A・V・バナジー&E・デュフロ「貧乏人の経済学」

経済政策に関する実験は事実上不可能と言われていました。
実験が不可能ということは、検証が困難ということです。
貧困対策の政策も検証が十分なされないまま行われ、
その結果、三つのI、無知ignorance、イデオロギーideology、
惰性inertiaによって、失敗し続けてきたと著者たちは述べています。

著者たちは、実験を行って検証すべきだと主張しています。
経済政策についても実験は可能だったようです。
著者たちが実際に行っている実験は、ランダム化比較試験と呼ばれるものです。
似たような複数の村をランダムに選び、ある村では特定の政策を実施し、
他の村では実施しないでおいて、有意な差が生まれるかどうか比較するという
実験です。

そういった実験の結果等を踏まえつつ、著者たちは、たとえば次のような事実を
発見したとしています。

①地方に住む極貧層は、全消費額のうちの36%から79%しか食べ物に使わない。
インドのマハラシュトラ州の最貧層でも、出費総額が1%増加しても食費総額は
0.67%しか増加しなかった。
しかも、食費の増加のうちの半分しかカロリー増加には使われない。
残りは、よりおいしいものを買うことに使われた。

②家族の人数が多いことによる子供の教育への不利な影響はない。

③マイクロファイナンスによる融資が行われるようになった地域では、
起業の確率が高くなり、大型耐久財を買う人も多くなった。
一方で、劇的な人生の変化は特に見られず、教育や保険への支出は
増えないし、子供が私立学校に通う比率などにも変化は生じなかった。

これら意外とも思える事実について、著者たちは、行動経済学の手法等も
利用しつつ、なぜそうなるのか説明してくれます。
説明を読む前は、不思議と思えたのが、説明を読んだ後だと当たり前の
こととしか思えません。
「目から鱗が落ちた。」と言いたくなる本です。

印象的だった箇所を引用します。

「モロッコの辺鄙な村で出会ったオウカ・ムバルブクに、もっとお金があったら
何をするか尋ねました。答えは、もっと食べ物を買うというものでした。
ではさらにお金があったら何をするか尋ねました。彼はもっと美味しいものを
買うと答えました。わたしたちは彼とその一家をひどく気の毒に思い始めた
のですが、そのとき座っていた部屋にテレビ、パラボラアンテナ、そして
DVDプレーヤーがあることに気づいたのです。もし家族の食べ物が足りないと
感じているなら、なぜそういうものを買ったのか尋ねてみました。
彼は笑ってこう言うのです。「いや、だってテレビは食べ物より大事でしょ!」」

その先は、買って読んでみて下さい。


貧乏人の経済学 - もういちど貧困問題を根っこから考える
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