アルゴリズム取引による相場操縦

シンガポール在住の中国人投資家がアルゴリズム取引と呼ばれる自動売買システムを使った「見せ玉」により相場操縦を行ったとして、証券取引等監視委員会が金融庁に対し課徴金納付命令を出すよう勧告を行ったと報じられています。

日本の長期国債先物市場に数十億円規模の買い注文を出して、他の自動売買システムの自動売買を誘って先物価格を上昇させ、0.3秒後にはその注文を取り消して、売り抜けるという手口を用いたとされています。

ところで、日経新聞の報道によると、当該投資家は、「システムは欺いたが、人は欺いていない」と述べているそうです。
しかし、金融商品取引法159条2項1号は、有価証券の売買の取引を誘引する目的をもって、有価証券売買等が繁盛であると誤解させ、又は取引所金融商品市場における上場金融商品等の相場を変動させるべき一連の有価証券売買等又はその申込みをすることを禁止しており、人を欺いていないからといって、同規制に違反していないことにはなりません。

ただし、大証金融商品取引法研究会の平成23年9月16日付「アルゴリズム取引と相場操縦」と題する報告における次の事例とのバランスは問われることになるかもしれません。

「或るプロップハウスが注文受付開始直後に売り・買いともに優先する価格帯、安い売りと高い買いのそれぞれの呼値に、比較的大口の注文を発注していく。そして、シンガポールに上場している日経平均先物取引の価格の推移を考慮しながら、その優先している価格帯の注文を順次取り消していく。これを行う過程で、始値として対当することが予想される価格も変動していく。このような状況が寄り付きの板寄せ直前まで繰り返され、結局、始値はその時点でのシンガポールの価格とほぼ一致する価格となるというものです。
 それでは、注文が取り消されることで、予想される価格がどのように変動するかを7ページの図を利用して説明します。左の図をご覧いただくと、9,565円のところは、8時59分58秒の時点で始値として対当することが予想される値段です。この値段は、その時点での売りと買いの注文の需給のバランスによって算出された価格です。9時の寄付きまであと2秒しかないので、多くの市場参加者はこの価格で寄り付くだろうと思っていたところ、ある市場参加者によって9,565円以上の価格帯に発注されている買注文が瞬時に取り消されることによって、59秒には9,555円と10円ぐらい下がるというような状況が見られるということであります。このような行為はアルゴリズムを使って行われております。」

同報告は、このような事例について、証券会社ディーラーや個人投資家からの「見せ玉」ではないかとの指摘が増加しているとしつつ、次のとおり、取引誘因目的を認定することは難しいとしています。

「他の市場参加者からは相場操縦の一種である「見せ玉」に見えるが、コンピュータシステムによって自動的に行われる価格の変動を伴う注文の取消という行為が、相場操縦に該当すると判断することが可能かどうかということでありますが、プロップハウスなどのアルゴリズム取引を利用する市場参加者は、大証の商品を含むいろんな商品に分散して投資をしている。それも、コンピュータシステムによって、いろんな商品の価格やその価格に影響を及ぼす外部要因など市場の実勢の情報を取り入れて計算して、自動的に注文の発注、訂正、取り消しを行っていきます。したがって、このような行為が、一つの商品において、その価格を変動させるべく、ほかの人の取引を誘引する目的を持っているということを認定することは、一見すると様々な要因の変化を受けて、いわば受動的に取引されているように見える、つまり自発的に取引していないように見えることから、これまで以上に非常に難しいと感じています。」

今回の投資家のやったことは単純だったから取引誘引目的を認定できたが、ちょっと複雑な取引だと目的を認定できないというのであれば、釈然としません。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

フリーエリア
プロフィール

大久保宏昭

Author:大久保宏昭
本ブログをご覧いただき、ありがとうございました。

リンク
カウンター
最新記事
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
QRコード
QR