると言われています。
また、DNA鑑定等の科学的な方法によって、血縁上の親子関係がないことが明確な場合に
772条を適用しないとする血縁説もあり、これは有力な反対説のうちの一つです。

ところで、新聞報道によれば、妻側が、DNA鑑定に基づいて、夫と子との間に
親子関係がないことの確認を求めていたケースについて、最高裁において弁論が
開かれることになりました。
妻側が親子関係がないことの確認を求めるという嫡出否認の制度が利用できないケースについて、
地裁、高裁は血縁説に基づいて妻側の請求を認めてきたのが、最高裁は従来の判例の立場から
その判断を見直す方向で動いているということなのだと思われます。


(嫡出の推定)
第七百七十二条  妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。

会社法改正

平成26年4月25日、企業統治の強化策を盛り込んだ会社法改正案が
衆議院において可決されました。
当該法律案を下記アドレスにおいて閲覧することができます。

http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/g18505022.htm

参院選挙改革

参院選挙制度協議会の脇雅史座長が、座長案を示しました。
人口の少ない県を隣とあわせて一つの選挙区にすることによって
一票の格差を1.83倍以下とする内容のものです。

最高裁大法廷平成24年10月17日判決は、下記のとおり述べていましたが、
その判断をストレートに反映させた内容と言えそうです。

「参議院は衆議院とともに国権の最高機関として適切に民意を国政に
反映する責務を負っていることは明らかであり、参議院議員の選挙であること自体から、
直ちに投票価値の平等の要請が後退してよいと解すべき理由は見いだし難い。」
「(都道府県を)参議院議員の選挙区の単位としなければならないという憲法上の
要請はなく、むしろ、都道府県を選挙区の単位として固定する結果、
その間の人口較差に起因して投票価値の大きな不平等状態が長期にわたって
継続していると認められる状況の下では、上記の仕組み自体を見直すことが
必要になるものといわなければならない。」

検察審査会の議決に基づく強制起訴

2001年に発生した明石市の歩道橋事故に関して、明石署元副署長が
検察審査会の議決に基づいて強制起訴された件につき、控訴審判決が
言い渡されました。
公訴時効が成立しているとして「免訴」とした一審の判断を支持し、
控訴を棄却するという内容のものです。

検査官役である指定弁護士は、当該元副署長は当時公判中だった別の
元警察官と共犯関係にあり、刑事訴訟法254条2項が適用されるので、
本件につき公訴時効は成立していないとして、起訴したようです。
それ自体は、必ずしも不合理な判断ではないと考えます。
ただ、日経新聞の報道によれば、検察審査会の議決に基づく強制起訴は、
2009年の制度導入以降8事件あるが、これまでに有罪判決が出たのは
1事件のみとのことですので、制度に対する批判の声はより一層高まりそうです。



刑事訴訟法254条2項「共犯の一人に対してした公訴の提起による時効の停止は、
他の共犯に対してその効力を有する。この場合において、停止した時効は、
当該事件についてした裁判が確定した時からその進行を始める。」

「対日直接投資に関する有識者懇談会」報告書

対日直接投資促進に向けた課題を「対日直接投資に関する有識者懇談会」が
整理したとする報告書が公表されました。

http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/investment/report.pdf

ただ、その内容は、報告書の冒頭において「外国企業の意見をストレートに整理し、
とりまとめたもの」と述べられているとおり、外国企業を対象としたアンケート調査の
結果報告にすぎません。

「外国企業等からの具体的政策提言」というタイトルで、外国企業の意見を紹介するのは
いいとおもいます。
しかし、その内容の当否を主体的に検討することなく、「本報告書で整理した提言の
多くが早期に実現していくことを強く要望する。」、「ここで整理した政策課題に関し、
今後、関係省庁や政府の関係会議において、前向きに検討されていくことが望まれる。」
とするのは、「有識者懇談会」としてはいかがなものかと思わざるを得ません。
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