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デリバティブ取引における説明義務

中小企業が、銀行から勧誘されて、デリバティブ取引契約を締結したものの、
多額の損失が発生してしまい、紛争になる事案が多数存在します。

平成25年3月8日付最高裁判決は、そのような事案に関する判決です。

事案の概要ですが、パチンコ店等を経営する株式会社(「本件会社」)が、
銀行(「本件銀行」)から、金利が上昇した際のリスクヘッジのためとして、
金利スワップ取引を勧誘されて契約を締結したものの、
883万0355円の損失が発生してしまったということのようです。
本件会社は、本件銀行の説明義務違反及び取引における優越的地位の濫用
ないしそれを利用した不適正ないし不公平な勧誘等があったとして、
訴えを提起して、損害賠償を求めました。

この訴訟につき、原審判決(福岡高裁平成23年4月27日判決 
判例タイムズ1364号158頁)は、次のとおり述べて
本件銀行の説明義務違反を認めています。

「金利スワップ取引は金融デリバティブ商品の一つではあるが、
理論的には、その基本的構造ないし原理自体は単純で、
特に銀行間市場を前提にするときには、その理解は一般的にも
困難ではないと認められる。また、金利スワップ取引についての
複製理解の方法等を通してもその基本構造は単純であることが
検証し得るところであるので、控訴人会社側も、その原理ないし
構造自体については理解していたことは明らかである。
 しかしながら、銀行の対顧客市場における金利スワップ取引における
金利水準等については、銀行利ざや等の性質上、顧客に極めて
専門的な知識ないし経験がない限り、その目的とした変動金利
リスクヘッジとしての効果があるか否かについての判断は
極めて困難なものであることは、前記金利スワップ取引自体の
構造等から明らかである。」

「契約当事者の一方にのみ専門的な情報ないし知識等が存する場合は、
特殊ないし専門的内容の契約等(以下「専門的性質の契約等」という。)
においては、他方当事者は専門知識を有する当事者から、
その契約内容についての適切な説明を受けない限り、
同契約を締結すべきか否か自体についてさえ、合理的に判断することは
できないのが通常である。特に、その契約の主たる内容が知識を有する
当事者からの一方的な提案である場合は、その契約の内容が社会経済上の
観点において客観的に正当で、合理的判断下においても同旨の契約が
なされたであろうと認められるものでない限り、それによって成立した契約は、
社会経済的に不公正であるばかりでなく、法的に不公正である。
 したがって、専門的性質の契約等においては、その知識を有する
当事者には、しからざる他方当事者に対する契約に付随する義務として、
個々の相手方当事者の事例に見合った当該契約の性質に副った
相当な程度の法的な説明義務があるとされるものである。」

「被控訴人銀行において、本件金利スワップ契約の締結に当たって、
契約に付随する控訴人会社に対する説明が必要にして十分行われたときは、
控訴人会社においては、目的とした変動金利リスクヘッジの可能性の
不合理な低さ等から、本件金利スワップ契約は締結しなかったことは明らかで、
その説明義務違反は重大であるため、本件金利スワップ契約は契約締結に
際しての新利息に違反するものとして無効であり、また、その説明義務違反は、
被控訴人銀行の不法行為を構成すると解さざるを得ない。」

ところが、上記最高裁判決は、次のとおり述べて、
あっさり本件銀行の説明義務違反を否定しました。

「本件取引は、将来の金利変動の予測が当たるか否かのみによって
結果の有利不利が左右されるものであって、その基本的な構造ないし
原理自体は単純で、少なくとも企業経営者であれば、その理解は
一般に困難なものではなく、当該企業に対して契約締結のリスクを
負わせることには何ら問題のないものである。上告人は、被上告人に対し、
本件取引の基本的な仕組みや、契約上設定された変動金利及び固定金利について
説明するとともに、変動金利が一定の利率を上回らなければ、
融資における金利の支払よりも多額の金利を支払うリスクがある旨を
説明したのであり、基本的に説明義務を尽くしたものということができる。」

本判決はいわゆる事例判決です。
また、典型的な紛争類型において投資対象となっているのが
為替デリバティブ取引であるのに対して、本件では金利スワップ取引です。
ですから、形式的には本判決の射程距離はかなり短くなります。
しかし、デリバティブ取引の多くは、「基本的な構造ないし原理自体は単純」
と言えなくはありません。
厳密な数理モデルということになると専門家でなければ理解できないことがある反面、
原理的には要するに丁半バクチであることが多いからです。
この判決が実務に与える影響はかなり大きいのではないでしょうか。
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