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最近目にするDIP型会社更生ってどうなの?

エルピーダ等、最近の大型倒産案件において、「DIP型会社更生」という言葉を
目にするようになりました。
数年前までは見なかった言葉です。
これはなんでしょう?
ネットで検索してみると、次のような説明が見つかります。

DIP(Debtor in Possession)型会社更生とは、破綻企業の経営陣が退陣せず、
更生計画などに関与する会社更生手続きを言う。
従来、会社更生手続では、裁判所が選任する弁護士等が保全管理人、管財人となり、
旧経営陣は交代することが必須条件とされる運用が行われていた。
それに対して、民事再生手続では、裁判所の監督の下で旧経営陣が事業を継続しつつ、
債権者の賛成を得て再生計画を成立させるいわゆるDIP型手続が原則とされている。
会社経営者から見れば、民事再生手続の方が使いやすく、そのため、民事再生法が
創設されてからというもの、会社更生法はほとんど使われなくなった。
会社更生法に絡む事案を担当するのは東京地裁民事第8部、民事再生法に絡む
事案を担当するのは民事第20部となるが、民事第20部ばかりが忙しい状況が続いたのである。
その状況下において、民事第8部が平成20年12月に、DIP型会社更生手続きの運用基準を
雑誌において公表した。
これを受けて平成21年1月9日に第1号として、株式会社クリードがDIP型会社更生の
申し立てを行い、その後、多数のDIP型会社更生の申し立てが行われるようになった。

DIP型会社更生というのは、新たな法制度として導入されたものではなく、
会社更生法の運用基準として導入されたものだということがわかります。
その経緯を雑誌記事を追いかけて、見てみましょう。

まず、多比羅誠弁護士ら3名の弁護士が、「私的整理ガイドライン等から会社更生への移行」
(NBL886号7頁)という論文を発表して、会社更生の新たな利用方法を提案しました。
それに対して、当時東京地裁民事8部の部総括判事であった難波孝一裁判官が、
その提案を受け入れることを表明しました(NBL886号12頁)。
さらに難波裁判官は、上記提案を超えて、民事8部の他の裁判官らとともに、「会社更生事件の
最近の実情と今後の新たな展開―債務者会社が会社更生手続を利用しやすくするための方策:
DIP型会社更生手続の運用の導入を中心に」(NBL895号10頁)という論文を発表し、
DIP型会社更生手続きの運用基準を公表しました。
従来、会社更生手続きにおいては、経営陣の総取替えを行ってきたが、法令上DIP型とすることが
禁止されているわけではないので、次の4要件が満たされていれば、会社更生においても
DIP型とすることができるとしたのです。

①現経営陣に不正行為等の違法な経営責任の問題がないこと
②主要債権者が現経営陣の経営関与に反対していないこと
③スポンサーとなるべきものがいる場合はその了解があること
④現経営陣の経営関与によって会社更生手続の適正な遂行が損なわれるような事情が
 認められないこと

この公表に対して、前記多比羅弁護士らは、「現在の実務を所与のものとし、その枠内で
考えがちなわれわれの何歩も先をいくものであった。」と驚きを表明するとともに、
次のような場合にDIP型会社更生の手続を活用できるだろうとの見解を示しました
(NBL895号25頁)。

①担保権者との合意(別除権協定)の成立が困難な事案
②会社分割等の会社組織の変更を手続内で行う必要がある事案
③監督委員の権限よりも強い監督が必要な事案

このような経緯からしても、DIP型会社更生が、実務家の手によって、実務家にとって
使いやすい運用方法として、提案されたことが分かります。

ただ、法律の運用方法は、使い易ければ良いというものではないはずです。
例えば、エルピーダの坂本社長が、会社更生開始の申し立てを行った後も
会社経営を続けることに対して釈然としない思いを表明する意見を目にしたことがあります。
DIP型会社更生という運用は、会社更生の制度趣旨に合致した運用方法なのでしょうか。

この点、会社更生法を含む倒産法の目的はそもそも何なのかということを考える必要があります。
普通の本にはあまり書いていないことなのですが、水元宏典教授は、
「倒産法における一般的実体法の規制原理」という著作において次のとおり説明しています。

水元教授は、まず次の通り、「財産価値最大化理論」を紹介しています。

「倒産法は、歴史的に債権回収法である。会社倒産の局面に限定すれば、
それは、集団的・強制的な債権回収装置であり、その意味は、債務者の
倒産時に、すべての債権者について個別的な債権回収が禁止されることである。
そして、その正当性は、そうすることが財産価値最大化に資すること、また、
そうであるがゆえに債権者全員の合意が想定されることに求められた。」

水元教授は、この「財産価値最大化理論」に対して、公正な分配の
実現のために再配分を行うべきであるとする批判(再配分論)があることを紹介しつつ、
その再配分論を採用することはできないとし、ただし、「財産価値最大化理論」を
絶対視すべきではないとしています。
倒産法の本質を大まかに捉えれば、「財産価値最大化理論」がそれに当たると
考えておけば良いのだと思います。

さて、「財産価値最大化理論」という観点から見た場合、DIP型会社更生は
どのように評価されるのでしょうか。
東京地裁会社更生実務研究会編「最新実務会社更生」は、次のとおり述べています。

「更生手続では、法律上、現経営陣の中から管財人を選任することは可能であるが、
従前は、利害関係のない管財人を選任し、現経営陣を必ず総退陣させる運用が
行われてきた。このような運用は、会社更生の濫用的な申立ての規制等を
目的として行われた昭和42年の会社更生法改正以来の経済社会の意識を
反映したものであり、高度経済成長期には、現経営陣の活用によって企業価値の
毀損防止を図ることよりも手続の公平性や厳格性を重視するのは、
当然のこととして受け止められてきた。
しかし、グローバル経済が進展し、我が国の経済が低迷する昨今の状況下では、
金融機関を含む債権者側においても、破綻した企業との関係を経済合理性に
従って処理する要請が高まっており、再チャレンジの機会を確保することも
経済社会の発展のためには必要であるという認識も、徐々に広まりつつある。」

DIP型会社更生は「財産価値最大化理論」に則した運用方法であると
東京地裁民事第8部は考えているということなのでしょう。

江戸時代には、倒産した者に対して、外出を夜のみに制限する等の
差別的取り扱いが行われていたと聞きます。
しかし、現代の倒産法は、倒産した者を罰することを目的としていません。
債権の引き当てとなる財産の最大化こそが目的と考えられます。
その観点からすると、DIP型会社更生は、正当化されるということになりそうです。


倒産法における一般実体法の規制原理

最新実務 会社更生
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No title

DIP型再建は、投資ファンドの利益を最大化することを目的としています。
民事再生にせよ、会社更生にせよ清算価値保証原則すら満たしていない例が散見されますよ。明らかに資産超過の会社でも、不動産が土壌汚染されて無価値だと言って大幅債務超過にしたうえで債権を踏み倒し、後で何食わぬ顔をしてその土地の上にマンションが建っています。

そんなインチキが倒産部の本質で、その見返りが大手法律事務所への天下りや出世なのですね。


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