武富士、国を訴える

司法関連では、本日の注目ニュースはなんと言っても、
旧株式会社武富士(現TFK株式会社、以下「武富士」)が
法人税の還付を求めて国を訴えたというニュースだと思います。

武富士と言えば、元会長の長男に関する税務訴訟が思い起こされます。
あの事件では、最高裁で長男側が逆転勝訴し、国税が恥をかくことになりました。
その時の訴額もかなりのものでしたが、今度の請求金額は
2374億6470万6270円です。

ただ、今回の訴えは、管財人が、更生債権者に対する弁済の原資とするために
起こしたものです。
つまり、武富士が払い過ぎた税金を国から取り戻して、
武富士に利息を払い過ぎた人たちに対する弁済の資金にしようという話です。
ですから、武富士対国と言っても、前回とはまったく話の内容が違います。

ところで、本件、武富士からプレスリリースが出されていますが
普通に読んだだけでは、良く分からない箇所がいくつかあります。

まず、更正の請求の根拠ですが、この点については、
「過年度の課税所得および法人税額を減額して法人税の還付を受けるべく、
課税庁に対して、国税通則法23条2項1号の規定に基づく更正の請求を
行いました。」とありますので、国税通則法23条2項1号を見てみます。
すると、納税申告書を提出した者は、その申告に係る課税標準等又は
税額等の計算の基礎となった事実に関する訴えについての判決
(判決と同一の効力を有する和解その他の行為を含む。)により、
その事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定したときには、
更正の請求をすることができると書いてあることが分かります。

そこで、「その申告に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎
となった事実」をプレスリリースの文中から探してみると、

「更生会社は、これまで収受した利息制限法所定の利率を超える
利息(制限超過利息)を税務上の益金に算入して課税所得および
税額を計算し、法人税の納付を行ってきました」

というあたりの記載がこれに当たりそうです。
つまり、利息制限法所定の利率を超える”グレーゾーン金利”についても
有効と考えて、そのまま益金として扱い、法人税を支払ってきたというわけです。

次に「判決又は判決と同一の効力を有する行為」を文中から探してみると、
次の文言がそれに当たりそうです。

「利息引き直し計算および債権調査の結果、更生会社が過年度に
収受してきた制限超過利息が無効であることが法的に確定した」

会社更生法150条は、更生債権等の調査によって確定した事項について、
裁判所書記官が作成した更生債権者表は、確定判決と同一の効力を
有するとしています。
この規定と上記記載を併せ読むと、次のことを言っているように
思われます。

①債権届出のあった過払金返還請求権が存在することが、確定判決と
同一の効力を有する書面によって確定した。
②これによって利息制限法所定の利率を超える”グレーゾーン金利”についても、
無効であることが確定した。
③さらにそれにより過年度の税額計算の基礎となる益金は
存在しなかったことも確定した。

ここまでは想像がつくとして、次が分かりません。
「しかしながら、課税庁より、上記更正の請求に理由がない旨の通知処分を受け」と
ありますが、更生の請求に理由がないと課税庁が判断した根拠はなんでしょうか。
過払金返還請求権の存在が確定したとしても、そのことは、
「申告に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となつた事実が
当該計算の基礎としたところと異なることが確定したこと」には
当たらないといったことでしょうか。
本件の場合、確定された事実は、①過払金返還請求権の存在であって、
これによって、③過年度の税額計算の基礎となる益金が存在しなかったことが
確定したわけではないから、更正の請求には理由がない?
正直申し上げて、分かりません。

ところで、本件は、武富士が勝てば、武富士に利息を払い過ぎていた人々が助かり、
武富士が負ければ、国すなわち一般の国民が助かることになります。
また、もし武富士が勝てば、他の貸金業者も更正の請求をしてきそうです。
さらに内容はまったく違うとは言え、武富士対国の第2段ということにもなります。
ですから、本件は、注目される訴訟になるでしょう。

武富士の管財人が訴えを提起するに当っては、東京地裁民事第8部の
許可を得ていると思われます。
要するに民事第8部の裁判官が、本請求には一応の理由はあると考えた
ということになります。
本訴訟は、行政事件を取り扱う東京地裁民事第2部、第3部又は第38部の
いずれかに係属することになると思いますが、その部の裁判官はどのように
判断するのでしょうか。


追記

課税庁が更正の請求に理由がないとした根拠は、
昭和46年11月9日最高裁判所審査決定及び所得税更正決定等の取消請求事件判決でしょうか?
関係しそうな箇所を引用します。

「利息制限法による制限超過の利息・損害金の支払がなされても、その支払は弁済
の効力を生ぜず、制限超過部分は、民法四九一条により残存元本に充当されるもの
と解すべきことは、当裁判所の判例とするところであつて(昭和三五年(オ)第一
一五一号同三九年一一月一八日大法廷判決、民集一八巻九号一八六八頁)、これに
よると、約定の利息・損害金の支払がなされても、制限超過部分に関するかぎり、
法律上は元本の回収にほかならず、したがつて、所得を構成しないもののように見
える。
 しかし、課税の対象となるべき所得を構成するか否かは、必ずしも、その法律的
性質いかんによつて決せられるものではない。当事者間において約定の利息・損害
金として授受され、貸主において当該制限超過部分が元本に充当されたものとして
処理することなく、依然として従前どおりの元本が残存するものとして取り扱つて
いる以上、制限超過部分をも含めて、現実に収受された約定の利息・損害金の全部
が貸主の所得として課税の対象となるものというべきである。もつとも、借主が約
定の利息・損害金の支払を継続し、その制限超過部分を元本に充当することにより、
計算上元本が完済となつたときは、その後に支払われた金員につき、借主が民法に
従い不当利得の返還を請求しうることは、当裁判所の判例とするところであつて(
昭和四一年(オ)第一二八一号同四三年一一月一三日大法廷判決、民集二二巻一二
号二五二六頁)、これによると、貸主は、いつたん制限超過の利息・損害金を収受
しても、法律上これを自己に保有しえないことがありうるが、そのことの故をもつ
て、現実に収受された超過部分が課税の対象となりえないものと解することはでき
ない。」

やっぱり、上記①と③は別の話ということですかね?
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

フリーエリア
プロフィール

大久保宏昭

Author:大久保宏昭
本ブログをご覧いただき、ありがとうございました。

リンク
カウンター
最新記事
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
QRコード
QR