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大津いじめ自殺事件の行方

大津市の沢村憲次教育長は12日、男子生徒の自殺原因について、
「さまざまな要因が考えられる。私どもの認識そのものは変化していない」と述べ、
さらに13日、自殺した男子生徒の遺族が起こしている損害賠償請求訴訟について、
「続けたい」と述べたと報道されています。
因果関係の有無が、訴訟の結果に影響すると教育長が考えていることが窺われます。

ところで、いじめに関する近時の裁判例の多くは、教師にいじめ発生の
認識可能性があり、それにもかかわらず、しかるべきいじめ対策を
講じていない場合には、学校設置管理者に損害賠償義務を肯定しています。
ただ、自殺の予見可能性が教師にない場合には、いじめ自体に関する
損害についてのみ賠償義務を肯定し、自殺による損害についての
賠償義務は否定しているものが多いようです。
自殺の予見可能性というのは、要するに因果関係の問題ですから、
教育長の認識は間違っていないと言えそうです。

ただ、報道によれば、自殺直後の時点における聞き取り調査に対し、
皇子山中学校の教師らはいじめを知らなかったと答えていたそうなので、
本来であれば、いじめ発生の認識可能性の有無も重要な争点となるはずです。
いじめ発生の認識可能性は、次のような事情がある場合に認められることが
多いようです。

 ①教師が暴力行為等を現認していた。
 ②被害者、家族等が教師にいじめを申告していた。
 ③被害者に不審な傷跡、不自然な金銭支出、欠席等の不審な事情があった。

ですから、このあたりの事情の有無も本件では重要になります。

とはいえ、本件で、最も問題となるのは、やはり自殺の予見可能性の有無でしょう。
学説上は、悪質重大ないじめの場合には、自殺の予見可能性があると見て良く、
それに至らない程度のいじめの場合には、当事者が特に予見し得た場合でなければ
自殺の予見可能性はないとする説が有力とされています。
自殺の予見可能性を認めた裁判例として、東京高裁平成14年1月31日判決が
あります。以下、その一部を引用します。

「平成6年当時には既に,いじめに関する報道,通達等によって,いたずら,
悪ふざけと称して行われている学校内における生徒同士のやりとりを原因として
小中学生が自殺するに至った事件が続発していることが相当程度周知されて
いたのであるから,既に少なからざるトラブル,いじめを把握していた担任教諭としては,
中学生が時としていじめなどを契機として自殺等の衝動的な行動を起こすおそれがあり,
亡Kに関するトラブル,いじめが継続した場合には,亡Kの精神的,肉体的負担が
累積,増加し,亡Kに対する重大な傷害,亡Kの不登校等のほか,場合によっては
本件自殺のような重大な結果を招くおそれがあることについて予見すべきであり,
前記イの状況を把握していた本件においては,これを予見することが可能であった
というべきである。」

また、近時の裁判例として、名古屋地裁平成23年5月20日判決があります。
これについても一部を引用します。

「平成14年度当時,いじめに関する新聞やテレビの報道等によって,
学校内におけるいたずらや悪ふざけと称して行われている児童や
生徒同士のやり取りを原因として,中学生等が自死に至った事件が
続発していることが既に周知されており,中学生等がいじめを契機として
精神疾患や自死等に至るおそれがあることは,公知の事実であった
というべきであり,いわゆる学校関係者である被告らがこのような事実を
知らないはずはなく,仮に知らなかったとすれば,それ自体,
学校関係者としての責任の自覚が欠落していたことを示すものといわざるを得ない。」

「被告らは,平成14年10月以降,その各時期に本件6名が行っていた
I1に対する前記1(1)ウ(カ)認定の各行為,特に平成15年1月以降は,
I1の靴に画鋲が入れられるなど,I1に対して行われた悪質な行為を
認識していたか,少なくとも認識することが十分に可能であったし,
I1に対する本件6名の行為が継続するのを放置した場合には,
I1の精神的負担が累積,増大し,I1の心身に大きなダメージが生じるほか,
場合によっては自死という結果を招くおそれがあることを予見することも
十分可能であったというべきである。」

名古屋地裁平成23年5月20日判決におけるいじめは、「悪質」とされていますし、
上記引用部分には表れていませんが東京高裁平成14年1月31日判決の事例も
「悪質」な行為と認定されていますので、上記学説と同様の判断をしているものと
考えても良さそうです。

さて、以上をまとめると次のことが言えそうです。

暴力行為等を現認していた、あるいは被害者、家族等がいじめを申告していた等の
理由により、教師が悪質重大ないじめの発生を認識していたか、認識できた
場合であるにもかかわらず、当該教師がしかるべきいじめ対策を
講じなかった場合には、自殺による損害について学校設置管理者に
賠償責任が認められる可能性が高い。

ですから、本件では、そもそも悪質重大ないじめが存在したのか否かを
含めて、担任教師、校長等が、悪質重大ないじめの発生を認識していたか、
認識できたかどうかが、問われることになると予測されます。
その点に留意して、今後の展開を注視していきたいと思います。
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No title

はじめまして。
大津事件のことを調べていてこちらのブログに到着しました。
教育長の発言集と凡例が大変参考になりました。
ネット上で検索すると、情報が整理されておらず、感情論に傾きがちな内容が多かったため、とても参考になりました。
事件自体は問題ですが、加害者および関係者に対してのバッシングは形を変えたいじめのように感じてしまう今日この頃です。
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大久保宏昭

Author:大久保宏昭
本ブログをご覧いただき、ありがとうございました。

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