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ニコイチ

ニコイチという言葉をご存知ですか?
複数の事故車から使える部品を取って、一台の車に仕立て上げた粗悪品を
指す言葉です。

ところで、企業再生の場面においても、似たようなことが行われることがあります。
倒産寸前の会社から営業利益が出ている事業だけを切り出して、利益の出る
会社(グッドカンパニー)を仕立てる手法が、一頃流行りました。
会社分割の手法を使うのですが、当然、残された元の会社は、利益の出る
見込みのない会社(バッドカンパニー)になってしまいます。
3台くらいの事故車から使える部品を取って、走行可能な自動車を作る。
そうすると、1台の自動車とクズ鉄の山が残ります。
そんなイメージです。
これを一部の債権者に黙ってこっそり実行したり等するのが、
濫用的会社分割と言われるもので、近年問題となりました。

ただ、違う点もあります。
ニコイチの場合の被害者は、粗悪品の自動者を買った人です。
それに対して、濫用的会社分割の場合に被害者となるのは、
元の会社の債権者、特に金融機関です。
技術的なことを省いて説明すると、ある手法を使うと、金融機関の債権を
実質的にカットすることができます。
事業継続に必要な取引関係の債権者については、そのまま取引関係を
グッドカンパニーに移す。それによってその債権者は、グッドカンパニーから
債権を回収することができる。
それに対して、金融機関は元の会社であるバッドカンパニーに残す。
金融機関は債権を回収することができません。
金融機関からすると、車を担保に金を貸していたら、いつのまにかその車が
クズ鉄の山になっていた、そんな感じでしょう。

当然、金融機関は怒ります。
そこで、濫用的な会社分割について訴訟が多発しました。
今回取り上げる判決(名古屋高等裁判所平成24年2月8日判決)は、
そうした訴訟のうちの一つについてのものです。

事案は、簡単にいうと、次のようなものです。
旧Bという会社があり、金融機関Xがその会社に資金を貸し付けていました。
ところが、経営不振に陥った旧Bの経営者は、旧Bから利益の上がる
事業のみを切り出して、新設会社分割の方法で新しい会社Yを設立し、
事業をその会社に移しました。
金融機関Xは旧Bの債権者として取り残されてしまいます。
そして、債権の回収は、Y会社から旧Bに対して賃料等の名目で
支払われる月額200万円を原資としてなされることになり、
示された計画では128年後になってやっと弁済が
完了することになっていました。
この会社分割について、金融機関Xが、民法424条の詐害取消権に基づいて、
取消を求めるとともに、金銭の支払いを請求したというのが本件訴訟です。

本判決は、上記事案につき、Y会社の控訴を棄却し、金融機関Xの請求を認めたものです。
ただ、その内容は概ね原審(名古屋地方裁判所平成23年7月22日判決)を
維持したものです。
そこで、原審判決を見てみると、取消の範囲及び原状回復の方法について、
面白いことが書かれています。
引用します。

「新設分割は、新設分割会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は
一部を新設分割設立会社に承継させることであり、本件会社分割において、
旧りょくけん(旧B)から被告(Y会社)に対して承継された資産及び負債が
可分であることは明らかであるから、本件会社分割を詐害行為として取り消す
範囲は、詐害行為の目的物が可分である場合として、債権者である原告の
被保全債権の額、すなわち、貸金元本の合計9568万2000円を限度とすると
いうべきである。」
「本件会社分割が詐害行為として取り消された時の原状回復の方法としては、
(中略)原告は、被告に対し、逸失した財産の現物返還に代えてその価格賠償を
請求することができる。」

一定金額の限度で会社分割を取消した上で、価格賠償を請求することができると言うのです。

高裁判決の方にも面白い記載があります。

「新設分割によって分割会社の残存債権者が害された場合、現行会社法の
債権者保護手続や新設分割無効の訴えでは残存債権者の保護を図ることが
できないのであり、そのような問題状況を踏まえて、詐害的な会社分割によって
その債権を害された残存債権者が、新設会社等に対し、当該債務の履行を
直接請求できる旨の規律を新たに設けること等を内容とする会社法制の
見直しの議論が進められていることは当裁判所に顕著である。」

だから、こういう手法で債権者を救済してもよいということでしょうか。
最後に、「会社法制の見直しに関する中間試案」の該当箇所を引用しておきます。


詐害的な会社分割における債権者の保護

① 吸収分割会社又は新設分割会社(以下第6において「分割会社」とい
う。)が,吸収分割承継会社又は新設分割設立会社(以下第6において「承
継会社等」という。)に承継されない債務の債権者(以下「残存債権者」
という。)を害することを知って会社分割をした場合には,残存債権者は,
承継会社等に対して,承継した財産の価額を限度として,当該債務の履
行を請求することができるものとする。ただし,吸収分割の場合であっ
て,吸収分割承継会社が吸収分割の効力が生じた時において残存債権者
を害すべき事実を知らなかったときは,この限りでないものとする。

(注) 株式会社である分割会社が吸収分割の効力が生ずる日又は新設分割設立会
社の成立の日に全部取得条項付種類株式の取得又は剰余金の配当(取得対価
又は配当財産が承継会社等の株式又は持分のみであるものに限る。)をする場
合(会社法第758条第8号等)には,上記の規律を適用しないものとする。

② 残存債権者が,分割会社が①の会社分割をしたことを知った時から2
年以内に①による請求又はその予告をしない場合には,①による請求を
する権利は,当該期間を経過した時に消滅するものとする。会社分割の
効力が生じた時から20年を経過したときも,同様とするものとする。

(注) 事業譲渡についても,①及び②と同様の規律を設けるものとする。
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