ファーストサーバ大規模障害事故

クラウドに預けていたデータが消失してしまったとして騒ぎになっている
ファーストサーバの事故の話題です。

ファーストサーバの説明によれば、データ消失に至った主な原因は以下の3点です。
①更新プログラムの不具合
②運用手順の不備
③バックアップ仕様の不備

ところで、同社は、損害賠償につき、「サービス利用契約約款に基づいて、
お客様にサービスの対価としてお支払いただいた総額を限度額として、
損害賠償させていただきます。」と述べています。

同社のサービス利用契約約款を見ると、次の条項が見つかります。
第36条「本サービスの利用に関し当社が損害賠償義務を負う場合、
契約者が当社に本サービスの対価として支払った総額を限度額として
賠償責任を負うものとします。」
よくあるタイプの責任制限条項ですね。
(なお、同約款には、第16条、第35条等他にも責任を
軽減乃至制限する条項が存在します。)

約款に明記されているのだから、ユーザーは支払ったサービス料金の総額を超えた
損害の賠償を求めることはできないのでしょうか。
そうとも言い切れません。
下記のような判例があるからです。

①最高裁平成15年2月28日判決からすれば、重過失が認められれば、
本件には上記責任制限条項の適用はないと判断されてもおかしくありません。
(なお、重過失が認められると約款第35条の免責条項の適用もなくなりますし、
②東京地方裁判所平成13年9月28日判決からすると、約款第16条に基づく
反論も苦しそうです。)

今後、上記事故原因につき、重過失が認められるか否かが激しく
争われることになるのではないでしょうか。


              記

①最高裁平成15年2月28日判決
「本件特則は、宿泊客が、本件ホテルに持ち込みフロントに預けなかった物品、
現金及び貴重品について、ホテル側にその種類及び価額の明告をしなかった場合には、
ホテル側が物品等の種類及び価額に応じた注意を払うことを期待するのが酷であり、
かつ、時として損害賠償額が巨額に上ることがあり得ることなどを考慮して設けられた
ものと解される。このような本件特則の趣旨にかんがみても、ホテル側に故意又は
重大な過失がある場合に、本件特則により、被上告人の損害賠償義務の範囲が
制限されるとすることは、著しく衡平を害するものであって、当事者の通常の
意思に合致しないというべきである。したがって、本件特則は、ホテル側に
故意又は重大な過失がある場合には適用されないと解するのか相当である。
 そうすると、本件盗難について丙川に重大な過失がある場合には、
本件特則は適用されない。」


②東京地方裁判所平成13年9月28日判決
「本件約款34条は,契約者が被告のインターネットサービスの利用に関して損害
を被った場合でも,被告は,本件約款30条の規定によるほかは責任を負わないこ
とを定めているが,その本件約款30条は,契約者が被告から提供されるべきイン
ターネットサービスを一定の時間連続して利用できない状態が生じた場合に,算出
式に基づいて算出された金額を基本料月額から控除することを定めているにすぎな
い。
 これらの規定の文理に照らせば,本件約款30条は,通信障害等によりインター
ネットサービスの利用が一定期間連続して利用不能となったケースを想定して免責
を規定したものと解すべきであり,本件約款34条による免責はそのような場合に
限定されると解するのが相当である。
 実質的にも,被告の積極的な行為により顧客が作成し開設したホームページを永
久に失い損害が発生したような場合についてまで広く免責を認めることは,損害賠
償法を支配する被害者救済や衡平の理念に著しく反する結果を招来しかねず,約款
解釈としての妥当性を欠くことは明らかである。
 本件は,前述のとおり,被告の本件注意義務に違反する行為によって原告が作成
開設したホームページを喪失して損害を被ったと認められる事案であり,通信障害
等によりインターネットサービスの利用が一定期間連続して不能となった場合には
当たらない。
 よって,本件約款34条は,本件には適用されないと解すべきである。」
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