木庭顕「[笑うケースメソッド]現代日本民法の基礎を問う」

一見、判例を題材にした通常のテキストのように見えます。
目次を見ても、「時効」、「金銭債権」、「契約」、「所有権」といった御馴染みの言葉が並んでいます。
本屋で平積みになって売られていましたから、民法を学習するつもりで買ってしまった人もいるかもしれません。

しかし、この本は、同じ著者の手になる「ローマ法案内」、「現代日本法へのカタバシス」に連なるものであり、その内容は通常の教材のそれとはまったく異なります。
通説判例を説明するのではなく、著者のローマ法研究の成果に基づいて、「占有」、「所有権」、「契約」、「不法行為」といった概念の基礎を問い直す内容となっています。

著者が繰り返し強調するのは「占有」という概念の重要性であり、著者はそこにこそ法の根源があると主張しています。
以下、一部を引用します。

「さてさて、ようく聴いてください!じつはこれで占有の定義が可能です。占有という、二千年来難解で知られる概念の正体です!つまり、一方に対象物との個別的で明快で固い関係がある。他方にこれを包み込むようにして圧迫する集団、いまいったような集団がある。その集団は錯綜していて透明でない。コントラストが浮かびあがりますよね。土地をめぐる人びとの関係を、あるいはおよそリソースをめぐる人びとの関係を、このコントラストで捉える。微妙でコントラストがはっきりしないように見えるときにもよく分析し、あえてどちらかに軍配を上げる。このときわれわれは、「一方に占有があり、他方には暴力がある」と認定します。法は、このとき占有の側にアプリオリの価値を見出します。あえて極端に、1と0の関係だと考えます。なぜか?
個人が対象物とのあいだに、ほかのもろもろの絡みからきっぱりと切り離された明快で固い関係を築いている場合、「しかもそれは見かけだけでじつはひそかになにかの集団に通じている」などというのでない場合、いかなる理由があろうと、これをいきなり奪う、その関係をいきなり破壊するということは絶対にしてはならない。これが法全体の根底にある原理です。つまりそういうことをするのは不透明な集団ですから、これを生み出すメカニズムを徹底して嫌い、それらを解体する。これが法の任務です。」(本書14~15ページ)

つまり、この本は「占有」という概念を梃子に民事法制度全体を説明してしまおうという野心的なプロジェクトの成果物とも言えるでしょう。

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