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ベアリング大手4社による価格カルテル

ベアリング大手4社が価格カルテルを結んでいた疑いが強まったとして、
公正取引委員会が独禁法違反容疑で刑事告発する方針を固めたと
今朝の日本経済新聞が報じています。

ところで、気になったのは、記事中の以下の表現です。

「4社のうち不正を最初に申告した企業については、課徴金減免制度
(リーニエンシー)を適用し、告発を見送るもようだ。」

課徴金減免制度とは、カルテルや入札談合について、公正取引委員会の
調査開始日前に同委員会に対して、報告し、資料の提出を行った者に対して、
課徴金を課さない制度をいいます(独禁法7条の2第10項等)。
ところで、課徴金は、行政上の処分であって、刑事罰とは別のものです。
ところが、独禁法に基づく検事総長に対する告発(独禁法74条1項)は、
検事総長に対して犯罪を申告し、処罰を求める意思表示ですから、
刑事手続上の行為です。
ですから、課徴金減免制度の適用があるということと、告発しないことは
直接結び付くわけではないはずです。

ただ、たしかに課徴金が免除されても、刑事罰を科せられるのでは、
誰も自主申告してこないでしょう。
自首(刑法42条)という制度はあるものの、これは、「刑を減軽することが
できる。」とするだけのものです。
ですから、課徴金減免制度の適用とリンクして告発を見合わせる制度が
あっておかしくはありません。
そこで、調べてみたところ、「独占禁止法違反に対する刑事告発及び
犯則事件の調査に関する公正取引委員会の方針
」というものがあることが
わかりました。
同方針は、次のとおり述べています。

①一定の取引分野における競争を実質的に制限する価格カルテル等であって、
国民生活に広範な影響を及ぼすと考えられる悪質かつ重大な事案については、
積極的に刑事処分を求めて告発を行う。
②ただし、調査開始日前に単独で最初に課徴金の免除に係る報告及び資料の
提出を行った事業者(独禁法第7条の2第10項の規定による報告及び
資料の提出を行った事業者をいう。)については、告発を行わない。

なるほど、たしかに課徴金減免制度の適用がある者については、
告発を行わないとされています。
上記記事は、このことを述べたものと思われます。

若干気になるのは、上記「方針」と独禁法74条1項及び96条1項との関係です。
独禁法74条1項は、「公正取引委員会は、第十二章に規定する手続による
調査により犯則の心証を得たときは、検事総長に告発しなければならない。」と
定めています。
法律が「告発しなければならない。」としているのに、「方針」に基づいて
「告発を行わない。」ということが許されるのかという疑問がわいてきます。
ただ、この点については、公正取引委員会に告発をするか否かの裁量権があると
考えているのでしょう。

次に独禁法96条1項は、「第八十九条から第九十一条までの罪は、
公正取引委員会の告発を待つて、これを論ずる。」としています。
ですから、告発がなければ、刑事罰は科せられないことになります。
ただ、刑事訴訟法238条2項は、告発を待って受理すべき事件について、
共犯の一人に対してした告発は、他の共犯に対しても、その効力を生じるとしています。
とすると、4社のうちの3社について告発してしまえば、残りの1社についても
告発したことになってしまいそうです。
実際には、検察が公正取引委員会の意向を尊重して起訴しないのでしょうが、
制度上はそうなっています。
このあたり、「方針」の表現は不正確な気がします。

なお、本件、ゲーム理論で扱わるような状況だよなと思って、検索してみたら、
ゲーム理論と実験経済学の手法を使ってリーニエンシーを分析した論文を
発見しました。
リーニエンシー制度の経済分析」と題された論文です。
リーニエンシーがどのような効果をもたらすのかという話は、けっこう
難しい話なんですね。




追記
上記疑問に関して、財務省財務総合政策研究所「フィナンシャル・レビュー」
平成23 年第3号(通巻第104 号)2011 年2月白石忠志「政府調達と独禁法」
つぎの記載があるのを見つけました。

「公取委が同一事件について他の者を告発した場合には,独禁法96 条にかかわらず検察当局
は公取委が告発しなかった者も起訴することができるが(刑事訴訟法238 条2項),減免制度
を導入した平成17 年改正に向けた審議の際,法務省刑事局長が国会で答弁して,公取委が告
発しなかった事実を検察当局としては重く受け止めるので減免制度は有効に機能する,という
旨の発言を議事録に残している。」

まあ、そういうことなんでしょう。
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