小沢一郎氏事件控訴の理由

小沢氏が被告人となっている事件ですが、なぜ控訴されたのでしょうか。
その理由を制度の面から確認してみます。

まず、検察審査会の目的から確認します。
検察審査会法1条は次のとおり、述べています。
「公訴権の実行に関し民意を反映させてその適正を図るため、
政令で定める地方裁判所及び地方裁判所支部の所在地に
検察審査会を置く。」
検察審査会は、公訴権の実行に関し民意を反映させて
その適正を図ることを目的としているわけです。

次に小沢氏が起訴されたときの経緯ですが、
検察審査会が起訴議決をし、その議決書の謄本の
送付を受けた裁判所が、控訴の提起及びその維持に
当る弁護士を指定し、その指定された弁護士(「指定弁護士」)が
公訴を提起しました。
その際、指定弁護士には起訴するか否かの裁量権は
まったくありませんでした。
起訴するか否かについて、現行法は、専門家の判断よりも
検察審査会の議決を優先することにしているわけです。
検察審査会というのは、くじで選ばれた検察審査員によって
構成される合議体ですから、その限度で民意を専門家の判断に
優先させていることになります。

ただ、民意を優先させるといっても、検察審査会法が、
「公訴権の実行に関し民意を反映させてその適正を図るため」と
公訴権の適正化を目的としていることを忘れてはなりません。
公訴権の行使が適正であるためには、全国的になるべく統一的に、
かつ、公平に行使される必要があります。ですから、起訴すべきか
否かの基準は、検察官が処分を決定する場合も、検察審査会が
議決をする場合も、基本的に同一であるべきです。
検察審査会は、そのような基準に基づいて、起訴議決をするか
否かを判断しなければならないのであって、そのために審査補助員という
制度も設けられているのだと考えられます。

ところで、前述のとおり、起訴の段階では、指定弁護士に
起訴すべきか否かの悩みはありません。
制度上、裁量権が一切与えられていないからです。
ところが、控訴については、特段の制度が設けられておらず、
控訴の判断は指定弁護士に委ねられているようです。
そうなると、指定弁護士としては、二つの考え方の間を
揺れ動くことになると思います。
一つは、検察審査会の議決を尊重して、原則として、
控訴するべきという考えです。
専門家の判断よりも民意を尊重すべきという現行の
検察審査会法が採用していると思われる考え方から
このような考えがでてきます。
もう一つは、検察官が控訴するか否かを判断するのと
同様の基準で控訴を判断するという考えです。
これも現行法が、公訴権の実行の適正を図ることを
目的としていることから出てくる考えです。

このうちどちらの考え方が正しいかですが、私は
後者の考え方の方が正しいと思います。
なぜならば、検察審査会の議決は、裁判開始前のものに
すぎず、その後の状況を踏まえたものではないので、
これに拘束力を認めるべきではないし、検察審査会法の
究極的な目的は民意の反映ではなく、公訴権の適正化に
あると考えるからです。

ただ、指定弁護士の立場に立つと、そうは言っても、
検察審査会において示された「民意」の重みを無視できないと
思います。
その結果が、今回の控訴なのではないでしょうか。
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