いまさらですが、「〈反〉知的独占」を読んでみました

かなり暖かくなってきたので、そろそろ自転車遊びを再開しようかと
今日は自転車を整備していました。
手を休めた時に、ふと目に入ったのが、この本です。
奥付を見ると「2010年10月29日 初版第1刷」とあります。
出たばかりの時に買い、そのまま読まずにほったらかしにしていたようです。

さて、最近は、知的財産権の強化のいきすぎが問題になっています。
ローレンス・レッシグ教授はかなり前から著作権の強化に反対していますし、
日本でも中山信弘教授が「特許法」のはしがきで次のように述べています。

「知的財産権は独占権である以上弊害を伴うが、その弊害以上の
社会的ベネフィットがあれば、制度としての合理的な存在理由があることに
なる。しかしながらプロ・パテントの掛け声に押されて、独占の弊害に関する議論は
不十分であるように思える。学者の間では常識となっているが、権利者と
社会とのバランスが重要である、ということを再認識する必要がある。
その根本原理は産業の発展であり、そのために権利者と社会との
調和点をどこに求めるか、という観点を常に忘れてはならない。
そのような観点からすると、たとえば知的財産侵害の刑罰強化については、
世界的にみても重罰にすぎるし、行き過ぎであるように思える。」

「特許制度がそれを上回るベネフィットがあるという証明はない。
これは特許制度の存在理由に関わる重大問題であるが、
いまさら特許制度の全廃などは不可能なことであり、現状を前提に
する限り、漸進的な改革を推し進めてゆく以外にはありえない。」

他にも弁護士の野口祐子さんが「デジタル時代の著作権」で
著作権と表現の自由のバランスが崩れつつあるのではないかといった
問題提起をしています。

ただ、この人たちは、知的財産制度そのものには反対していません。
知的財産権が強化されすぎていてバランスが崩れていることを問題にしているだけです。
ところが、本書の著者は、「はじめに」において、次のように述べています。

「われわれの結論はこうだ。作り手の財産権は「知的財産」がなくても充分に
保護されるし、知的財産はイノベーションも創造性も伸ばさない。これらは不必要悪なのだ。」

本書の著者は、知的財産制度そのものを否定しているわけです。
これは大変です。
では、どんなことを言っているか、中身を読んでみましょう。

あれがこうで、それがこうで、うんたらかんたら。
「知的独占は本当に競争よりも多くのイノベーションをもたらすのだろうか?
理論的な見地からだと、答えははっきりしていない。」
ああだこうだ、うんぬんかんぬん。

あれ?はっきりしていないんですか?

前後を省略してしまったのは、著者が普遍性があるか疑わしい個別例を挙げすぎているのと、
これは私の誤解かもしれませんが、知的財産制度の有無の問題と知的財産権の強弱の問題とを
ごっちゃに論じているように思えたからです。
知的財産制度は一切無い方がいいという話と、知的財産権が強すぎると弊害の方が大きくなるという話は、
たしかに繋がってはいますが、別の問題だと思います。
また、知的財産権をどの程度強化することがノベーションの奨励という目的達成には最適なのか、
一定以上の知的財産権の強化はもはやイノベーション奨励にはつながらず、
むしろそれを阻害するといった話もまた別の話です。
なのに知的財産制度はイノベーションを増加させないという主張の根拠として、
知的財産権の過剰な強化はイノベーション活動を弱めるという研究成果を持ち出してきたりするので、
真面目に読む気が途中で失せてしまったのです。

中山信弘教授が、「特許制度がそれを上回るベネフィットがあるという証明はない。」と
認めているとおり、本書の主張内容自体は、今後の知的財産制度を論じる上で
無視し得ないものだと思います。
でも、この本を読んでおくべきかというと、どうなんでしょう。
むしろ新宅純二郎、柳川範之「フリーコピーの経済学」あたりを読んでおいた方が良いかも?
もう少し短く、論理的に書いてくれていると素直にお勧めできるんですけどね。


〈反〉知的独占 ―特許と著作権の経済学
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