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平均への回帰

昨日の日経新聞の「スクランブル」というコラムで、栗田昌孝氏の「ROEの呪い」と題するレポートが取り上げられていました。過去20年間の東証1部企業のROEを対象にして分析を行ったところ、高ROE企業のROEは下がりやすく、低ROE企業のROEは上がりやすいという結果が得られたそうです。

1回目の試験結果において、特別に良かった或いは特別に悪かった場合、2回目の試験結果は全体の平均値に近くなるという統計学的現象を平均への回帰といいますが、ROEに関しても、平均への回帰が生じているということになります。(ROEは企業の利益率を測る指標の一つですが、利益率の平均への回帰については、より広範な調査を大日方隆教授が行っています。調査結果は、「利益率の持続性と平均回帰」という著作にまとめられていますが、この本は第56回日経・経済図書文化賞を受賞しています。)

ところで、平均への回帰に関して、存在しない因果関係を想定してしまう誤謬が生じるということが指摘されています。
「ファスト&スローあなたの意思はどのように決まるか?」の著者ダニエル・カーネマン教授は、かつてイスラエル空軍の訓練教官に対して心理学を指導していたことがあるのですが、その際、訓練教官たちの持つ、訓練生は誉めると失敗し、叱ると成功するという経験的確信が、この誤謬によるものであることを説得するのに苦労したそうです。

誉めるということは、普段できなかったことができたということですので、誉めたか否かにかかわらず、次は失敗する可能性が高いということになります。そして、叱るということは普段できていたことができなかったということですので、叱ったか否かにかかわらず、次は成功する可能性が高いということになります。
ですから、誉めた後に失敗した、叱った後に成功したという事実だけから、誉めたから失敗した、叱ったから成功したという因果関係を推測するのは誤りです。
因果関係を適切に推測するためには、統計的検証が必要になります。
そして、検証の結果、失敗を叱るよりも能力向上を誉める方が効果的だということが判明しています。
だから、若き日のカーネマン教授は、訓練教官たちに対し、訓練生を叱るのではなく誉めるよう指導しました。
それにもかかわらず、訓練教官たちの誤謬に基づく確信はかなり強固で、説得に苦労したというのです。

平均への回帰現象というのは、当たり前のようでいて、人間にとっては理解しがたい面があるようです。


利益率の持続性と平均回帰利益率の持続性と平均回帰
(2013/03)
大日方 隆

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(2014/06/20)
ダニエル・カーネマン

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