自衛隊情報保全隊事件判決

間接侵略という言葉をご存知でしょうか。
国内において外国の関与の下に起こされる反乱、内戦、革命などのことですが、
要するに外国による反乱分子の扇動のことを言います。
有名なのは明石元二郎の日露戦争における活動でしょう。
明石大佐(当時)は、日露戦争中に参謀本部から百万円(今の400億円以上に
相当する金額)の工作資金を支給され、その金をロシア帝国の反政府組織の
活動資金としてばら撒きました。
その結果、ストライキ、サポタージュ、武力蜂起等がロシア各地で起き、
ロシアが戦争を続けることが難しくなっていったとされています。

明石大佐のこのような活動は、諜報活動と呼ばれますが、諜報活動は、当然のことながら、
現在も各国において行われています。
諜報活動を行っている機関として有名なのは、アメリカのCIA、ロシアのSVR、
イギリスのSISなどです。
CIAはハリウッド映画の中でよく出てきますので、みなさんもご存知でしょう。
SVRはかつてKGBと呼ばれていた機関の一部です。
SISはジェームズ・ボンドの所属機関ですね。

当然のことながら、諜報活動に対抗する活動も行われています。
防諜活動と呼ばれるものです。
具体的には、合法、非合法に情報を収集し、監視を行います。
防諜機関として有名なのは、アメリカのFBI、ロシアのFSBなどです。
日本でも警察庁警備局などが防諜活動を行っているとされます。

防諜活動は、国内を中心として行われますから、どうしても、
国民の人権と衝突する場面が出てきます。
そこで、防諜活動に関しては、国民の人権との関係でどこまで許されるのか
ということが常に問題となります。
特に自由主義を掲げる民主主義国家においては、重大な問題となります。
日本においても、神奈川県警が日本共産党国際部長宅の電話通信を盗聴していたことが
1986年11月に発覚し、事件となったことがあります。

最近では、自衛隊情報保全隊(当時陸上自衛隊情報保全隊)が市民を監視していたことについて、
違法性を認め、30万円の支払いを命じる判決が、仙台地方裁判所において、
平成24年3月26日に言い渡されました。
情報保全という言葉は見慣れない言葉ですが、Intelligence Security、
Counter-Intelligenceの和訳とされています。
要するに防諜のことですから、情報保全隊というのは、自衛隊組織内の防諜機関
ということになります。

国家を防衛するために個人の人権をどこまで制約することが許されるかという大きな話です。
「公共の福祉」と「人権」という憲法上の重大問題でもあります。
ですから、どのような判断を仙台地方裁判所がしたのか、興味をもって、
判決文を読んでみました。
ところが、読んでみてがっかり。
裁判所は次のとおり判断しています。

「情報保全隊が前記2(2)のような個人情報を収集して保有した
ことに関し,行政上の目的,必要性その他の適法性を基礎付ける具体的な事
由(換言すれば,上記各原告がこれを甘受すべき根拠となる具体的な事由)
が存在するか否かを判断するに,被告は,上記各原告に対する情報収集等に
ついて,目的,必要性その他の適法性を基礎付ける具体的な事由を何ら主張
せず,ただ,情報保全隊の組織規範及び一般的な情報保全業務に関する主張
をするに止まる。
確かに,行政機関がする情報収集等につき一律に個々の法律上の明文規定
が必要とまでは解されないが,組織規範は,情報収集等が可能な範囲を画す
るものにすぎず,積極的に情報収集等の目的,必要性等を基礎付けるもので
はないから,情報収集等の目的,必要性等に関して被告から何ら具体的な主
張のない本件においては,原告らが適法性を否定する事情として種々主張す
る事実の存否等について判断するまでもなく,前記各原告につき情報保全隊
がした情報収集等は,違法とみるほかない。」

突っ込んだ議論は全然なされていません。
政治の場ですらきちんとした議論がなされていないのですから、
当然のことかもしれませんが、残念です。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

フリーエリア
プロフィール

大久保宏昭

Author:大久保宏昭
本ブログをご覧いただき、ありがとうございました。

リンク
カウンター
最新記事
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
QRコード
QR