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みんなの意見>専門家の意見

平成24年2月29日の最高裁決定からの話題です。

旧称「テクモ株式会社」の株式移転に関して、一部の株主が
反対し、株式買取請求権を行使しました。

株式買取請求権を行使することにより、株主は、会社に対し、
自己の有する株式を「公正な価格」で買取ることを請求できますが、
具体的な買取り価格については、まずは協議を行います。
そして、協議が整えば、協議に基づく価格を会社は株主に
支払うことになります。
それに対して、協議が整わない場合には、裁判所に価格決定を
申立て、裁判所の決定により、具体的な買取り価格を
決めることになります。

本件では、協議が整わなかったようで、買取り価格決定の
申立てが裁判所に対してなされました。
以下はその事件の経緯です。

平成21年5月25日 株主、東京地裁に対し、価格決定の申立て
平成22年3月31日 東京地裁、1株当たり747円とする旨決定
同日         株主及びテクモ、即時抗告の申立て
平成23年3月1日  東京高裁、上記即時抗告を棄却する旨決定
同月7日       株主及びテクモ、許可抗告の申立て
同月30日      上記申立てを許可する旨の決定

そして、今回、最高裁は、原決定を破棄し、事件を
東京高裁に差し戻す旨決定しました。
その決定の中で、最高裁は「公正な価格」の判断基準を述べています。
ここが本決定の注目ポイントです。

「公正な価格」については、すでに楽天対TBS株式買取価格
決定事件に関する平成23年4月19日の最高裁決定が基準を
示していました。
しかし、当該決定は、「シナジーその他の企業価値の増加が
生じない場合」のみを対象としたもので、シナジーの適正な
分配が問題となる事案については、最高裁は判断していないと
されていました。
今回、最高裁は、「それ以外の場合」として、シナジー
その他の企業価値の増加が生じる場合の基準を示しました。
しかもその内容は、株主及び取締役の判断と市場株価を尊重するものです。
以下裁判要旨を引用します。

1 株式移転完全子会社の反対株主がした株式買取請求に係る「公正な価格」の意義 
2 相互に特別の資本関係がない会社間において,一般に公正と認められる手続により株式移転の効力が発生した場合,特段の事情がない限り,その株式移転比率は公正なものである 
3 株式移転計画の株式移転比率が公正なものと認められる場合は,株式移転により企業価値の増加が生じないときを除き,株式買取請求がされた日における市場株価等を用いて「公正な価格」を定めることは,裁判所の合理的な裁量の範囲内にある 

この判決は、M&A案件を今後担当する者にとっては、実務の基準となる
ありがたいものだと思われます。

ところで、読んでいて面白かったのは、須藤正彦裁判官の
補足意見です。以下、その一部を引用します。

「企業の客観的価値やその増加分を可及的に正確に認識しようとするため
に,財務数値や経営政策などを手がかりにしつつ様々なシミュレーションや条件を
組み合わせることによる評価算定方法がこれまで考案され,また,実際にも用いら
れているところである。しかしながら,これらの評価算定方法は,いずれも専門的
であって,到底平易なものとはいえず,裁判所自らが,上記のうちの何らかの方法
を採用するなどして作業を行うことは,裁判所の性質,役割からしてもちろん不適
切かつ非現実的であるし,また,専門家の鑑定によるということになればその費用
は高額に達し,少なからぬ時間を要することにもなろう。のみならず,これらの評
価算定方法も,所詮は不確定的な数値による予測等を基にするという性質は避けら
れず,不確実性を免れない。これらの点を考慮すると,少なくとも,買取価格の決
定において,他に適切な評価方法があり,それで「公正な価格」を形成するに不足
ないのであれば,それによることに加えてわざわざ上記の評価算定方法まで用いる
ことは意味あることとは思われない。
ところで,上場された株式の市場株価は,企業の客観的価値が投資家の評
価を通して反映され得るとされる。また,法廷意見のとおり,相互に特別の資本関
係がない会社間において,一般に公正と認められる手続により株式移転の効力が発
生し,株式移転を承認する株主総会における株主の合理的判断が妨げられたと認め
るに足りる特段の事情がないときは,株式移転比率は公正である。この場合,当然
のことながら,市場株価にはその公正な株式移転比率も織り込まれ得る。そうする
と,このような場合の市場株価は,シナジー効果等による企業価値増加分の公正な
分配を反映した価格であるといえることになる。」

原則として、専門家の意見より、市場株価、すなわち「みんなの意見」の方を
重視すべきということですね。


「みんなの意見」は案外正しい (角川文庫)
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